1. TOP
  2. ちょっとイイ話
  3. 2007年
  4. 社会保険学習のススメ

八千代エンジニヤリングが毎月お届けするちょっとイイ話

知っているようで意外と知らない 社会保険学習のススメ

  • 事務系

毎月の給与明細書、ちゃんとご覧になっていますか? 天引きされている社会保険料の金額を見て、少々寂しい気分になる方も多いのではないでしょうか。今回は、知っているようで意外と知らない社会保険について紹介いたします。

社会保険学習のススメ

社会保険を知りましょう!

Written by OTSUKI Terumi 大槻照美

2007年は、一年を通して「年金問題」が紙面をにぎわせた年となりました。さまざまな問題を抱える社会保険庁の責任は確かに重いのですが、このニュースをきっかけに自分の年金について考える人が増えたことも事実かと思います。

年金に限らず私たちは色々な社会保険に加入していますが、「よくわからないけど、保険料はしっかり取られている」と思っている方も多いのではないでしょうか。保険の仕組みは確かに複雑ですが、よく知らないと「請求できることを知らなかった」という事態になりかねません。概要でもいいので、少しでも知っておくことが大切です。
 今回は、皆さんにとって身近な医療保険を中心にお話しいたします。

社会保険ってどんなものがあるの?

現行の社会保険制度は次の11種類あり、これによって日本では「国民皆保険・皆年金」を実現しています。似たような名称が多くて、ややこしいでしょうか?

  1. (1) 健康保険(サラリーマン、及びその扶養家族)
  2. (2) 国民健康保険(自営業者)
  3. (3) 介護保険(40歳以上の国民)
  4. (4) 厚生年金保険(サラリーマン)
  5. (5) 国民年金(サラリーマン/公務員以外の国民)
  6. (6) 労災保険(従業員)
  7. (7) 雇用保険(従業員)
  8. (8) 船員保険(船員)
  9. (9) 国家公務員共済組合(公務員)
  10. (10) 地方公務員共済組合(公務員)
  11. (11) 私立学校教職員共済(私学教職員)

※()は主な加入対象者。


出産が事故?

保険とは、平たく言えば「いざという時に保険給付が行われる制度」ということになります。そして「いざという時」のことを「保険事故」と呼び、しかるべき給付が行われています。現在、社会保険で定めている保険事故と関連保険は、つぎのように分類できます。

  • 病気、ケガ → 健康保険
  • 死亡 → 健康保険、年金保険、労災保険
  • 出産 → 健康保険
  • 老齢 → 年金保険
  • 障害 → 健康保険、年金保険
  • 介護 → 健康保険
  • 脱退 → 各種保険
  • 失業 → 雇用保険

事故というと交通事故や火災などを思い浮かべますが、嬉しいはずの出産までもが保険事故となってしまうのです。面白いですね。


家が遠いと損?

以前、新入社員が二人そろってやってきて、「僕たち全く同じ条件で入社して同じ給料をもらっているのに、社会保険料が違うんです。」と、神妙な面持ちで尋ねてきたことがあります。何故この二人の社会保険料には差があるのでしょう?

社会保険料を決めるのは、毎月の給与です。その中から社会保険料を決める要素になるものを「報酬」と呼びます。「報酬」には、基本給、時間外手当、各種手当などの他に、通勤定期券や社宅費など現物で支給されるものも含まれます。この報酬を「標準報酬月額表」という表にあてはめ、保険等級及び保険料が決定されるのです。

二人の住所を聞いてみると、一人はわりと近場から、もう一人は通勤時間が2時間を越えるような遠方から通っていることがわかりました。そこで給与明細を確認すると、二人の1ヶ月あたりの通勤費が約3万円違っており、そのため等級に差が発生していました。
 「通勤時間が長くて大変な上に、保険料も高くなるなんて!」と言っていましたが、思わずぼやきたくなる気持ちもわかります。ただ、保険料が高いというのは、果たして損なのでしょうか? 次の項目をご覧ください。


保険料が高いと損?

毎月給与から天引きされる社会保険料。「これさえなかったら、あと○万円使えるのに」と思ってしまうのも無理からぬことです。では、保険料の違いは、いったいどこに反映されるのでしょうか?

保険の仕組みというのは、多くの加入者が少しずつお金を出し合って、保険事故が発生した人にまとまったお金を給付する、という相互扶助が基本です。
 病院での支払いのように実費を支払うケースでは実費分の給付が行われるため、保険料による違いはありません。しかし、後で出てくる「傷病手当金」などの生活費補填を目的とした給付の場合は、保険料に応じた金額が支給されます。医療保険ではありませんが、厚生年金の年金額も同様です。
 こう考えると、保険料が高いのが一概に損とは言えないのではないでしょうか。


保険証は、好きなものを使える?

「無資格受診」という言葉をご存知でしょうか? 文字通り「資格がないのに医療機関で受診した」という状況のことですが、では「資格」とは何でしょう?

日本では国民皆保険のため、必ずなんらかの健康保険に入らなければなりません。しかし、ここで注意したいのは、複数の健康保険に同時加入はできないということです。また、加入したい健康保険を自分で選ぶこともできません。加入できる健康保険は、いくつかの条件により一つの保険に強制的に決定され、そこで「その保険の資格を有する」ことになります。逆に言えば、条件に変更が生じれば「その保険の資格がなくなる」可能性もあるということです。

具体的な例をいくつか挙げましょう。なお、ここに挙げるのは一般的な事例であり、個々の用件により異なることがありますので、ご了承ください。

  1. (1)就職に伴う変更:就職した日から、就職先が加入している健康保険へ変更する。
  2. (2)退職に伴う変更:退職した翌日から、市町村の国民健康保険へ変更するか、親族の扶養に入る。
  3. (3)結婚に伴う変更:専業主婦など収入が低い場合は、配偶者の扶養に入る。ただし、配偶者が自営業の場合は、市町村の国民健康保険へ加入する。

(1)(2)をよく見てください。「~した日から」と記載されていますね。これは健康保険を変更するタイミングが、日単位であることを示しています。

よくあるケースなのですが、「退職しても、保険証に記載されている有効期限までは大丈夫だから、手元に健康保険証がある間は使用できる。」と思い込み、退職後も使用してしまう方がいます。中には「健康保険証が2枚あるので、好きな方を使っていた」という方までいるのですが、これらのことが先ほどの「無資格受診」になってしまうのです。

では、無資格受診をしてしまった場合、どのような手続きをとるのでしょうか?

健康保険証を使って受診すると、みなさんは窓口で3割を支払い、残りの7割は「資格のある」健康保険へ病院が請求します。間違って「資格のない」保険証を使ってしまった場合でも、病院は間違いが分からないので「資格のない」健康保険へ7割分の請求をしてしまいます。「資格のない」健康保険はとりあえず病院へ7割分を支払いますが、本来は支払う義務のないものなので、間違って使ってしまった人へ請求を行うことになります。
 なお、間違って使ってしまった人が、「受診日に資格のある」健康保険へ請求をすることは可能ですが、必要書類の要請などを含めて一連の清算が終了するまでに、数ヶ月単位の日数がかかる覚悟は必要です。

病院へ行く度に「月初めは保険証を見せてください」と言われる理由は、ここにあります。ご自身はもちろんですが、ご家族の無資格受診にも気をつけたいですね。


たくさん生命保険に入れば安心?

年末調整処理を行っていると、時々びっくりすることがあります。共働きの夫婦二人のみの世帯なのに高額な保険料の生命保険に何件も入っていたり、逆にお子様が2、3人いるのに、生命保険はおろか損害保険にも入っていない人がいたり。前者には「ま、まさか保険金殺人とか…?(冗談ですが)」、後者には「子供のためにも、何か保険に入ろうよ!」などと思ってしまいます。

生命保険や損害保険の任意保険に加入する時、たくさんの保険商品の中から選ばなくてはなりませんね。自分にマッチした商品を選ぶのは本当に難しいので、「保険勧誘員におまかせした」という方も多いのではないでしょうか。
 でも、ちょっと待ってください。強制保険からの給付金については、考慮されましたか?

病気やケガで高額の自己負担があった場合、「高額療養費」の手続きを行えば、一定金額を超える部分が戻ってきます。また、平成19年4月より「高額療養費現物給付制度」が始まり、最初から窓口で高額療養費を差し引いた金額を支払うことが可能になりました。いずれも所定の手続きが必要ですので、病院や会社の保険担当者などに相談してみるとよいでしょう。

死亡した場合、健康保険から「埋葬料」が支給されます。金額は標準報酬月額の約1ヶ月なので、個人ごとに違います。
 また、死亡した方に扶養している家族がいた場合は、国民年金からは「遺族基礎年金」が、厚生年金からは「遺族厚生年金」が支給されます。ただし、子供の人数などで支給要件が違ってくるので注意が必要です。

病気やケガのために仕事ができず給与がもらえない場合、生活費を補填する意味合いで「傷病手当金」が支給されます。一日あたり標準報酬日額の2/3が支給されますが、休み始めの最初の3日間は「待機期間」といって、給付の対象となりません。

他にも「障害年金」「出産手当金」などがありますが、いずれにせよ強制保険からの給付金を考慮し、カバーしきれない分について任意保険をプラスしていくのが賢い方法だと思います。たくさんの保険に加入して、毎月高額な保険料に苦しめられるのは本末転倒です。自分で考えるのが難しい場合は、信頼のおけるファイナンシャルプランナーに相談してみるのもよいでしょう。
 ただし、任意保険を考える時は「自分は何に重点をおきたいのか」ということを、はっきりさせておく必要があります。どんなに優れたファイナンシャルプランナーでも、相談者の人生設計や信条までは考えられませんから。


終わりに…

最後に一つ注意していただきたいのは、保険給付は「自分から請求」というアクションを起こさなければいけないということです。ただ待っていては給付がされないどころか、時効がきて請求すら受け付けてもらえないことにもなりかねません。自分自身のことですから、人任せにはしたくないものですね。


ページトップ