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八千代エンジニヤリングが毎月お届けするちょっとイイ話

これからの社会のカタチ 地域で考える公共交通

  • 道路・鉄道

昨今は高齢社会の問題だけでなく、まちの活性化、地域環境、健康、地域参加といった様々な視点からも、”公共交通中心のまちづくり”は重要なテーマとなっています。今月は、”地域で考える公共交通”をテーマに考えてみます。

地域で考える公共交通

継続していける仕組み

Written by fuzita 藤田光宏

"公共交通中心のまちづくり"といっても、居住地の広がりや商業、医療、学校施設の立地、交通事情など、地域ごとに様々な特性(地域性)があります。さらに市民の移動実態やニーズも異なるため、100地域があれば100通りの答えを出さないといけません。また、その「答え」もいったん導入すれば終わりではなく、将来にわたり運行を継続する仕組みを築かなくてはなりません。

そのためには、 "地域で考える公共交通"が一つのキーワードとなります。

これまでの公共交通の取り組み

公共交通を考える上で"地域"という捉え方が重要です。一口に"地域"といっても、自治体、町会・自治会、個々の団地など、様々なケースがあり、おおまかには一定の生活圏をベースとした地域住民の移動手段確保を検討するための単位を考えます。例えば市町村単位は、行政が市町村民にとって利用しやすい市町村内の公共交通体系を構築します。

くにっこ
写真:くにっこ(国立市)

しかし、交通局を持つ自治体は別として、特に1990年代以前は地域(自治体)が主体となる公共交通の取り組みはあまり見られませんでした。自治体等の地域公共交通に対する姿勢は、既存の交通事業者に対する要望という範囲にとどまっていました。

すぎ丸
写真:すぎ丸(杉並区)
みたかシティバス
写真:みたかシティバス(三鷹市)

その後、地域として公共交通に取り組んだ例が、1990年代から導入が始まったいわゆる「コミュニティバス」です。武蔵野市の「ムーバス」が先駆例として有名ですが、「地域で考えるバス」=「コミュニティバス」の形で広がりました。既存のバス路線等を補完する交通、地域で残された交通空白地域を対応する交通、地域福祉に貢献する交通など、多くの自治体が各地域のコンセプトを定め、計画の立案から、導入、運行まで取り組んできました。




地域の公共交通に必要な3つのバランス

このように、地域の公共交通の多くはコミュニティバスの形で導入されてきましたが、地域の公共交通には以下の"3つのバランス"が必要となると考えます。

交通体系のバランス

地域の公共交通を考える際、交通システムごとに長距離、中距離、短距離や、基幹、支線などの役割分担があり、さらにそれぞれの連携やネットワーク確立など、地域全体としての交通体系の整理が必要となります。

えぼし号
写真:えぼし号(茅ヶ崎市)

既存事業者とのバランス

民間や公営の既存路線バスが運行している中で地域の公共交通を導入しようとする場合は、それぞれが共存、共栄することで全体として力を維持していくことが求められます。極端な例ですが、自治体のコミュニティバス導入が既存のバス事業者のバランスを崩すことは避けるべきことであり、補完しあう交通体系が望まれます。

町内循環バス
写真:町内循環バス(愛川町)

※写真は当社で計画やフォローアップに携わった自治体のコミュニティバスです。

3者(住民・行政・事業者)とのバランス

持続可能な交通サービスの実現には、住民、行政、事業者のバランスが必要です。住民は地域ニーズを伝えることに加え、調査や導入の支援、さらには運行後の積極的な利用やサポートを行います。行政は導入における検討主体となることもありますが、関係者間(警察や道路管理者等)の調整といった役割も重要です。事業者は既存路線であれば見直しの検討、新規路線であれば事業化検討や導入、運行といった役割があります。三者の協働が成功に繋がるともいえます。

地域の公共交通の主役である住民

「地域で考える公共交通」として、今後はますます地域住民の関わり方が重要となります。まずは、自分たちの地域の公共交通は自分たちが考え、取り組むといった姿勢を持つことです。そして、検討組織を立ち上げ、調査を行い、導入に際しては事業者への支援を行い、運行後は運行や計画の責任者の一部となり利用促進や改善に努めていく立場となります。昨今は、従来のように行政に対する要望型ではなく、地域住民自らが運行責任者としての認識を抱き、自らの責任の下、自らの発起で検討する事例が増えてきています。


なお、"住民"主体の検討例として、横浜市や川崎市において「地域住民が主体となって公共交通を検討することに対するサポートの仕組み」があります。地域にあった、地域住民が主体となった持続可能な交通の実現の取り組みとして先進的な事例であり、現在も多くの組織の立ち上げ、検討、導入が進められております。

開通式
写真:地域住民主体の乗合タクシー開通式

路線検討
写真:地域住民・関係者による路線検討

地域の公共交通の新たな形


地域の公共交通として新たな形で検討、導入された例を以下に紹介します。


ケース1

コミュニティバス等の新しいシステムを導入する際には、行政側に新たなコスト負担が生じる場合がほとんどです。しかし、最初はコミュニティバスとして導入し、一定の需要確保に結びつけて、最終的には行政主体路線から民間バス路線へ移行するという考え方(コミュニティバスの路線バス化)に取り組むケースもあります。また逆に、コミュニティバスを導入検討する際、民間バス事業者が既存路線の見直し、または新路線の導入検討といった調整を再度行った結果、自治体で検討していたコミュニティバスの運行計画部分を、民間事業者が継続運行することにした事例もあります。

その他、地域住民が主体となって調査結果(需要やニーズ)を事業者に提示し、路線やサービス(時間や頻度)の見直し実現化に向けた取り組みケースもあります。

ケース2

日本では、大型バスが運行できる道路ばかりではなく、車両の通行自体が困難な地域も多く存在します。狭隘道路の多い地域、丘陵地、坂の多い地域などに対応するため、通常の路線バスではなく新たな乗合タクシー(ワンボックス車両)として運行するケースも多くあります。

タクシー事業者が乗車定員10人乗り以下のワンボックス車両により乗合タクシーとして運行するケースや、またバス事業者が15人乗りのワンボックス型車両により運行するケースもあります。いずれもきめ細やかな交通サービスとして住民に提供されています。

写真:横浜市戸塚区小雀地区の乗合タクシー(試行運行)
写真:横浜市戸塚区小雀地区の
乗合タクシー
(試行運行)

ケース3

デマンド型交通システムは、日本語で言うと「需要対応型交通」ということができ、通常のバス路線などの定時定路線型サービスとは異なり、需要(利用ニーズ)に応じて路線や時間などを柔軟に対応する交通サービスです。特に山間部や過疎地など、中心部に比べて需要の少ない地域で効率的に運行するために導入されるケースが多く、乗合タクシーのような形で東北地方に多く見られます。

写真:福島県二本松市のデマンド交通(ようたすカー)
写真:福島県二本松市のデマンド交通
(ようたすカー)

ケース4

従来の地域公共交通の計画においては、福祉交通(いわゆるSTS"スペシャル・トランスポート・サービス")の概念は含まれず検討されることが多いのが実状です。福祉交通のあり方としては、既存のNPOや福祉タクシー事業者の運行サービス情報を一括でとりまとめ、情報支援を行う(配車を行うケースもあり)センター機能の整備がいくつかの自治体で見られるようになってきました。

写真:板橋区の福祉交通支援センター(実証実験として実施した際の写真)
写真:板橋区の福祉交通支援センター
(実証実験として実施した際の写真)

地域で公共交通を考えよう


前項の「地域の公共交通の新たな形」は一つの例ですが、個別のドアツードアの交通ニーズから、多くの需要を大量に輸送する交通ニーズまで、様々な交通サービスが存在します。タクシー事業者が地域密着型の公共交通サービス提供をするケース、デマンド型交通などの工夫したサービス提供などのケースも多く見られ、それぞれが地域の特徴にあわせて運行の実現化をしています。(現在検討中の地域や住民主体も多くあります)


交通問題の解決は地域住民が主体で検討する時代といっても過言ではない時代に変わりつつあります。そしてそこには、地域住民が主体となることのメリット(ニーズにあった運行計画、各種調整、利用増加など)がたくさんあります。


みなさんが地域の公共交通を維持するため、あるいは改善するために、いきなり検討組織の立ち上げを図ることは難しいかもしれません。でも、現行の公共交通を利用するように心がけること、隣近所の方達と公共交通について話しあってみることはできると思います。まずはそこから始めてはいかがでしょうか。多くの方の考えが集まれば、検討組織を立ち上げて取り組んでいく大きな原動力となります。ぜひみなさんで、"公共交通中心のまちづくり"を追求していきましょう。


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