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八千代エンジニヤリングが毎月お届けするちょっとイイ話

失われるウミガメの産卵地 消失の進む砂浜と人工海浜の造成

  • 河川・水工
  • 環境

ウミガメの産卵地が世界的に減少していることをご存知でしょうか?今月は、ウミガメの産卵地としても重要な砂浜の保護事業についてご紹介します。

失われるウミガメの産卵地

海辺の風景

Written by rinkai 総合事業本部 臨海開発部

珊瑚礁の広がる沖縄の白い砂浜、その多くが人工的に造成された砂浜であることをご存じですか? 自然豊かな沖縄でさえ、自然の砂浜が消失しつつあり、全国的にもここ数十年の間に海岸線の後退が進行し、多くの砂浜が失われていっています。

砂浜の消失は貴重なウミガメの産卵地をも失わせることとなり、彼らは今、重大な危機に瀕しています。

こうした砂浜の消失に対し、海岸の管理者は、海辺のレクリエーションや環境保護、景観保護等に関わる様々な住民の要請を受けており、 現在、人工的に砂浜を作る人工海浜の造成が日本各地で行われています。

しかし一方で、そもそも砂浜の消失は、様々な人的要因によって進行しているということも見落してはなりません。

なぜ砂浜が減少するのか?

人工海浜(沖縄県)
人工海浜(沖縄県)

海岸を形成する砂は、主に、河川から供給されるものです。また、量としては少ないですが、波によって侵食された海崖からも供給されます。

砂浜の消失の主な人的要因は、

①ダムや砂利採取によって河川からの土砂供給が減少した。

②港の造成などで、土砂収支バランスが崩れた。

③護岸などにより砂の流出が助長された。

④海面の埋立や道路の拡幅工事などによって面積が減少した。

などとされていますが、いずれも人が、その生命や財産を守るため、また利便性を高めるために行ってきたというやむをえない側面もあります。

従来、波や流れの作用を受ける海岸では、その外力によって常に土砂の収支はバランスが保たれてきました。 ところが、ほんのちょっとしたきっかけ(要因)で土砂の収支バランスが崩れると、海岸は必然的に侵食の体を現します。

海岸保全の取り組み

擬岩
景観に配慮した擬岩による
離岸堤の設置(沖縄県)
  • (※)人工海浜
    海岸防災や海洋レジャー空間の創造を兼ねた海岸施設の一つで、文字通り人工的に砂礫を投入して造成 (養浜)した海浜を指しています。

海岸保全施設については、昭和34年の伊勢湾台風の被害等をきっかけにして、堤防や離岸堤など、 全国的な整備が急がれるようになりました。その後、高度経済成長期におけるダム整備や土砂採取によって海岸への砂の供給量が減少すると、 昭和50年代頃からは深刻な海岸侵食の問題が浮き彫りになりました。そして、海岸保全事業は、護岸の改良や突堤・離岸堤の整備等、 砂浜消失の抑制に力点が置かれてくるようになり、さらには、時代の移ろいとともに、 環境や海辺利用に配慮した人工海浜(※)の造成等に少しずつシフトされてきています。現在は全国各地で、 地域住民も交えた様々な取り組みが行われています。

人工海浜にかかる諸問題

沖縄県
突堤などによる砂の流出防止策(沖縄県)



竜宮城
  • ((※)エコ・コースト事業
    自然環境を積極的に保全・回復する必要性の高い海岸において、津波・高潮・侵食等の自然災害から海岸を防護しながら、 周辺の生態系や自然景観等に配慮した海岸整備を行う事業。

問題点1.
「いかに海浜を安定させるか」(養浜材の流出防止策について)

もともと砂量が少ない砂浜や、すでに砂量が著しく減少してしまっている砂浜を造成する場合、造成した 砂を流出させない対策を講じることが必要です。特に台風などがもたらす高波浪は、砂を一気に流出させます。

砂浜を安定させるためには、突堤や離岸堤等により人工海浜を囲み、波を制御する対策を講じます。

問題点2.
「ウミガメの産卵を妨げない工夫」

近年は人工海浜でも、ウミガメの産卵が確認されるケースが増えています。一方、昔からウミガメの産卵場所であった全国各地の海岸では、 ウミガメの産卵に配慮した様々な工夫がより強化されています。

例えば、産卵場所の確保のため、護岸の形状を改良して砂浜をできるだけ多くとるよう工夫したり、 上陸を妨げる海岸線のコンクリートブロックを移設・撤去するなどを行っています。 ただし、防災と自然への配慮を同時に考えることが重要なだけに、非常に高度な技術力が必要となってきます。

こうした試みは、国土交通省が実施するエコ・コースト事業(※)として、自然と共存する海岸整備を目指すと共に、 海岸愛護の精神を啓発することを目的として進められています。

問題点3.
「漂着するアオサやゴミの問題をどうするか」

人工海浜を造るためには、比較的安定した水域を設ける必要があります。 しかし、波の静かな内湾ではアオサ等の海藻が、外洋に面した海岸では漂流するゴミが海浜に漂着しやすくなります。 現在、残念ながらこれに対する有効な策は見出せずにおり、その処理はなお、人力に頼らざるを得ない状況です。

鳥取県
飛砂による道路状況(鳥取県)

問題点4.
「飛砂の問題をどうするか」

砂浜を造成すると、強風によって飛ばされた砂が、海岸背後の道路や人家に被害をもたらすことがあります。 防砂フェンスなどもありますが、背の高いフェンスの設置は海辺の景観を阻害するといった別の問題をもたらします。

自然条件の厳しい海辺に、人にもウミガメにも快適な人工海浜を造ることは、最先端技術を誇る日本においてさえ、 いまなお上記のような難しい問題を数多く突きつけられます。しかしそれでも私たち建設コンサルタントは、 こうした問題解決に向けた技術的な取り組みを日々行っています。


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