1. TOP
  2. ちょっとイイ話
  3. 2010年
  4. ダムを可視化する

八千代エンジニヤリングが毎月お届けするちょっとイイ話

3次元データの利用 ダムを可視化する

  • 研究開発
  • 河川・水工

利水・治水といった私たちの生活に重要な役割を果たしているダム。傍目には巨大なコンクリートの塊ですが、そのコンクリートの中にはダムの運用や安全管理に欠かすことのできない電気通信設備や機会整備がたくさん入っています。 今月はそれら重要な設備管理に対して3次元データを活用するという、ちょっと新しい取り組みについてご紹介したいと思います。

~身近になり3次元データ~

身近になる3次元データ

Written by shuhei yamaguchi 山口修平

3次元データ-みなさんは見たり使ったりしたことがあるでしょうか。

実際には3次元データと言われてもなかなかピンとこないと思いますが、たとえば「ゲームや映画で使われるCG」といえば、身近に感じていただけると思います。それから、電化製品や携帯電話などを設計する際にも3次元での製作が一般的になっています。

Google社の公開しているGoogleEarthもそうです。これは3次元の地形表示をすると山の形や建物の形状をパソコンの画面上で自由な角度から見ることができるものです。この地形データも実はスペースシャトルが計測した80m間隔ほどの測量データや、航空写真から作成したより精細な標高データを使用していると言われています(地域によります)。

【GoogleEarth】山間部
【Google Earth】山間部
【GoogleEarth】都市部
【Google Earth】都市部

建設業界では、下図のように土地の形を計測した測量データなどで利用されています。

【測量データ】平面図
【測量データ】平面図
【測量データ】鳥瞰
【測量データ】鳥瞰図

このように建設業界でも測量成果の3次元化が促進され、年を追うごとに高精度の3次元測量データの流通が増えています。私たちも計画や設計・解析等、公共事業の多岐にわたる分野を担当する建設コンサルタントとして、3次元データを活用することで事業の品質向上・効率化に多方面から取り組んでいます。

今回の特集では、そうした活用方法のひとつとして、ダムの維持管理をサポートする取り組みを紹介したいと思います。

ダムの内部、知っていますか?

みなさんの頭の中にあるダムを想像してみてください。

山の谷間にそびえる巨大なコンクリートの塊。

まるで山の一部であるかのように水を堰き止め、湖を作る。

宮ヶ瀬ダム
宮ヶ瀬ダム
大井ダム
大井ダム
富郷ダム
富郷ダム
横川ダム
横川ダム

重力式コンクリートダム(自分の重さで水圧を支える形式)の中で日本一堤体積の大きな宮ヶ瀬ダムともなると、高さ156.0m、横の長さ400.0m、堤体積に至っては2,060,000m3を超える途方もない規模になります。どんなに雨が降ろうとも、地震が発生しようとも、びくともしないと思わせる巨大なダムですが、実はたくさん水が貯まった時には、その水の力で(ほんの数センチですが)歪んでいるんです。それに、コンクリートの塊で出来ているとはいっても、ダムの基盤や隙間からは少しだけ水が漏れたりしています。

【ダムの内部】ダムにかかる力
【ダムの内部】ダムにかかる力
【ダム内部】漏水量計

【ダムの内部】漏水量計

ダムの下流にはたくさんの人が生活しているため、万が一にもダムに異常があってはいけません。ダムの管理者はこれらの歪みや漏水量を計測し、ダムの状態を常に監視して、異常な事態が起こらないように、日々安全管理をしています。この日常管理のために、ダムの中には通路やたくさんの計測機器、そして機器を繋ぐケーブルが張り巡らされています。継続的にダムの安全管理を行っていく中で、異常の兆候を捉えるための計測機器が壊れてしまっては大変です。値を計測するだけでなく、こうした機器自体のメンテナンスも、ダム全体の安全管理のうちの大事な要素の一つなのです。

しかし、ダムの耐用年数(使用可能な期間)は数十年(※)と非常に長いため、一人の人間が最初から最後まで管理し続けることはできません。そのために、ダムの管理に関わる情報を共有し、管理者間で引き継いでいくことが必要になります。

これまでの経験から、ダム堤体のコンクリートについては100年程度経ったダムでもほとんど強度は低下しておらず、場合によっては強度が増していることもあることがわかっています。一方、ダムの各種設備はそれぞれ耐用年数がありますから、それらについて適切に補修・更新をしていけば、ダムは半永久的に使用可能と考えてよいものと思われます。(日本ダム協会;ダム辞典[用語・解説]より)

ダムの周辺地形と内部を「見える化」(可視化)する

そこでダム内部の設備や機器を一目で把握するために、3次元で俯瞰的にダムの内部を表示できるもの作りました。もちろん以前からも2次元の図面で管理は行われていました。しかし、コンクリート中に埋め込まれた機器(温度計など)やケーブル類の配置は、3次元的に表示することでその位置関係をより明確に把握できるようにしました。また位置関係だけでなく、その機器の型番や交換時期などのメンテナンス情報へもリンクしています。

【ダム可視化】インターフェース
【ダム可視化】インターフェース
【ダム可視化】堤体内部
【ダム可視化】堤体内部
【ダム可視化】ケーブルの経路
【ダム可視化】ケーブルの経路

なお、3次元データで表示できる情報は主に以下のようなものです。

①ダム本体とその周辺地形
②内部に配置される計測機器
③電気・通信用のケーブルの経路
④機械設備


また、データシステムの主な機能は以下の通りです。

①各施設の表示・非表示・透過の制御
②視点を自由に移動できる
③機器の位置を確認し、その管理情報へリンクする
④名前(計測機器番号)などから検索し、位置を表示する

意外な使い道

3次元データの当初の適用目的は施設・設備の維持管理支援でしたが、意外な使い道もありました。最近、耳にするダム見学会です。ダムによっては定期的に一般の方がダムの内部や管理棟を見学できるツアーを実施しているようです。しかし、ダム内部を歩けると言っても中は小さなトンネルなので、自分がダムのどこを歩いているかを理解するのはなかなか難しいものです。そこでダム内部の通路を3次元データで俯瞰的に確認してからダムを見学すると、自分が今ダムのどこを歩いているのかを把握しやすくなります。

【その他の利用法】監査廊下
【その他の利用法】監査廊下
【その他の利用法】監査廊の俯瞰
【その他の利用法】監査廊の俯瞰

新たな取り組み

今回の事例では、これまで蓄積されてきた情報を活用して3次元データを作成しました。現在は、3次元測量データのさらなる活用によって、事業全体の効率化をより推し進めるべく、事業の設計段階から3次元化を図ることに取り組んでいます。


【その他の取り組み】3D設計による配筋図
【その他の取り組み】3D設計による配筋図

ページトップ