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八千代エンジニヤリングが毎月お届けするちょっとイイ話

村に学校が出来た! ナイジェリア国の教育事情

  • 海外事業

今月は、ナイジェリアという国をより理解して頂くために、同国の概要とあわせて、その教育事情や当社が携わったプロジェクトについてもご紹介したいと思います。

ナイジェリアに学ぶ

魅力ある国・民族

Written by yazu 谷津哲夫

ナイジェリアと聞くと、大概の人はあまりパッとしたイメージを抱きにくいかと思いますが、中に入って見ると、実に奥深い文化・歴史があります。 また人々も、我々日本人と同様に義理・人情を重んじ、家族・親戚などの結束が固くそれぞれが助け合って生活しています。彼らから学ぶことが多くあり、 魅力のある国・民族です。

ナイジェリアの概要

ナイジェリア連邦共和国
【ナイジェリア連邦共和国】



首都アブジャの一部分
【首都アブジャの一部分】

右側高層ビル群は官庁街です。正面の山は"Aso Rock"と言う岩山で、アブジャのシンボルです。アブジャは新興都市で、著名な日本人建築家によって都市開発計画が策定され、現在は第2ステージを進行中です。




ハマターン
【ハマターン】

ナイジェリア北部のボルノ州でのハマターン(砂嵐)の様子。

地域特性

ナイジェリア国は、アフリカ大陸の西部に位置しています。国土の東側にカメルーン、北側にニジェール、北東はチャド湖を挟んでチャド、西側はベナンと国境を接し、南側は大西洋のギニア湾に面しています。国土面積は92.4万km2(日本の2.5倍)、人口は1億4,809万人(2007年の国勢調査統計)です。首都はアブジャ(人口は約140万人)ですが、最大都市は西南端にある旧首都のラゴス(人口約1千万人)です。ナイジェリアはアフリカ最大の人口を擁する国であり、乾燥地帯でキャラバン貿易を通じてイスラム教を受容した北部と、熱帯雨林地帯でアニミズムを信仰した後にヨーロッパの影響を受けキリスト教が広がった南部との間には、文化・経済発展に大きな違いがみられます。

ナイジェリア国の気象特性の一つに、"ハマターン"と呼ばれるサハラ砂漠からの砂塵を含んだ砂嵐があります。例年12月~翌年2月ごろまで全土に渡って吹き荒れることが多く、この時期には視界が200m程度になることもあり、時には風速30m/秒程度の突風が吹くこともあります。また、雨季においては、南西季節風がギニア湾から高温多湿の空気を運んで雨をもたらし、午後から夕方にかけて雷雨性のスコールが多く発生します。季節は雨期(4月~9月)と乾期(10月~3月)に分かれ、雨季に気温が低く乾季に気温が高くなります。過去3年間の年間平均降雨量は約750mmですが、ほとんどが雨期に集中しています。

経済

ナイジェリア国は、国連開発計画の「人間開発指数(Human Development Index)2005年」ランク付けでは177ヶ国中第158位、国民一人当たりGDPは1,128US$です。世界銀行推定では、一人当たりの国民総所得は930ドル(2007年)となっています。

前政権のオバサンジョ大統領は、1999年の政権発足時に発表した経済政策において、「国の経済体制を自由市場経済・民間主導型とし、人間的で国民に開かれたものにする」と述べています。また、その政策によって国の経済を再生・成長させ、雇用機会を創出し、国民の生活水準を改善することを目指しました。続いて2007年5月に大統領に就任したヤラドゥア大統領は、7つの重点項目(① 緊急エネルギー対策、② 生命及び財産に対する安全対策、③ 土地改革、④ 人材形成、⑤ 義務教育、⑥ 貧困削減、⑦ 交通・インフラ整備)を掲げ、経済開発に取り組んでいます。

ナイジェリアはOPEC第5位(2009年時点で日産170万バーレル/日)の産油国です。原油による国家収入は、近年の原油価格の高騰によって、2000年から2003年にかけての年平均150億ドルが、2005年から2008年にかけては年平均360億ドルへと大幅に増えています。ただし、こうした目覚しい経済成長にもかかわらず、1人当たりの国民総所得は未だ930ドル(世銀、2007年)に留まっています。ナイジェリアの産業構造についてみてみると、第1次(農業)・第2次(鉱工業)・第3次(サービス)産業は、GDP比で各々33%、39%、28%となっています(世銀2007年)。GDPの約2割、輸出の約9割を石油産業部門が占めている一方で、人口の大多数が小規模農家です。

ナイジェリアの教育事情



ナイジャー州の小学校
【ナイジェリアの小学校】

ナイジェリア北部ナイジャー州の小学校。他の地域でも、子供たちは似たような造りの教室で勉強しています。




マンゴーの木
【マンゴーの木の下教室】

マンゴーの木は横に枝が張るため、傘の役目を果たします。強い直射日光を遮り、多少の雨を凌ぐ事ができます。『マンゴーの木の下教室』は、ナイジェリアでは当たり前の光景となっています。



教室
【教室の様子】

通常、1教室の定員は40人ですが、教室不足という現状においては、多くの教室が定員の2倍~3倍の生徒であふれかえっています。




グラフ1
グラフ1
【性別生徒数】



グラフ2
グラフ2
【学年別生徒数】

三つの民族と知識階層

ナイジェリアは、大きく分けて三つの異なる民族に別れています。北部のハウサ族(イスラム教)、南東のイボ族(キリスト教)及び南西のヨルバ族(キリスト教)です。この三つの民族はそれぞれの文化・歴史を継承し、かつ、異なる言語が用いられています。共通言語は教育現場で使用されている英語に統一されていますが、地方の奥深い村落では未だにまったく英語が通じないところもあります。また、英語での会話はできても、読み・書きができないといった、成人の識字率の低さも大きな問題となっています。一方で、かつての宗主国であったイギリスやアメリカ、その他の国で学んだ優秀な人材も多数輩出しており、ナイジェリアでは貧富の差同様、教育面でも大きな知識階層を生み出しています。

マンゴーの木の下で

このためナイジェリアは、アフリカ連盟機構(OAU)による「アフリカの教育10年間(1997~2006)」宣言に呼応する形で1999年、オバサンジョ前大統領により基礎教育普及化計画(Universal Basic Education Program)を開始しました。この計画の目的は、9年間の基礎教育(小学校6年間、中学校3年間)を義務化・無料化することによって、全国民に教育の機会を提供し、非識字を撲滅することにあります。

しかしながら、基礎教育の義務化・無料化を唱えても施設の拡充・整備が追いつかずにいます。未だに マンゴーの木の下が教室だったり、壁はあっても屋根が無い教室などなど、我々の想像を絶する悲惨な光景が否応なしに目に飛び込んで来ます。また、きちんとした建物内であっても、1教室に80人~100人の生徒達で埋め尽くされるような状況であり、決して満足な授業形態には至っていないのが現状です。ただし、この様な環境でも子供達の勉学に対する意欲は高く、また、前述のように優秀な人材も生まれています。

現在の日本の子供達の学習環境は、少子化・過疎化に伴って各地の公立校での統廃合が進み、1教室当り20人~25人しか生徒がいないといった、ナイジェリアとは逆の悩みを抱えていますが、ナイジェリアから見れば恵まれ過ぎていると言っても過言ではありません。日本の子供達は、いかに充実した環境・内容で勉強ができているかと言う幸福感を感じ取って欲しいものです。

女子教育への偏見と低い卒業率

さて、話は少々外れてしまいましたが、ナイジェリアにおけるもう一つの大きな問題は、女子教育への偏見と卒業率の低さです。 ナイジェリア全体で55,783校の小学校があり、24,563,000人の生徒が通学しています。その内訳は、男子生徒56%、女子生徒44%となっています。全国レベルでは上記の様な数値を示していますが、北部地域を代表するカノ州では、グラフ1に示しているとおり女子の就学率が低くなっています。これは、ただ単に女子の人口が少ないのではなく、女子には教育が必要でないと言うような風潮があり、通学させない親が未だに多い表れでもあります。

こうした状況はカノ州に限らず、イスラム色の強いハウサ族の多い北部州の特色でもありますが、2009年7月26日、痛ましい事件が北東州のバウチで発生しました。欧米型の教育を否定し、コーランこそが全ての教育であると唱えるイスラム武装勢力ボコ・ハラム(「教育は罪」の意味)が警察関係・行政施設を襲撃したのです。この事件は日を追うごとに近隣州のボルノ、ヨベ、カノ州へと飛び火し、警察の発表では、警察及び武装勢力双方で約600人の死者が出たとも報じられています。

さらにグラフ2で特筆すべきことは、高学年になるに従ってのドロップアウト率の高さです。これは、大半の父兄が農業を営んでいることから子供も一家の貴重な働き手として確保されてしまうこと、つまり子供は成長するにつれて学校へ通学できなくなるといった貧困事情が大きな要因となっています。またイスラム社会では、女性は男性に従順に仕えるように育てられるため、13歳~14歳で嫁いで行くことも少なくなく、嫁ぎ先では家事・農業等の働き手としての役割を担います。なお迎え入れる男性側は、こうした女子の実家に対して金品を代償として納め、女子の家族はその代償を生活の糧にしています。

学校建設プロジェクトのアウトプット

日本による支援
最初の支援小学校
【最初の支援学校】

2006年3月、ナイジャー州で完成した支援最初の小学校。現地調達が可能な材料での設計・施工を十分に考慮し、且つ、維持管理費用も軽減できる仕様としました。


教室内の子供たち
【教室の様子】

教室内に入ると、全員起立で"Welcome Sir"と迎え入れてくれました。小学校での思い出づくりに役立ったことは大変感慨深いものがあります。この子達は明日のナイジェリアを切り開く大切な希望でもあります。


日本政府は、ナイジェリアのこうした状況を改善するため、ソフト・ハードの両面による支援を広げています。ソフト面での支援は「初等理数科教育強化プロジェクト」であり、教育の質の向上を目指して2006年にスタートさせ、2009年に第1ステージを終了しました。ハード面では不足教室数を補うための教室建設を手がけました。具体的には2005年よりナイジェリアのナイジャー、プラトー及びカドゥナの3州に対して70校・490教室を建設し、2008年3月に全て完成・引渡しを行いました。私たち八千代エンジニヤリングは日本政府の下で、このハード面での支援を担い、調査・設計・実施監理及び技術指導(ソフトコンポーネント)を行いました。

道徳教育

ナイジェリア各地の学校施設を見てみると、金額(工事費)の安さにビックリすると同時に、大変お粗末としか言い様がないような施工・出来栄えの建物が少なくありません。ただし、この背景には様々な問題が山積しており、一概に何がいけないとは言いがたいのも事実です。例えば、私たち日本人の様に物を大事に使う・扱うという姿勢が欠けていることや、壊れたら直ぐに修理するという習慣の乏しさなどが挙げられます。皆さんの中には、"道徳教育"と言う授業を受けられた方も多いと思いますが、ナイジェリアでは道徳心やモラルなどを子供達に教える場がない、といった理由も大きいのです。

yecプロジェクト

こうした背景から、当社チームはプロジェクト実施にあたって、既存施設の状況を改善することを前提とし、次のことを計画のコンセプトとしました。

  • (1)設計・仕様の検討に際しては、現地調達が容易で且つ、安価・品質の良い資材を選定する。(こうすることによって地場産業育成にも貢献できる!)
  • (2)設計・仕様の基準はナイジェリアでのスタンダードを準拠しつつも、改善すべき点は改善する。例えば、構造体を堅固なものにする、窓・ドアーを締め切った状態では暗いため『明り取り』を設けるなど。
  • (3)空間を十分に活用するため、天井は設けない。ただし、雨音・輻射熱を軽減するため、屋根には野地板を張る。
  • (4)良好な教育環境づくりのため、常に安全・清潔な状態を保てる様な工夫をする。
  • (5)現地業者が施工し易い設計・工法を採用する。
  • (6)維持管理の容易さと、耐久性を考慮した設計・仕様とする。

この結果、完成した教室は非常にシンプルな造りながらも、使い勝手の良い広い空間となり、生徒達がのびのびと授業を受けている光景を見ることができるようになりました。また環境の整った教室を建設・提供できたことにより、授業中にメモを取る生徒達も増えました。今後は必ずや学力の向上に繋がって来るものと思われます。

私たち日本人から見れば、提供できたものは簡素な建物・教室です。しかし、なによりも絶対数が不足しているナイジェリアにおいては、一点豪華主義ではなく、国内に広く行き渡せることが現状のなすべきことです。つまり、建設コストを抑え、一つでも多くの建物・教室を建設することが最大の目標なのです。こうした成果の表れでしょうか、私たちは学校が完成する都度、引渡し式を行っていますが、それぞれの地域・PTA、学校が特色を活かした催しを設け、我々関係者に労いと感謝の意を最大限に表現してくれたのです。そのときの光景は今でも脳裏に焼きついています。

また、このプロジェクトでは教室の建設だけではなく、衛生環境を改善することを目的としたトイレの整備や井戸の建設も実施し、プロジェクト全体の効果発現に大きく寄与しています。現在は、ソフト・ハード面での我が国の支援も第2ステージに移行し、対象州を拡大しております。

最後に、当社はナイジェリアに限らず、世界中でこの様な開発の支援をしておりますが、一言で言えば本当に"泥臭い"仕事です。しかし、これらの国々において私たちは、一技術者ではなく"日本人"と言うなんとも責任重大な立場で仕事をさせていただいており、非常に意義に感じ入るところでもあります。

このサイトを見て、もし私達と一緒にこの様な仕事に携わってみたいと言う気持ちになられましたら、是非採用情報ページに移行して当社のドアーをノックして見てください。

完成・引越し式
【完成・引渡し式】

完成・引渡し式では、この様なダンスなどが披露されて式典を盛り上げ、喜びを表現していました。


完成現場視察
【完成現場視察】

当社前本部長の完成現場視察。生徒たちの屈託のない笑顔は私たちエンジニアにとっても、疲れを忘れさせ、明日への活力となっています。


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