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八千代エンジニヤリングが毎月お届けするちょっとイイ話

山の守護神 砂防堰堤って、見たことありますか?

  • 河川・水工

この季節になると、大雨による土石流発生のニュースがしばしば報道されるようになります。今月は、こうした土砂災害を防ぐための対策についてご紹介したいと思います。

砂防堰堤ってなに?

土砂災害を防ぐ土木建設

Written by IKEDA makoto 池田誠

皆さんは「砂防」という言葉をご存じですか?

日本は、国土の約7割を山が占めている国です。夏から秋にかけては梅雨や台風等で大雨が降りやすく、山が崩れて土砂災害も起きやすくなります。「砂防」とは、こうした土砂災害から住民の命や財産を守るために行われている事業です。

その中で砂防堰堤(さぼうえんてい)は、土砂災害による被害を防ぐために作られる施設です。「砂防ダム」という言葉の方が聞き慣れているかもしれませんが、いわゆる一般のダムとは異なり、その機能は土砂災害防止に特化しています。

砂防堰堤は、山の中にあることが多いので人目に触れることは少ないですが、今回は砂防堰堤が実際にどんな施設なのかをご紹介します。


砂防堰堤を探してみよう!

では早速、山梨県にある砂防堰堤を探しに行ってみましょう。砂防堰堤は砂防ダムとも言われるだけに、大きな構造物を想像する方もいるかもしれませんね。

砂防堰堤は、裏山のあるような住宅地の奥などにひっそりとたたずんでいます(写真1)。たいてい、高さは10m前後ですが、写真2の砂防堰堤は約14mあります。近くまで行くと結構大きな構造物です。

住宅地の裏に砂防堰堤が見えました
写真1:住宅地の裏に砂防堰堤が見えました
近くまで行くと...意外と大きい!
写真2:近くまで行くと...意外と大きい!

砂防堰堤は、最近完成したものばかりではなく、古くは明治・大正時代に作られた施設もあります(写真3)。

大正時代に建設された芦安砂防堰堤(有形文化財)
写真3:大正時代に建設された芦安砂防堰堤(有形文化財)

砂防堰堤はどのように使われているのでしょう?

先ほどの砂防堰堤の裏まで歩いて行くと、裏側は何もなく、空っぽでした(写真4)。ダムなら水がたまっているのに......。

砂防堰堤は、一体どのように使われているのでしょう?

 砂防堰堤の裏側
写真4:砂防堰堤の裏側

例えば、写真5のように険しい山の荒れている場所では、たまっている土砂が大雨でいっきに崩れ、大量の土砂や岩石、流木などが土石流となって押し流される可能性があります。そしてこの土石流は、ひどい時にはあっという間に下流の人家や生命を飲み込んでしまいます。

 荒れている山
写真5:荒れている山
 土砂流出による災害
図1:土砂流出による災害

上流から流れてくる土砂は、写真6のように人間の背丈を超える大きさのものもあります。こんな大きな土砂に襲われてはひとたまりもありません。

「土砂」とはいってもこんな巨石まで...
写真6:「土砂」とはいってもこんな巨石まで...

写真7:上流から流れてきた大量の土砂

こうした土砂の流下、いわゆる土石流に対して活躍しているのが砂防堰堤です。

砂防堰堤は、上流から流れ下ってくる土砂を一時的にためて、そのあと何年もかけて、少しずつ下流に流す働きをしています。そして、もし土石流が発生しても、砂防堰堤が土砂を食い止め、流れの力を弱めて、下流に被害が出るのを防いでいます。

では次に、砂防堰堤の具体的な働き(機能)について見てみましょう。

①山の斜面を流れる傾きの急な川では、水の流れが山の土をけずり、けずられた土砂は、水といっしょに下流へと流れていきます。
②砂防堰堤をつくると、流れてきた土砂は堰堤にくいとめられて、上流側にたまります。すると、たまった土砂で川底が上がり、上流側の川原が広がります。このため、川の流れはゆるやかになり、水の力も弱くなるので、川底や川岸はけずられにくくなります。
③大雨がふり、大量の土砂が土石流となって流れてきたときは、砂防堰堤は堰堤がいっぱいになるまで土砂をためます。また、土石流は広い川原に広がるため、いきおいが弱くなり、下流に被害を及ぼすことが少なくなります。
図2:砂防堰堤の機能(出典:砂防広報センターHP)

通常、砂防堰堤が満砂状態になるまでには、相当長い時間がかかるのですが、ひどく荒廃している山の中では流れてくる土砂量も多いだけに、砂防堰堤の裏側が満杯(満砂)になってしまっている場所もあります(写真8)。一見、すでにその役割を終えたように見えますが、実は図2で示されているように、まさに活躍中の状態なのです。つまり、満砂したことで川の勾配がゆるやかになり、次に洪水がおきたときに、上流から流れてくる土砂を一時的に止めることができるという、下流への流出土砂を調節している状態なのです。

活躍している砂防堰堤
写真8:活躍している砂防堰堤

満砂後は基本的に、たまっている土砂を取り除かない限りこの状態が続きます。


いろいろなタイプの砂防堰堤

砂防堰堤には、写真9のようにいろいろなタイプがあります。

それぞれ必要とされる役割に応じてタイプが選ばれ建設されていますが、いずれのものも下流に住んでいる人々の生活を災害から守っている山の守護神です。

あなたの家の近くや、旅行・ハイキングなどで行く先の山の中でもいろいろなタイプの砂防堰堤が見つけられるかもしれませんね。

タイプ 写真 説明
重力式コンクリート砂防堰堤
桂川川合沢砂防堰堤(山梨県)
最も一般的な砂防堰堤の形です。山の中にそびえ立ち、土砂を食い止め、下流の家や人命を守っています。
アーチ型砂防堰堤
真船堰堤(福島県)
高い堰堤として大量の土砂を抑える、アーチ型の堰堤もあります。
鋼製スリット砂防堰堤
貝月谷第1砂防堰堤(岐阜県)
砂防堰堤により、上下流の水・土砂の流れが遮断されないように、普段流れてくる土砂は貯めずに下流に流し、土石流が起きた場合にだけ土砂や流木を食い止める働きを持っています。
普段は、魚の移動も妨げません。
火山砂防対策堰堤
錦多峰川2号遊砂地(北海道)
火山が噴火したときに、大量の土砂を止めるための大きな砂防堰堤もあります。
写真9:色々なタイプの砂防堰堤

土砂災害から身を守るために

土砂災害から身を守るためには、砂防堰堤により土砂の流下を抑えることも一つの方法ですが、日本には無数の土砂災害危険箇所があるため、全ての場所に対して砂防堰堤を一度に建設することは難しいのが現実です。

※「土石流危険渓流」と呼ばれる土石流に対して危険な川は、日本全国で18万以上もあります。

そこで、わたしたち建設コンサルタントが検討する土砂災害対策としては、次に示す3つの方法が挙げられます。

3つの方法
ハード対策
図3:土砂災害対策の3本柱

おわりに

砂防堰堤を眺めながら土砂災害対策についてご紹介してきましたが、いかがでしたか?

「砂防」について少しでも興味を持っていただけたらとてもうれしいです。

私たち八千代エンジニヤリングは、これからも砂防施設の調査・計画・設計など砂防に関わる仕事を通じて、その地域に住んでいらっしゃる皆さんの生命や財産を守るために、これからも日夜努力して参ります。

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