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八千代エンジニヤリングが毎月お届けするちょっとイイ話

道路交通騒音対策 道路交通騒音を低減させるには

  • 環境

今月は、道路交通騒音に対する最も一般的な対策手法である 「遮音壁」の概要と、都市部の代表的な道路構造である 「平面構造」、 「高架構造」、 「堀割構造」に用いる各種の遮音壁、吸音板などの考え方をご紹介します。 

道路交通騒音

 face_f83-shino.jpg先月に引き続き、道路交通騒音に関してご説明します。

 

 

 

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 【遮音壁の効果範囲】

遮音壁は有効な騒音対策ですが決して万能ではありません。遮音壁は高いほど減音効果が高まりますが、中高層住居など音源である自動車が見通せたら効果はほとんどありません。
道路交通騒音を直接住居に到達させないための遮蔽物として、コンクリート板を用いた遮音壁が約40年前に高速道路で初めて設置されました。左図は基本的な遮音壁の効果領域イメージを、右図は保全対象と反対側に遮音壁があると反射音の影響が生じることを示しています。このように反射音の影響を低減させるため、吸音構造をもつ「統一型遮音壁」と呼ばれる遮音壁が開発されました。

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【遮音壁に要求される音響性能】

1) 遮音性能
 遮音壁は、道路交通騒音を遮蔽し、回折効果により減音させるものですから、遮音壁を直接透過してくる音(透過音)が遮音壁の上を越えてくる回折音に比べ、十分小さくなくてはその効果を発揮できないことになります。そのため、遮音壁にはある基準以上の遮音性能(音響透過損失 400Hz:25dB以上、1000Hz:30dB以上)が定められています。

2) 吸音性能
 遮音壁の設置により、遮音壁からの反射音の影響が十分小さくなるように、吸音板にもある基準以上の吸音性能(吸音率 400Hz:70%以上、1000Hz:80%以上)が定められています。 img_f83-2.3.jpg

【素材の性質による遮音壁分類】

1)吸音性遮音板
高速道路などでよく見かける吸音性遮音板は、金属パネルの内部にグラスウール等の吸音材を配置したもので「統一型遮音壁」です。道路側にはスリットなどがある正面板があり、通過した音が吸音材に吸収されます。背面は遮音板で音が透過しないよう遮蔽しています。

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最近では、透光板にもポリカーボネート透光板の内側に空気層を介して透光性と吸音性を有する透光性膜振動吸音材を用いた「透光性吸音板」が開発され、実用化されています。

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その他、多孔質のセラミック素材により吸音性をもたした「セラミック遮音板」、共鳴器の原理を応用した「多孔吸音板」があります。

 

2)反射性遮音板

反射性遮音板には、土工部などで見かけるプレキャストコンクリート製の「コンクリート遮音壁」、高速道路などでよく見かける「透光性遮音壁(通常タイプ)」があります。

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3)透光性遮音板

透光板の素材としては、ポリカーボネート、アクリル、ガラスがあり、耐衝撃性能、耐燃性能、耐久性能、透光性能などが求められています。
遮音壁を設置すると道路北側の住居には日照阻害の影響が生じるため、景観にも優れた透光性遮音板(透光板・透明板)が開発されました。高速道路では、日照に配慮して南側に吸音板、北側に透光板という配置をよく見かけると思います。昔の透光板は経年変化で曇ってしまいましたが、現在では光触媒技術を利用することで防曇性やセルフクリーニング機能を付加することができるようになりました。

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【設置延長】

一方、遮音壁を設置する場合には、遮音壁端部以遠からの直接音、回折音の影響を受けないよう、適切な配置を考える必要があります。一般的には、住居から走行車線までの直距離(d)の約3倍の設置延長が必要とされます。

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平面道路で一般的に普及している対策としては、敷設し易く、騒音の発生そのものを抑制できる排水性舗装があげられます。遮音壁の設置は歩道幅員が広い場合に有効な対策ですが、高い遮音壁は沿道に居住される方にかなりの圧迫感が生じます。比較的容易に設置出来るものとして高さ1m程度の低層遮音壁がありますが、遮蔽効果が期待できるのは低層住居群です。更に、連続した低層遮音壁が設置可能となる住居からの入出路が少ない地区でないと十分な効果は期待できません。また、少しでも騒音を低減する方法として、中央分離帯にも吸音性遮音板を設置することがあります。 img_f83-8.3.jpg

幹線道路では地域の皆さんと共に新しい道づくりが行われており、ここでは国道1号安城環境整備事業の例を示します。

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 高架道路は他の道路構造と異なり、高架構造物(床版・桁)の上を自動車が走るので、タイヤ走行音・エンジン音(以下、空中伝搬音)の他に、高架構造物から発生する構造物音も道路近傍の低層住居に影響を与えます。
先月紹介した道路構造別騒音分布の交通条件で試算した空中伝搬音と構造物音のエネルギー比率、合成騒音レベルを次に示します。高架構造の近傍かつ地表に近い位置では構造物音の影響が見られます。

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【構造物音】

構造物音の対策については床版・主桁の剛性強化・制振対策、遮蔽対策などあり、それらの一例を次に示します。

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なお、既存の高架橋で行う構造物音対策では、荷重増による許容応力、減音効果量、下面遮音板振動による新たな低周波音の発生など、十分に検討する必要があります。

 

【空中伝搬音】

空中伝搬音の対策として高速道路で見かけるように様々な遮音壁があります。よく見るとその先端に何か付いていませんか。それは、先端改良型遮音壁(新型遮音壁)といって、その高さ以下の領域では、同じ高さの遮音壁より減音効果が大きくなるという優れものです。既存の高架橋では、遮音壁を高くすることは構造上できないことが多いので、日照阻害の影響に対しても先端改良型遮音壁の設置は有効です。
先端改良型遮音壁は、約35年前に遮音壁先端に吸音体を取り付けると遮音性能が向上することが研究で報告され、これを契機として各所で盛んに開発が進められました。仮想音源イメージに示すとおり、遮音壁先端は住居側から見れば音源(仮想音源)のようであることから、仮想音源の出力を低減するよう先端部を適切に加工することを目的として様々な開発、製品化が行われました。

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 先端改良型遮音壁は、1) グラスウールと空気層で構成する吸音機構によって減音させる「吸音型装置」、2) 多重回折及び干渉によって減音させる「干渉型装置」、3) ある程度広い周波数範囲の音を幾つかの共鳴器によって減音させる「共鳴型装置」、などに分類できます。

先端改良型遮音壁は各種製品によって様々で、ここでは干渉型装置の一例を示します。

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先端改良型遮音壁の低減効果について、前報で紹介した道路構造別騒音分布の交通条件で試算すると、先端改良型遮音壁(橋梁部用分岐)を設置した場合、遮音壁高さ以下の領域で騒音が低減していることがわかります。

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平面道路との複合構造や複層高架橋では、平面道路や下層高架橋を走行する自動車騒音が高架道路裏面に反射して沿道に伝搬するので、裏面吸音板の設置は騒音の低減に有効です。

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堀割道路は住居地盤の下にあるため、騒音の影響範囲となる道路近傍の上方に対して対策を考えていく必要があります。
沿道に低層住居がある場合は、壁面からの反射音に対して側壁吸音板と遮音壁が有効です。なお、半地下構造であれば騒音放射範囲を更に挟めます。

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沿道に中高層住居がある場合は、設置する遮音壁の高さに限界があることから、全ての高さがカバーできる吸音ルーバーの設置は騒音の低減に有効です。

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皆さんの地域の道路、旅行などで走る道路にはどんな騒音対策がしてあるか、探してみてください。道路交通騒音対策として、交通流対策、道路構造対策、沿道対策を組み合わせながら、騒音の少ないまちづくりをしていくことが重要です。

八千代エンジニヤリングは総合建設コンサルタントとして、まちづくり、交通計画、道路計画・設計などを担っており、これからも快適な沿道環境づくりに貢献していきます。

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