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八千代エンジニヤリングが毎月お届けするちょっとイイ話

橋を造る技術者 橋を造る現場の技術屋魂

  • 道路・鉄道

今月は、橋を造る現場での土木技術者こぼれ話をご紹介します。 

土木屋達の心意気

face_f91-oono.jpg1960~80年頃、高度成長時代のもと、新幹線、ダム、本四連絡橋等の計画と建設が始まり、多くの学校に「土木工学科」が開設されました。学生は、自分達を“土木屋”と称し、研究室や実験室での作業の後、夜になると車座になって「ど~お~せ惚れるなら、世界~の土木屋さん♪♪‥‥」などとたわいない歌を大きな声で合唱していました。今はもう「土木」の文字が消え、難しい学科名に替えられていますが、学生の輝きは昔と同じだと思います。ここでは、“こんな土木屋達”が働く設計と施工現場での心意気の話を紹介します。

 

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「将来は、この川を渡る道路(橋)が絶対に必要になる。根拠資料作成を手伝ってもらえないか?」とか「この仕事の最終のお客様である国民の理解が得られ、喜ばれる橋を作るため協力して下さい。」と熱く丁寧に話してくれる発注者の方々の熱意が好きで、こんな時、つい「俺に任せろ。」と言いたくなります。

橋の設計は予め答えが決まっている学校の試験とは違います。工学の世界では満点はありません。色々な仮定・工夫をしてより正解に近い解を算出するのが工学の世界なのです。橋の設計では各種基準、論文、専門雑誌等の文献・資料や各種ソフトを使用し、時には精密な模型や実物を作り実験してまで満点を取ろうと努力します。より快適で安全な橋を願いながらアイディアをひねり出し、構造を検討し、ベストを尽くしているのです。
設計は個人だけでなく、各種技術力を持った個人が集まってモノを創造していく仕事です。チーム各人の経験と知識を総動員して、白紙に新しい線が次々と描かれ、その線の通りに現場で新しい橋(命)が造られます。まるで新雪にシュプールを描くような爽快感があります。
自分のアイディアが実現すると満足感も味わえます。「新しく地図に載るこの橋は、孫の次の代になってもまだ残っている。」という“土木屋さん”のみが味わえる密かな優越感と達成感もあります。一つの設計が終わる頃には、完成時の橋の姿が鮮明に浮かび、その心地よさを味わいながら静かにワインの栓を抜きたくなります。
 
なお、この話は私が9年弱の間現地で携わった徳島県の“阿波しらさぎ大橋”の現場での経験を紹介します。このyecチームが詳細設計を担当し、平成24年度の土木学会田中賞作品部門を受賞しました。

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現場の楽しさは、縮尺1/1の実物をその場で作ることです。現場にいる“土木屋さん”は歴史の淘汰を経ながら悠然と生き永らえている「ピラミッド」、「万里の長城」や「京都、奈良の古い寺院」が大好きです。そのため、現場にいる誰もがいつまでも残る誇らしい橋を作ろうと努力します。
橋梁の設計図面はA1サイズ(841×594)の紙に(今はCADを使ってA3)縮尺1/250とか1/50とか縮小して描きますので、机の上でどんな大きな橋でも描けます。
図面なら、簡単に修正できますが、施工現場では一度作ったものを簡単に修正はできません。逆に後から不足を補うことも難しくなります。現場では技術者と職人達が図面を丹念にチェックして過不足を修正します。施工上で課題になるところは慎重に検討し合い、安全な構造物となるように設計を変更して承認を得ます。 

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現場で施工するのは総合建設会社と橋梁メーカーです。コンサルタントの現場での仕事は主に施工管理ですが、最近はCM(コンストラクション・マネジメント)といって工事発注者の代わりに設計・工事発注支援、工事工程管理、現場施工管理を行う仕事もあります。
建設現場は3K(キツイ、キタナイ、キケン)などと呼ばれますが、現場は想像以上にやり甲斐を感じます。

キツイ:本当はそんなにきつくない。肉体的に多少心地よい疲労は感じる。

キタナイ:土やコンクリートを扱う時は多少汚れるが、さっぱりと洗濯された作業着を着用しているのでキタナさは感じない。

キケン:45tもある重い桁を吊ったり、地上50mの高さで溶接の作業もしている。当然素人にはキケンだが、プロの職人達は他人に危険を絶対に与えまいという意識と、危険を事前に察知出来る注意力があるためキケンの恐怖は感じない。施工管理者も安全用具を付けないと現場には入れない。

 施工管理の主な仕事は、設計計算書と図面を十分理解した上、承認された施工計画書に従って作業が実施されているか?マンパワーは適切か?等のチェックをや品質・工事工程・安全等工事現場全体の管理です。 

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現場には忘れられないような人々との出会いが沢山あります。お互いの人間性をさらけ出し合ってお付き合いしたのは昔の話ですが、良い意味でその精神はまだ色濃く残っています。
今の橋梁の施工現場は想像するよりもいろいろな面でスマートで近代的な現場です。是非一度“土木の世界”の現場を覗きに(見学に)来てください。
私の現場の“阿波しらさぎ大橋”は、徳島県吉野川の河口から約1.8kmに架かる長さ1291mの橋で、平成24年から地図に載るようになりました。
この橋が大勢の人々に愛され、願わくは吉野川の流れが絶えるまで千代に八千代にその白い美しい雄姿を保っていてほしいものです。 

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