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八千代エンジニヤリングが毎月お届けするちょっとイイ話

災害緊急復旧・復興支援 モルディブ国地方島津波災害緊急復旧・復興支援プロジェクト

  • 海外事業

今月はモルディブ地方で起こった島津波に対する災害緊急復旧・復興支援についてご紹介します。

災害緊急復興・復興支援

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地球環境の変化から大規模自然災害が多発しています。我が国のODAの一つに災害復興支援があり、コンサルタントは世界で活動し、復興に貢献しています。災害復興支援の一つのモデルとして、表記案件のコンサルタント活動をご紹介します。

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災害復旧・復興は、被災した住民自身による“自助”、地域社会の中で住民が助け合う “共助”、そして自助と共助を政府が支える“公助”の連携が欠かせません。公助としては、生活基盤を再建するインフラ整備が主体です。都市計画、道路、建築、上下水道、電力など複数のセクターの総合計画が緊急に求められ、高度な技術力とプロジェクトの統括能力が必要となります。更に、復興支援では何よりもそこで暮らす人々の活力を共助によっていち早く取り戻し、明日への希望を抱かせることが重要です。「モルディブ地方島津波災害緊急復旧・復興支援プロジェクト」は、共助と公助が連携したプロジェクトの良い事例となっています。

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大津波で全壊した民家

インド洋のスリランカの南西に位置するモルディブ共和国は、1,192の島々からなる美しいサンゴ礁でできた島嶼国です。全国人口は約30万人。その内199の島で人々は海と一体となって生活しています。その地に、2004年12月26日早朝、震源地から約2,500㎞も遠く離れたモルディブにスマトラ沖大地震による大津波が押し寄せました。
モルディブの平均標高は海抜2m。一方、津波は3mを超え、人々は椰子の木やモスクの屋根への避難を余儀なくされました。住居は、コーラルブリック(サンゴの根元の固い部分を切り出したもの)を積上げモルタルで固めたものが多く、津波の圧力で一瞬にして破壊され、瓦礫となりました。


また島と島を結ぶ連絡道路(コーズウェイ)などの重要なインフラも甚大な被害を受け、全国の死者・行方不明者は合計108人となり、15,000人以上の避難民を出しています。
我が国は、緊急援助隊医療チーム、緊急物資供与に続き、JICAによる緊急開発調査「モルディブ地方島津波災害緊急復旧・復興支援プロジェクト」(表記案件)を実施し、ドナーとの調整を経て、被害の大きかったラーム環礁とター環礁を中心に①短期復旧計画、②中期復興開発計画、③デモンストレーションプロジェクトの3つの活動を柱とする事業を実施しました。

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この内デモンストレーションプロジェクトが、共助を助長する支援で、ラーム環礁の中心地フォナドー島の住民を対象にした津波災害コミュニティー生活環境復旧型事業です。
住民のプロジェクト参加によって、津波で破壊された住居の瓦礫(コーラルブリック)を収集し、材質ごとに分別し、骨材として再利用し、新たな建築用再生ブロックを作りました。
日当は9米ドルですが、職を失った住民に対して緊急な雇用機会の創出効果は大きく、参加希望者はすぐに定員を超え、住民は順番待ちで事業に参加しました。

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津波避難プラットホーム

自分の手で集めた瓦礫がブロックに生まれ変わることで、津波によるショックから立ち上がるための自信と希望に繋がったのだと思います。
また、共同作業を通じて、住民に共助の意識を醸成させることができました。
更に、この再生ブロックを活用して、将来にわたり津波の記憶を伝えるための防災施設として、「津波避難プラットフォーム」を海岸沿いの公園の一角に建設しました。プラットフォームの表面は、子供たちが遊ぶ滑り台、本体部分は災害対策用の備品倉庫になっています。

避難場所である見晴台には、防災教育の一環として、地元の小学生が描いた津波の画を、タイルに焼き付けて展示しています。

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コーズウェイの完成予想図

公助の技術支援として、行政サービスの安定した提供や社会環境の改善、経済活動の再開を目的とした短期復旧計画と中期復興開発計画を実施しました。
短期復旧計画は、緊急なインフラ復旧として、破壊された「配電網の復旧」、生活島と公共施設島を結ぶ「コーズウェイの修復」、防災機能付「合同行政庁舎・島事務所の建設」、および改良型の「下水処理システムの改善」の4つの計画を策定し、無償資金協力事業としてプロジェクトを完了させています。
また中期計画としては、円借款を想定した港湾設備計画、および防災行政無線計画を提案しました。



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合同行政庁舎の完成予想図


これらの計画には、我が国の災害復興から学んだ知見と技術が活かされており、特に太陽光発電を設置した防災機能付の合同行政庁舎、並びに高低差が無く、かつサンゴの欠片で形成される特殊な土壌での改良型土壌処理床・汚泥乾燥床を設置した下水処理システムは、プロジェクト完了後にモルディブの基本技術として活用されています。

しかしながら、プロジェクトは全てが順調ではありませんでした。
配電網復旧計画での需要家引込用ケーブルの不足がその一例です。計画対象島はラーム環礁内の4島(5コミュニティー)でしたが、工事段階で需要家数の増加が発生した島があり、工事資材が不足するというものです。
単純な資材不足ですが、震災復興を急ぐ人々の心の動揺と、陸揚げされた物品はその島の財産であるとの古い慣習から、資機材の融通が島民によって阻止され、プロジェクトが中断してしまいました。担当の大臣が出向き説得しても、島民の頑なな態度は揺るぎませんでした。そんな状況下で、私が島民集会で説明した内容は次の通りです。
『当該資機材は日本国民の税金で調達された善意の贈り物である。私の小さな娘もその一人で、少ない小遣いから納税している。その善意を無駄にして欲しくない』 

娘の話が良かったのか、涙ぐむ島民もおり、結果的にケーブルを各島間で融通する合意形成を取得することができました。
浪花節的な話ですが、人々の心が通じて和解できたと実感しました。その後、住民の共助が芽生え、遅れていた工事も順調に進み、プロジェクトは無事に完工しています。

プロジェクトの開始当初は、モルディブ政府や他ドナーから、『日本は津波発生から3ヶ月も経って今更何をしに来たのか』と冷ややかな態度で見られていましたが、日本のコンサルタントのひた向きな活動で、結果として、どのドナーより早くプロジェクトを完成させ、高い評価を得ることができました。

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我が国はいくつもの甚大な自然災害に遭い、自助、共助、公助の重要性を学んできました。モルディブの事例も、我が国の教訓と技術が活かされ、共助と公助の連携により、被災地の人々自らが生活再建へと歩み出す生活環境が整えられたのだと思います。
我が国には、復興に対する不屈の精神と経験があり、また相手を気遣い、互いの文化を敬い尊重する感性があります。

プロジェクトの成功は、金額や大きさで表す物質的な規模ではありません。相互の信頼と理解の上に成り立つ人々の価値観で決まります。世界の民族・地域が互いの偏見を捨てて真に協調すべきこの時代に、我々コンサルタントは、日本人としての感性と技術力をもって世界で活躍することが使命だと思います。

 

 

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