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海岸・港湾・空港

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はじめに

耐震設計とは

公共施設である土木構造物については、地震が起きても壊れたり、利用ができなくなったりしないように、地震に耐える構造としておく必要があります。
地震によって施設に作用する力はどの程度か、地震力が作用しでも施設が壊れないためにはどのような構造にすべきかを考える一連の検討を耐震設計といいます。

港湾施設に求められる耐震性

港湾施設(防波堤や岸壁)は、道路等と異なり、不特定多数の一般の方が日常生活でよく利用するものではありません。しかし、我が国は、エネルギーの9割以上、食料の6割を海外からの輸入に頼っており、それらの輸出入貨物量のほぼ全て(99.7%)を船を使った海上輸送により港を通じて流通させています。
したがって、地震で施設が壊れることによって直接負傷等を負う人は道路等と比較し少ないかもしれませんが、地震後で施設が損傷し貨物を受け入れられなくなると、多くの人の日常生活や経済活動に支障が生じることが想定されます。
そのため、港湾施設には、地震が起きても施設が継続して利用できること、または、短期間で復旧ができ、地震後速やかに施設の利用が再開できることなどが求められます。

耐震強化岸壁とは

港湾施設の中で、特に高い耐震性が求められる施設として耐震強化岸壁という施設があります。耐震強化岸壁には緊急物資輸送施設と幹線貨物輸送施設があります。前者は大地震等の災害発生時に救援物資や避難者等を輸送するために使用されます。後者は海外から大型船によって運ばれる貨物を受け入れる大水深岸壁などです。特に緊急物資輸送対応施設等は発災直後から利用されることになるため、高い耐震性が求められます。

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耐津波について

2011年3月の東日本大震災における津波による激甚な被害は記憶に新しいところです。今後、南海トラフを震源とする地震により津波が発生する危険も迫っていると考えられることから、防波堤などその施設があることにより、津波による背後地の被害を低減できる施設については、津波やそれに先行する大地震に対して粘り強い構造として設計することが求められています。

港湾施設の耐震設計の特徴

 港湾施設の耐震設計については、他の土木施設と比較し以下の特徴があります。  ・各地点の地震に対する地盤の揺れやすさを考慮した設計地震動を使用  ・地震による施設の変状具合を考慮した設計  以降では上記の各特徴について詳しく紹介します。

設計で用いる地震動について(各地の地盤特性を考慮した地震動を使用)

施設設計に用いる地震動について

施設の設計では地震による施設への作用を具体的に設定する必要があります。

レベル1地震動とレベル2地震動

地震といっても小さい地震から大きな地震までその規模は様々です。土木施設設計ではこれを以下のレベル1(L1)地震とレベル2(L2)地震という2つのレベル(作用規模)に分けて考慮するのが一般的であり港湾施設についても、この考え方を採用しています。

 ・L1地震動:施設の供用期間中に一度は遭遇するであろう地震
(再現期間75年※の地震動、概ね震度5強くらいの規模)
※供用期間50年とすると遭遇確率は50%程度

・L2地震動:施設が設置される位置で発生する可能性がある最大級の地震
(再現期間が概ね100年以上の大地震、津波を伴う地震など)

L1地震動については原則としてすべての港湾施設について、地震後に施設が健全な状態を保持することが求められます。またL1地震動に対しては、構造物に影響する範囲の周辺地盤が液状化しないよう対策が必要です。
一方L2地震動に対しては、耐震強化岸壁等の特に重要な施設以外は設計で考慮する必要はありません。L2地震動に対しても設計計算を行う施設についても、L1地震動のように全く損傷しないような健全な状態を確保する必要はなく、ある程度の損傷(詳細は以降参照)は許容されます。

各地域の地震時の揺れやすさを反映させた地震動

港湾施設の耐震設計に用いる地震動の作成方法

上記のL1地震動、L2地震動について、他の土木施設ではL1地震動については地域別の設計震度、L2地震動については代表的な地震波形等が基準等で示されている場合が一般的です。一方、港湾施設についてはL1地震動についても以降に示すサイト特性という場所による地震時の地盤の揺れやすさを考慮した地震動が各港で設定されています。また、L2地震動についても同様にサイト特性を考慮して、設計者が震源モデル等から設定して作成することとなります。

サイト特性について

地震は断層がずれることで生じますが、その位置(震源)は浅くても地表面から数kmとかなり地中深くにあります。そこから施設が設置される箇所まで地震が伝わってくるのですが、震源から地震基盤と呼ばれる非常に固い層(せん断波速度Vs≧3000m/s)までは、地盤の影響で地震が増幅するといったことはほとんどなく、震源から距離に応じて揺れの大きさは減衰します。これを伝播経路特性と呼んでいます。地震基盤より上層の比較的軟らかい土層を地震が通過する際には、地盤の影響を受けて地震が増幅します。これをサイト特性といい、場所によって大きくその特性が異なるためこれを適切に評価することが施設設置位置での地震の大きさを想定するうえでは重要です(震源直近よりも少し離れた箇所で最大震度が発生したりするのはこのサイト特性の違いが原因です)。
以上より、地震動はまず震源位置での揺れの大きさを決める①震源特性、そこから対象箇所の地震基盤までの伝達を決める②伝播経路特性、地震基盤から地表面までの伝わり方を決める③サイト特性によって決定されます(図-2参照)。

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常時微動って何?

港湾施設の耐震設計を行うためには、前述の施設設置箇所のサイト特性が必要となります。国土技術政策総合研究所の港湾施設研究室のホームページにおいて、各港のサイト特性が設定、公開されていますが、場所によってはその推定精度があまり高くないもの、また、同じ港内でも場所によってサイト特性が大きく異なるといったこともあります。  そのため、新規に重要な耐震強化施設等を整備したい場合は、当該箇所のサイト特性が既存のものでよいか等を確認することが望ましいです。
その際、サイト特性は複数の地震の観測結果から前述のサイト特性以外の特性を取り除いて逆解析を行うことで設定されますが、その都度、計画地点で地震観測を行っていては大変です(ある程度大きな地震が数回発生するのを何年も待たなければなりません)。
そこで、簡易に計測できる常時微動観測というものを行いサイト特性の妥当性の検証、補正等を行う場合があります。
地面は常に僅かに振動しておりその揺れを常時微動といいます(常に揺れているので基本的にはいつでも計測することができます)。この水平成分と鉛直成分の比であるH/Vスペクトルというものがサイト特性と傾向(特にピーク周波数)が良く一致するとされています。

各種施設の耐震設計方法(地震による施設の変状を考慮した設計)

レベル1地震動に対する耐震照査方法について

照査用震度(設計震度)とは

L1地震動に対しては、他の土木施設と同様に震度法という手法で耐震設計を行います。これは地震による慣性力を設計震度(水平加速度と重力加速度の比のようなもの)を用いて静的に作用させて計算するといったものです。

    慣性力=施設の自重×設計震度

この設計震度については、他の土木施設では全国を数箇所のエリアに分けて地域別震度というかたちで設定されていたりする場合が多く、それを構造物の固有周期や地盤の軟硬に応じて多少補正をする程度で設定することが一般的です(港湾でも前基準まではそのような設定方法でした)。
一方では港湾施設の設計に用いる設計震度(照査用震度と呼びます)は、前述のとおりまずもととなるL1地震動が港別に設定されています。
その上で、照査用震度は、対象箇所の表層地盤(工学基盤より上の地盤)の地震動の増幅特性や、その地震が作用した場合の構造物に与える影響の大きさを考慮して、一般的には以下の手順で設定されます。

①L1地震動を入力した場合の対象箇所地盤の1次元地震応答解析の実施
②算出した地表面加速度波形について、構造物の特性(構造形式、施設規模)を考慮したフィルターをかける。
③地震の継続時間を考慮した加速度の補正を行う。
④許容変形量を考慮して照査用震度を算出する。

なお、当該手法を適用する場合、L1地震動で周辺地盤が液状化しないことが前提ですので、別途液状化判定を行い、地盤が液状化しないことの確認が必要です。

レベル2地震動に対する耐震性能照査方法(地震時変形量等をFEM解析で予測)

要求性能・性能規定について

レベル2地震動に対しては、地震が起きたときの施設の変状具合を後述のFLIPという2次元FEM解析プログラムでシミュレーションし、施設が所要の耐震性能を有しているかどうか確認することで設計します。
その際、所要の耐震性能を要求性能といい(健全であるとか速やかに復旧できるといった一般の方にも理解できる表現)、これを計算結果と比較するための定量的な指標に置き換えたものを性能規定(限界変形量100cmなど)といいます。
したがって、L2地震動に対する耐震設計を行うためには、施設の地震発生後の利用計画等を踏まえ、要求性能及びそれを具体的な数値等にした性能規定をまずは設定する必要があります。

FLIPとは

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L2地震が作用した場合に施設の変状具合が限界値(上記の性能規定値)を満たしているか確認するためには、具体的に地震後にどの程度の変形量が生じるのか、あるいは地震中の部材の発生断面力がどの程度かを計算する必要があります。
港湾施設では上記の計算手法としては、地盤の液状化現象等も考慮可能である(沿岸部周辺は地盤が軟弱な場合も多く、L2地震のような大規模地震が起きた場合にはある程度液状化等が生じるのは仕方ありません)、FLIPと呼ばれる有効応力動的地震応答解析プログラムが用いられます(港湾空港技術研究所にて開発、その後LIPコンソーシアム(旧FLIP研究会)で現在も改良が行われている。弊社はFLIP研究会設立時から会員として参加)。

当該FLIPを使用すると地震後の施設の残留変形状況や、地震中にどこが液状化しているか等(過剰間隙水圧分布図で概ね0.9以上となっている箇所は液状化しているといえる)が把握でき(図-3参照)、仮定した断面では所要の性能が満足できない場合は、その結果等を見ながら必要な対策等を検討して、最終的に地震に対して安定な断面をトライアルで検討していくこととなります。

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