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ダム

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はじめに

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ダムは、予備設計で建設が妥当であると判断されると、 実施設計に着手します。ダムの実施設計の手順は、右のフ ローのとおりです。
ここでは、フィルダムの調査・設計について紹介します。

 

フィルダムの特徴

フィルダムは、土や岩などの材料を盛り立てて造ります。ダム型式の特徴と設計上の留意点は、次のとおりです。

・フィルダムは個々のダムごとに材料の強度を求めて設計する必要があります
→フィルダムは、現地で確保できる材料を使ってダムを造ります。ダムごとに材料強度が異なるため、材料の強さを把握して設計を行う必要があります。
・フィルダムは越流を防ぐ必要があります
→フィルダムはセメントで固められたコンクリートダムとは違い、洪水が越流すると堤体材料の土や岩が流され、ダムが損傷する懸念があります。そのため、コンクリートダムに比べて2割大きな洪水でもダムを越流することがないように設計します。
・コンクリートダムよりも強度が低い地盤でも建設が可能です
→フィルダムは、上下流に緩やかな勾配を付けて土や岩を盛り立てます。このため、地面と接する面積はコンクリートダムより広くなります。ダムに作用する水圧や地震慣性力、ダムの自重といった荷重は地面に接する面で支えます。接地面積が広いフィルダムでは、荷重は広範囲に分散されるため、コンクリートダムを配置できないような強度が低い地盤でも、フィルダムであれば荷重を支持することが可能となります。
 

 

フィルダムの調査・設計の手順

Ⅰ.ダム軸・ダム型式の選定

フィルダムの型式

フィルダムは、使う材料とその配置によって次のような型式に分けられます。

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均一型フィルダム
ほぼ1種類の材料(土質材料)を使って盛り 立てたダムです。岩より土の方が締固め後の強 度が低いため、高いダムには適しません。



ゾーン型フィルダム
コア、フィルタ、ロックといったゾーンから 構成されるダムです。 コアゾーンは土質材料を盛り立てており、こ のゾーンで遮水をします。フィルタゾーンはコ アからの浸透水を安全に排水して材料の流出を 防ぐことを目的として、コアとロックの間に配 置されます。もっとも外側に配置されるのが、 粗く強度の高い材料からなるロックゾーンです。 外側に強度の高いロックを配置することで高い ダムを造ることができます。



表面遮水壁型フィルダム
堤体上流面にコンクリートやアスファルトの 遮水壁を配置して貯水機能を確保したダムです。

フィルダムは、現地で得られる材料や、ダムの規模、貯水池の運用条件(貯水位の変動特性)等の条件を考慮してダム型式を決定します。

ダム軸の選定

ダム軸とは、ダムで川を締め切る位置を指します。ダム軸は次の条件を考慮して、安全かつ効率的な位置を選定します。

谷幅が狭くなる箇所(狭窄部)
谷幅が狭くなる箇所を選定すれば、ダムの規模は小さくなります。また、ダムの上流側で谷が開けていたり、河川の勾配が緩い地点を選定すると、大きな貯水池を確保することができます。貯水効率が高いダム軸を選定することが、ダム計画では有利な条件となります。

断層破砕帯等弱層部は極力避ける
周囲の地盤に比べて弱い箇所が分布する場合は、コンクリート等で置換えるなどの対策が必要になることがあります。このため、断層破砕帯といった弱層部は避けた方がダムの安定上有利になります。

仮排水トンネルを配置しやすい箇所が有利
ダムの施工にあたっては、河川の流路を一時的に切り替える(転流する)必要があります。フィルダムの場合、左岸または右岸の地山に水路トンネルを造り、転流します。このトンネルが配置しやすい場所が有利になります。

このほか、周辺の自然環境や、貯水池による水没範囲といった社会的な影響を考慮し、ダム軸の選定を行います。

Ⅱ.配置検討(座取り)

地形条件、基礎地盤の地質条件を考慮して、堤体や洪水吐きの配置を検討します。
フィルダムの堤体は土や岩を盛り立てて造られています。一方、洪水吐きはコンクリート造りの水路構造物です。フィルダムの堤体と洪水吐では、荷重の作用時の変形性、地震時の揺れに対する応答特性が異なり、両者の境界部分が構造上の弱点になります。このため、フィルダムでは洪水吐を堤体の上に載せることはできず、左岸または右岸の地山に載せる必要があります。
ダムの配置検討では、堤体の配置だけでなく洪水吐き、取水放流設備や管理設備などの配置についても十分考慮して検討を行います。

Ⅲ.詳細設計

フィルダムは、盛立てた堤体の安定、貯水時の浸透による安定を確保するように設計を行います。

dam05_img03.jpg堤体の安定性
土や岩を盛り立てたフィルダムの堤体は、右に示すような すべりによる破壊が想定されます。堤体は、ダムの上下流の 勾配、使用する材料の強度によりすべりに対する安全性が変 わります。貯水位の条件、地震の条件等についてダムの形を 変化させながら安定計算を行い、必要な安全性が確保できる 形状を選定します。

浸透に対する安全性
ダムが貯水すると、ダムの堤体や基礎地盤には浸透流が作用します。
フィルダムの堤体は土や岩を締め固めたもののため、コンクリートなどに比べると、浸透に対する抵抗力は小さくなります。また、基礎地盤は岩盤の割れ目や弱層部など浸透水が集中し易い箇所が存在します。基礎地盤や、堤体内に水を通し易い箇所があり、そこに大きな浸透流が作用すると基礎地盤や堤体土質材料の細粒分が流され、そこからダムが壊れることが懸念されます。
このため、水を通し易い部分がなくなるように、堤体の形を変化させたり、基礎地盤の割れ目にはセメント等を注入して、浸透流の発生を防ぐような対策(基礎処理)を行います。

yecにおけるフィルダムの設計事例 

ここで、yecが設計に携わった事例をご紹介します。

Ⅰ.ダム軸の選定

Aダムは、昭和28年に竣工した日本初のロックフィルダムであるBダムを嵩上げする再開発ダムとして計画されました。
そのため、Aダムのダム軸は、Bダム本体の嵩上げ案と、Bダムから谷が開ける下流位置までの範囲で谷幅が小さくなる箇所を複数地点選定して、堤体規模、地質条件、洪水吐きの配置、施工性等について整理し、比較検討を行いました。
比較の結果、堤体積、地質条件について良好であり、左支川の流域を貯水池に取り込むことで貯水池規模が大きく効率的となるダム軸を選定しました。

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Ⅱ.ダムの配置

Aダムの堤体配置を示します。

Aダムは、左右岸の取り付け位置や断層などの弱層部の分布に対して、ダム軸を直線ではなく、円弧をつけることで対応しました。

また、洪水吐きや仮排水トンネル(工事中にダムサイトに流入する河川水を下流へ転流するためのトンネル)は、地形・地質条件やダムの左岸側にある既設Bダムの発電導水トンネルとの取り合い、設備の規模など考慮して、配置を決定しました。

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Ⅲ.ゾーン型ロックフィルダムの材料の配置と安定

Aダムは、ダム基礎に比較的強度が弱い地質が分布することから、ダム型式はコンクリートダムではなくフィルダムを採用しました。

また、計画ダム高が127mであることから、安定性が良く高いダムに適用できる中央コア型ロックフィルダムを選定しました。

堤体の材料の配置(ゾーニング)
Aダムでは、土質材料を盛立て止水を行うコアを中央に配置しています。また、コアを浸透した水がすみやかに排水できるように、コアの上下流に砂や砂礫からなる排水性が良いフィルタ材を配置しました。外側は、強度が高くすべり破壊への耐性が高いロック材を配置して、堤体の安定性を確保しています。
Aダムのロック材は、左岸上流の原石山から材料を採取しました。採取できる材料は強度にばらつきがあり一定ではありません。このため、採取した材料の強度と設計上必要となる材料強度を考慮し、ロック材の中でも材料の配置(ゾーニング)を工夫しています。
たとえば、ロックゾーンの中でも最も外側に配置される材料は、温度の変化や日射の影響など外部環境の変化による影響を受け、また、外側に配置するため堤体の安定性上も最も強度が要求されます。このため、外部材という区分を設け、採取した材料の中でも強度が高いものを使用しました。一方、外部環境の影響が小さく、安定上も大きな強度が必要とならない内部には強度が若干低いロック材を有効に使うこととしました。

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Ⅳ.建設時の様子とダムの完成

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ダムの右岸側から見た、堤体の盛り立ての様子です。奥に見えるのは洪水吐きです。


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洪水吐きのコンクリートを打設している様子です。

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ダムの盛り立てを完了し、試験湛水を実施した際の様子です。試験湛水ではサーチャージ水位まで貯水位を上げて、ダムの安全性に問題がないか最終確認を行います。
写真はサーチャージ水位に到達した際のものです。

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ダムの右岸側から見た堤体と貯水池の様子です。Aダムは平成25年に竣工しました。

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