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ダム

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はじめに

ダムは「堤体の形式」と「機能・目的」により、いくつかの種類に分類できます。

堤体の形式別分類

ダムは堤体の材料により、コンクリートダムとフィルダムの大きく2種類に分類できます。また、近年では、新たな形式のダムとして台形CSGダムが日本で開発されています。
下図ように、ダムには様々な形式がありますが、なかでも重力式コンクリートダムは日本で最も一般的なダム形式であり、ダムの形式を比較検討する場合に基本となっています。

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ダムの機能・目的別分類

機能・目的別には、治水や利水機能に特化したダムと複数の機能・目的を有する多目的ダムに分類できます。
なかでも、治水ダムのうち、不特定容量をもたず、平常時に貯留を行わないタイプのダムは「流水型ダム」と呼ばれ、従来の貯留型ダムと比べダム建設の影響が小さいことなどから、近年注目を集めています。

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ここでは、これまでに紹介した二つの分類方法に着目し、次のテーマでコンクリートダムの設計についてご紹介します。

堤体の形式による分類
日本で最も一般的なダム形式:重力式コンクリートダムの設計

機能・目的による分類
近年注目のダム形式:流水型ダムの特徴と設計のポイント 

 

重力式コンクリートダムの設計 

ダム本体の設計

重力式ダムの安定条件

重力式コンクリートダムの安定条件は次の3つです。
ダム本体の設計では、これらの条件を満足する形状を検討します。 

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重力式ダムに作用する荷重

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重力式コンクリートダムに作用する荷重には右の図に示すように、水圧や堆砂圧のほか、水が堤体を持ち上げる力(揚圧力)や地震時に堤体自体に生じる振動(地震時慣性力)などがあります。
重力式コンクリートダムではこれらの荷重を「堤体の自重」で支える構造となっています。
これらの荷重が作用した場合に、ダムは前述の安定条件を満足する必要があります。

 

安定条件を満足しない場合には?

安定条件を満足しない場合には、次のような対応を行います。
なお、ダムは堤体に発生する圧縮力をあらかじめ考慮しコンクリートの強度を決定することで、③圧縮破壊条件を満足するように設計を行います。

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放流設備の設計

放流設備は、洪水時に使用する「洪水吐き」、平常時に使用する「取水放流設備」と放流水の勢いを減じて安全に河川に流下させるための「減勢工」などに分類されます。

洪水吐き

常用洪水吐き
貯水池に流入した計画規模の洪水を調節し、適切な流量を安全に下流に放流するための施設です。
堤体に付属する場合、配置(放流形態)により越流式と放流管式に分類されます。常用洪水吐の配置や形式は洪水調節量により異なり、洪水調節の方法によってはゲートが設置される場合もあります。また、堤体ではなく地山に設けられたトンネル式の洪水吐きも存在します。
 

非常用洪水吐き
ダムの計画規模を上回る洪水が発生した場合に、ダムの安全を確保するため、流入する洪水をそのまま下流に流下させるための施設です。

重力式コンクリートダムでは堤頂部に越流式の非常用洪水吐きを設けることが多く、放流能力や施工性を考慮し、標準越流頂や台形越流頂といった越流部形状を選定します。また、非常用洪水吐は常用洪水吐きと兼用の場合もあります。
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減勢工

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ダムからの放流水の勢いを減じて、安全に河川に流下させる施設を減勢工といいます。
重力式コンクリートダムでは水平水叩き式が一般的ですが、スキージャンプ式や側水路式など、地形条件や減勢能力等を考慮し、効率的な方式を選定します。

取水放流設備

洪水調節以外の目的で貯留水を活用する場合や、ダムのメンテナンスを行う際に水位を低下させるための施設として、取水放流設備を設ける場合があります。
貯水池から利水等の目的で取水を行う施設を取水設備といい、特に特定の水深から取水する機能を持つものを選択取水設備と言います。貯水池の水は深さにより温度や濁度などが異なります。選択取水設備を設け、必要に応じて取水する高さを変えることで、冷水や濁水の放流を防止することができます。

 

一方、放流設備は目的により以下に分類されます。
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いずれの放流設備もゲートが設置され、放流量の制御が行えるようになっています。
放流設備は、放流量に応じ、設備規模やゲートの形式を選定します。

yecが設計に携わった重力式コンクリートダム

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流水型ダムとは? -特徴と設計のポイント- 

流水型ダムの特徴

前述のとおり、流水型ダムは洪水調節機能に特化し、不特定用水や利水のための貯水容量を持たないため、平常時は水を貯める必要がないダムです。
水を貯留するのは洪水時のみであること、そのために常用洪水吐きを河床近くに配置することなどから、利水ダムや多目的ダムといった貯留型のダムと比べ、流水型ダムではダム上下流での流水,土砂,魚類等の移動がスムーズで、ダム建設前の自然状態に近い環境を維持しやすいことが特徴です。
一方で、自然状態に近い環境を維持しつつ、ダムの機能を確実に発揮するために、貯留型のダムにはない設計上の配慮事項もあります。

流水型ダムの設計のポイント

堆砂容量の設定

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ダムでは、貯水の容量を決定するために、利水や治水のための容量とは別に「流入土砂がたまり、将来的には使用できなくなる容量」をあらかじめ見込み、設計を行います(右図)。これは堆砂容量と呼ばれ、100年間に貯水池に貯まる土砂量を考慮します。
貯留型のダムであれば、流入する土砂の多くは貯水池内に堆砂し、ダムを通過して下流に流れていく量はわずかです。
一方、流水型ダムでは、河床に配置された洪水吐きから流水と一緒に土砂の一部も排出されるため、堆砂量は流入土砂量から排出土砂量を差し引いた量となります(下図)。排出土砂量は河川の勾配や流量により異なるため、数値シミュレーション(河床変動計算)により予測を行います。

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堤体の安定性の確認

一般的な貯留型ダムの堤体には貯水池から常に水圧が作用しています。流水型ダムで採用実績の多い重力式コンクリートダムでは、一般に“水圧への抵抗力がありかつ経済的な形状”として堤体の断面が下流に張出した三角形となっています。この三角形の断面は、上流から下流への力へは強い一方で、下流から上流への力に対しては転倒しやすい形です。
ダムは、堤体自体が地震で揺すられることにより、下流から上流への力が作用する場合があります。流水型ダムは平常時には上流方向への力を打ち消す水圧が作用していないため、貯留型のダムと比べると、「上流側への転倒」に弱いと言えます。
このため、流水型ダムの設計を行う際には、「下流側への転倒」とあわせて、「上流側への転倒」が生じないことを安定計算により確認します。

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洪水吐きの閉塞対策

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流水型ダムでは、流木により洪水吐きが閉塞しないよう、洪水吐き吞口部にはスクリーンを設置する必要があります。
また、流木の発生量が多いダムでは、貯水池の上流端に流木を捕捉する施設を設置するなど、貯水池へ流木が流れ込むことを抑制する場合もあります。










洪水吐きの摩耗対策

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河床近くに設置された洪水吐きには、高い位置に設けられた洪水吐とは異なる、次のような特性があります。
・高い水圧が作用するため、高速流(流速の早い流水)が流れる
・洪水と一緒に土砂を放流する
このようなエネルギーの大きな流水により洪水吐きのコンクリートが摩耗・損傷することを防ぐため、流水型ダムでは常用洪水吐き周辺に高強度コンクリートを使用したり、鋼製パネルによりコンクリートをカバーするなどの対策(ライニング)を行っています。



減勢工の排砂対策

洪水時の放流水の勢いを弱め、安全に下流河道へ流下させるための施設として、減勢工が設置されます。流水の勢いを弱めるために、減勢工には副ダムという小さな堰が設けられています。
流水型ダムでは、減勢池から土砂の流下を促すために、副ダムに切れ込み(スリット)を入れるなどの工夫を行っています。

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このように、流水型ダムには特徴的な配慮事項があり、各ダムの特性や必要な機能を踏まえ、設計を行っています。
また、貯留型のダムと比較し、流水型ダムの建設事例はまだ少なく、今後流水型ダムの建設が増加すれば、新たな知見が得られることも期待されます。

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