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河川

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はじめに

河川構造物の設計において、最もポピュラーなものが「堤防・護岸」でありそれに次いで「水門・樋門」があります。見た目が地味で、その存在が一般の方から注目を浴びることはあまりありませんが、河川設計技術者であれば必ずと言っていいほど設計実務を経験する施設ではないでしょうか。「水門・樋門」は、その設置目的や規模、周辺の関連施設等により、設計の難しさは千差万別であるとともに、土質・水理・構造物・景観・環境etc あらゆる設計の要素を含んだ施設です。設計にあたっては各種基準類やマニュアルが多数あるのでそれに準じればよいのですが、条件や構造が複雑である故、設計者のセンスをより発揮できる施設でもあります。

ここでは、水門・樋門とは?からはじまり、設計の手順・考え方や施工を考慮した留意点等について、河川の名脇役である「水門・樋門」の設計の一部始終についてご紹介します。

水門・樋門とは?

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水門・樋門の定義

「水門」や「樋門」と呼ばれる施設は、堤内地(堤防背後側の市街地・耕作地や山林等)の雨水や排水が川・水路(支川)を流れ、より大きな川(本川)に合流する場合、合流する川の水位が洪水等で高くなった時に、その水が堤内地側に逆流しないように設ける施設であり、河川の治水管理上、なくてはならないものです。

このうち、堤防の中にコンクリートの水路を通し、そこにゲート設置する場合、樋門または樋管と呼びます(樋門と樋管の明確な区別はなく、機能は同じですが、一般に小規模円形断面のものを樋管、大規模箱形断面のものを樋門と呼びます)。また堤防を分断してゲートを設置する場合、その施設を水門と呼びます(水門を堰と混同される場合がありますが、水門はゲートを閉めた時に堤防の役割を果たします)。








水門・樋門の役割

洪水時に本川の水位が高くなると、洪水流が支川へ逆流してくることがあります。支川は本川よりも流域面積が小さく流路も短いので、一般的に洪水時には支川の水位は本川よりも早い時刻に最高水位に達します。そして、支川は水位の低下も早いので、本川が最高水位に到達した頃には、水位は本川よりも低くなっています。この状態では本川から支川へ向かって、洪水が逆流入する可能性があります。

水門・樋門は本川からの洪水の逆流を防ぐために支川に設けられた施設です。支川の出口(本川へ合流する付近)にゲートで蓋をする仕組みなので、最も危険な本川洪水の流入を防ぐことが出来ます。支川へ本川の洪水が大量に流れ込んでくると、支川の洪水はせき止められて流れにくくなり、さらに本川洪水まで加わるので、支川の水位は急激に高くなります。一般に支川の堤防は本川よりも規模が小さいので、水が堤防から溢れたり、最悪の場合は支川の堤防が破壊されてしまいます。水門・樋門はそれらを未然に防げるのですが、問題点はゲートを閉めている間は内水(支川の洪水や流域の雨水)の排除が不可能になることです。よって、逆流防止により内水氾濫の危険性がある場合には、内水排除のために排水機場が併設されています。

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設計の概要と手順

実際の設計の概要と手順について、「樋門」を例に説明します。

樋門の施設計画

樋門設計にあたっては、まずその必要性や大まかな位置等を検討する、施設計画が必要になります。樋門の目的は前述のとおり逆流防止ですが、逆流防止の方法としては樋門の他にも「バック堤」という手法があり、洪水氾濫による想定被害や本川・支川の出水傾向等を基にそれらの逆流防止方法を比較検討した上で、樋門の必要性を整理します。
その支川の流末に樋門が必要となった場合、支川の改修計画等と併せて樋門の施設計画として大まかな位置・規模等を検討します。

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樋門の予備設計

樋門予備設計は、計画地点の河川状況、地形、地質、流量等から樋門の位置、断面形状、構造形式、基礎形式等について検討を行い、最適な樋門基本事項を決定することを目的とし、後に続く詳細設計の基礎となるものです

設計計画・現地踏査

樋門の目的等を把握し、設計を進めるうえでの基本的な取り決めや内容を示した業務計画書を作成します。また、現地を踏査し、現況施設・周辺河川の状況、地形・地質、近接構造物・土地利用等を把握し、設計や施工計画に反映します。

基本事項の検討

基本条件の確認】設計条件、貸与資料および現地踏査の結果をもとに、予備設計を行うために必要な諸条件について確認・整理します。

基本諸元の検討】樋門の計画流量、位置、敷高、必要断面、断面形状、長さ、樋門及びゲート形式について検討を行います。効率的な施工を行うためのプレキャスト部材(工場製作の部材)の採用等、新技術も考慮して施工性や経済性の向上を図るように努めています。

設計条件の設定】構造検討に必要な荷重などの設計条件を設定します。 【構造検討】基本諸元を基に、基礎工、本体工、ゲート、操作室、管理橋の構造を検討します。

景観検討

樋門の門柱、操作室及び管理橋等について、周辺の景観に配慮して調和を考慮した素材・デザインの検討を行い、樋門完成後のイメージパースを作成します。

基本図面の作成

基本事項の検討結果を基に樋門の基本図面として、支川や本川の状況までを示した全体図(平面・縦横断)及び、樋門本体・翼壁・基礎・操作室・管理橋等の主要施設を示した計画一般図を作成します。ここで作成する図面の細部等は、後の詳細設計で見直される可能性があるものですので、主要構造の寸法等のみの標記としておきます。

概略施工計画の検討

検討された施設計画について、施工方法、仮設計画、工程計画等の比較検討を行い、最適な施工計画案を策定します。ここでは、計画した樋門が実際に施工可能か、効率的に施工方を粉うにはどのような方法が良いか、という観点で概略的な施工計画を立案します。

概算工事費の算出

前述までの基本図面・概略施工計画を基に概算で工事数量を算出します。その概算数量より、樋門施工の予算を確保するため、概算工事費を算定します。

樋門の詳細設計

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樋門詳細設計は、予備設計によって選定された樋門形式等の基本事項に対して詳細な設計を行い、工事実施に必要な資料(設計図面、数量計算書)を作成することを目的とします。詳細設計で作成された図面・数量や施工計画に基づいて、工事が進められるため、細かい部分についてもチェックを行い、間違いが無いようにする必要があります

設計計画・現地踏査

予備設計と同様に、設計計画を立案し、現地にて各種条件等を確認します。詳細設計であるため、現地ではより細かい状況の確認(施工上の支障物の有無等)を行う必要があります。

基本事項の決定

予備設計の結果に基づき、配置計画、樋門断面、基本構造諸元、操作室形式等の基本事項を最終決定します。

景観設計

予備設計を基に、景観について河川景観、周辺整備計画を基に、地域の特性(歴史的・文化的)背景を整理し、景観のデザインテーマを基にイメージパースを作成し、計画案を設定するとともに、使用する素材について美観性、耐候性、加工性、経済性について比較検討を行い、決定された最終案に対し詳細設計を行います。

構造設計

設計条件の確認】構造設計に必要な設計条件を設定します。

基礎工の設計】樋門の構造や土質条件に基づき基礎地盤の沈下変形解析により、相対沈下量、地盤の降伏変位量等について照査し、樋門構造および地盤改良の必要性を検討します。この結果に応じて、地盤改良等の基礎処理工法を決定します。

本体工の設計】樋門の各部の構造について、安定計算・構造計算を行い、構造詳細図、配筋図等を作成します。樋門の規模によっては、配筋図等の手間のかかる図面が膨大になるため、作業に手間を要する部分です。

ゲート工及び操作室の設計】ゲート工(扉、開閉器などの付属機器)及び操作室について、構造計算を行い、設計図面を作成します。

高水護岸・低水護岸及び土工等の設計】樋門の周りに設置する護岸や根固め工、取付水路等の付帯構造物について構造計算を行い、設計図面を作成します。また、掘削、盛土・埋戻等の土工について計画を検討し、土工図を作成します。

L2耐震性能照査

構造設計で決定した諸元(部材の厚さや配筋等)に対して、大規模地震(L2地震動)が発生した状態での安全性の照査を実施します。照査は、主要構造である「函体」・「門柱」及び「ゲート」について行います。L2地震動作用時の基礎地盤の液状化や地震慣性力を考慮した状態で、各部材が破壊しないかどうかを確認し、破壊する場合は構造設計にフィードバックし、部材厚や配筋の見直しを行います。

施工計画の検討

予備設計に基づき、樋門の施工で必要となる各種工事内容の順序と方法を検討し、最適な施工計画を策定します。工事用機械の搬入計画や環境保全・安全対策など、予備設計から一歩踏み込んだ詳細な施工計画を立案します。

仮設構造物設計

工事で必要となる仮設構造物(仮締切、仮排水路、工事用道路等)の詳細を検討し、構造計算を実施したうえで仮設物の設計図面を作成します。

数量計算

作成した設計図面、施工計画に基づいて、工事に必要となる作業・工種の数量を計算します。この数量を基に、発注者が積算を行い工事価格が決定されるため、細かな部分にも抜けや間違いが無いか、重ねてチェックを行います。

施工を考慮した留意点

施設計画⇒予備設計⇒詳細設計 の順で設計を行い、最終的に工事に必要となる設計図面と数量計算書及び施工計画を作成します。ただし、設計はあくまで設計であり、実際の工事の際には想定外の事態が生じることが多々あります。そのような場合には設計を修正する等の対応をとることもありますが、予め不測の事態を想定したうえで、樋門に求められる機能や安全性を確保できるような配慮を行うことが大切です。

土質条件や基礎地盤の状況を詳細に把握する

設計に先立って、地盤の調査が実施されているものですが、その調査が甘い(調査数量や項目が不足している)と、設計に用いる土質条件や基礎地盤の状況を詳細に把握することが出来ず、曖昧な情報を基に設計を進めてしまうことになります。そうした場合、工事の段階になり、想定していた条件と異なることが発覚し、設計の変更等を余儀なくされる例があります(工事の遅れやコストの増大につながります)。そのようなことが無いよう、設計の初期段階で土質や基礎地盤に関する情報が十分であり、信頼に足るものであるか、設計者の目でチェックを行い、場合によっては追加調査を発注者に強く提案することが大切です。

関連工作物や支障物の状況を詳細に把握する

土質と同様に、周辺の関連工作物や工事の際の支障物については、詳細に把握しておく必要があります。例えば、電話線や光ケーブル等は、地中に埋まっていることもあり現地確認だけでは把握が難しいものでもあります。なので設計初期段階で、計画地周辺の過去の工事履歴や関係する自治体の管理施設の有無について、十分に調査して設計や施工計画に反映する必要があります。

支川の改修計画を把握する

樋門は支川の流末に配置されるわけなので、当然支川の河道断面等の条件を拠り所として各種諸元が決定されます。その支川自体を改修する計画(河道を広げたり、河床を掘削したり)がある場合には、事前に確認を行いその内容を反映した樋門設計とすることが必要です。よって樋門設計にあたっては、発注者のみでなく関係機関(市町村等)との協議を行い、計画や情報に食い違い等が無いか、よく確認することが重要です。

新技術の活用による効率的・効果的な施設整備

樋門設計では、様々な新技術が日々研究・開発されていますが、ここでは2つを紹介します。

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ゲートの無動力化

ゲートは操作人の判断により水位状況に応じて開閉操作がなされますが、操作タイミングを間違えたりして洪水が逆流する等の人為的ミスも度々発生しています。このようなことが無いよう、水位に応じて自動的に開閉する構造を取り入れた「無動力ゲート」が開発され、近年実績を増やしています。また無動力ゲートは、一般的な引き上げ式ゲートの樋門にある門柱・操作台や操作室を省略することも出来るため、経済的なメリットも大きいものです。

国土交通省九州地方整備局では、「樋門の無動力化と共同管理に関するガイドライン」も整備されており、無動力ゲートの採用が積極的に取り組まれています。

主要構造のプレキャスト化

河川の工事は原則として洪水の多い時期(6~10月)を避けるものとされていますが、樋門は規模によっては施工期間が1年以上かかるものもあり、洪水の多い時期を避けて、複数年で工事が行われることも多々あります。工事が複数年に及ぶ場合、施工の手間や仮設構造物等の負担が大きくなり、工事コストが増大する等の課題があります。このような中、近年では工期短縮とコスト縮減を図るため、樋門の主要構造(函体・門柱等)を工場で製作し現場で設置する「プレキャスト化」が進められています。 プレキャスト化により、現場工期短縮・コスト縮減が図られるとともに、品質の高い工場製作部材を用いることで、施設の耐久性や安全性等の向上するというメリットもあります。

 

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