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  4. 河川構造物の耐震対策

河川

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はじめに

日本で発生した大規模地震の例としては、平成7年兵庫県南部沖地震や平成23年東北地方太平洋沖地震があり、地震により生じた甚大な被害により社会基盤施設の耐震化の必要性や総合的な防災計画の重要性を改めて認識させるものでした。内閣府では、首都直下地震、東海地震や南海トラフ地震等に関する被害想定が行われるなど、大規模地震発生の切迫性が指摘されています。

万が一、河川管理施設等が地震によって被災し、その機能を喪失した場合には、人口や資産が集積した低平地の浸水等において甚大な被害を引き起こす可能性があるため、河川構造物の耐震性能の確保が喫緊の課題であります。

河川構造物

1. 概要(河川構造物の耐震対策とは?)

これまでの河川構造物は、想定する中規模な地震に対し損傷しないよう耐震設計がされてきました。しかし、平成7年に発生した兵庫県南部地震は、これまで経験したことがないような大規模地震であり、甚大な被害が生じました。こういった背景から大規模地震への対策が必要となりましたが、大規模地震に対して全く損傷しないような耐震対策は、構造が大規模かつ不経済といった不合理な状態となってしまいます。

そこで、大規模地震に対する耐震設計は、各施設の必要な耐震性能が確保できれば、損傷を許容するという考え方に変わってきました。

河川構造物の耐震対策は、まず、施設毎に維持しなければならない必要な機能を把握し、地震後においても必要な機能が維持できるかについての耐震性能を検討します。 そして、耐震性能を満足していない場合には、必要な耐震性能を満足するよう補強による耐震設計を実施します。

河川構造物には、盛土による堤防の土構造物、樋門、水門および排水機場等のような構造物が多く存在するため、この中から堤防と樋門・水門について具体的な耐震性能照査方法や耐震設計について説明します。

2.設計手順・考え方

2.1 堤防の場合
2.1.1 耐震性能照査方法

堤防は、一般に河川水が河川外に流出することを防止するために設けられたものであるため、地震後においても、河川の流水が河川外へ越水することを防ぐ機能が求められます。 地震時における堤防の被災メカニズムは、堤防直下の砂質土の液状化に伴い、堤防自体の重みにより堤防が沈下します。

つまり、地震動に対して液状化が生じた場合においても、河川水位(波浪や津波の影響を考慮した水位)よりも地震後の堤防高が高い場合は耐震性能を満足し、低い場合は対策が必要となります。

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地震後の堤防高は、地震の影響として基礎地盤と堤体の液状化を考慮し、地盤変形解析により求めることを基本としています。地盤変形解析とは、地盤の液状化によって低下したせん断剛性に対して、自重解析によって沈下変形量を求める手法です。

以下に地盤変形解析結果を示しますが、黒色が地震前の堤防、赤色が地震後の堤防です。地震による液状化の影響で、地震後の堤防がどの程度沈下・変形するかを算出し、耐震性能を照査します。

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2.1.2 耐震設計

耐震性能照査にて算出した地震後の堤防高が、河川水位(波浪や津波の影響を考慮した水位) より低い場合に対策が必要となります。

耐震設計では、現地の状況、経済性、施工性および周辺への影響等を総合的に勘案し、液状化 による堤防沈下を防止する対策工法を決定します。

ここでは、堤防直下の液状化層をセメントで固める固結工法(深層混合処理工法)による耐震設計をご紹介します。

深層混合処理工法とは、液状化する地盤とセメント系改良材を原位置にて攪拌混合し、所定の強度の改良体を地中に造成する工法です。

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設計手法は、改良体を一種の地中構造物として考え、地震時の改良体自体の安定検討を行います。具体的には、作用する地震外力に対する改良体の安定(外的安定)と改良体自体の強度に対する安定(内的安定)について検討します。外的安定は、地震に対して改良体自体の滑動・転倒が所定の安全率を満足しているか、地盤反力が許容支持力以内であるかを検討します。内的安定は、改良地盤に発生する内部応力が改良体の許容応力度以内であるかを検討します。

大規模地震に対する耐震対策後の効果検証として地盤変形解析結果の事例を下図に示しますが、黒色が地震前の堤防、赤色が地震後の堤防です。堤防基礎地盤の液状化層を地盤改良により固め、液状化しないようにすることで、地震後の堤防沈下がどの程度抑制されるかを評価します。

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2.2 樋門・水門等の場合
2.2.1 耐震性能照査方法

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樋門・水門は、地震後においてもゲートの開閉機能が維持され河川の流水が河川外へ流出することを防ぐ機能、また函体が破損せず堤防機能の維持および河川へ排水させる機能が求められます。

耐震性の評価手法については、中規模地震に対しては損傷を許容しない照査を行い、大規模地震に対しては損傷を許容させますが、損傷の程度を評価した検討を行います。

損傷程度の評価については、具体的には地震時保有水平耐力法という評価手法を採用し、地震外力による門柱の破損状況(門柱の傾斜等)を評価し、ゲートの開閉機能の維持が可能か否か検討します。

函体については、堤防の耐震性能照査で記載した地盤変形解析により堤体や基礎地盤の液状化に伴う地盤変形量を算定し、得られた変形量を外力として作用させ、函体に発生する断面力を算定し、過大な損傷があるかどうか検討します。






 

2.2.2 耐震設計

耐震性能を評価した結果、耐震性能が不足すると判定された場合、耐震設計として補強を施す必要があります。補強対策は、様々な工法が開発されておりますが、各施設の状況や補強の目的等を踏まえた最適な工法選定が重要です。

ここでは、鋼板を既設部材に巻き立てて、耐力や変形性能の向上を図る「鋼板巻立て工法」をご紹介します。







設計手法は、耐震性能照査で地震時保有水平耐力法にて算定した部材の不足耐力に対して、必要な鉄筋量を計算します。鋼板は鉄筋換算を行い、鉄筋コンクリート構造として設計します。つまり、巻立てた鋼板は、既設柱部材と一体となって地震力に抵抗するものとして考えます。

また、既設柱部材に鋼板を巻立てることから、コンクリートの拘束効果とせん断力の増加が期待できるため、帯鉄筋として鋼板で巻立てた全断面を有効として考えることができます。

 

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