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中島道浩

はじめに

1.橋梁の老朽化と計画の始まり

2007年6月、国道23号に架かる木曽川大橋において、腐食の進展に伴うトラス主部材の破断が確認されました。また、2006年の加国ケベック州のデラコンコルド跨道橋、2007年の米国ミネソタ州のI-35W号線ミシシッピ川橋における落橋事故などを契機に橋梁の老朽化が顕在化しました。



国交省HP 鋼橋(上部構造)の破損事例より
土木学会HP 土木学会誌vol.92 no.10 October 2007より土木学会HP 土木学会誌vol.92 no.10 October 2007より

 


国交省や一部の自治体では、従前より定期点検などを通して橋梁の状態を把握していましたが、多くの地方自治体では点検を実施していない状況でした。そのため、橋梁の現状を把握すること、また、厳しい財政状況により橋梁の維持が困難となってきたため、修繕計画を立案し、予算の平準化、橋梁の長寿命化を図る目的で、「橋梁長寿命化修繕計画」の策定、公表することが義務づけられました。

約70万橋近くある橋梁の内、15年後には約半数の橋梁が竣工後50年を迎えようとしている中、橋梁長寿命化修繕計画は必然の事業となりました。

2.長寿命化計画の概要

管理水準とコストのイメージ管理水準とコストのイメージ

多くの自治体では、大量にストックされた橋梁の急激な老朽化と、逼迫した財政状況などのため、一様に予防保全型の維持管理(初期に多くの投資を必要とする)をするのは困難な状況となっています。

現在は、各自治体の方針に基づき、橋梁単位、地区単位などで管理水準・管理方法を定め、橋梁の健全性が保たれるように予算の平準化、維持管理費の低減を試みています。

 


橋梁の長寿命化検討方法

1.計画の基本方針策定

計画の基本方針は、橋梁の長寿命化を目的とする、管理水準や管理方法の策定、予算の平準化を行う中で、核となる項目です。地域の気象条件や橋梁の特徴、維持管理体制など、それぞれの自治体に合った方針を策定することが重要です。

A自治体の事例A自治体の事例

2.現状の分析

点検結果の分析

橋梁の定期点検は、現在は5年に1度実施されます。その点検結果を分析することで、地域の特性、現状を把握し、計画策定に役立てます。近年は、2巡目の点検も実施されているため、過去の点検と比較することで、計画の妥当性なども確認しています。

予防保全対策事例:塗装塗替予防保全対策事例:塗装塗替


 


定期的点検結果に点検履歴や補修履歴の情報も加え、各橋梁の各部材単位での健全度を評価します。以下のグラフは、従来の損傷が顕在化した後に対策を行う事後対策型から、損傷が顕在化する前に予防保全型に転換してからの5年間の変化を示しています。予防保全型管理を取り入れたことで、橋梁の修繕が進み、健全を示す5の割合が増えていることがわかります。このように管理方針の変更が妥当であったことが数字で確認できます。

点検結果の比較例点検結果の比較例


 


3.計画の策定

yecでは、以下に示す劣化予測手法等の条件に合わせて複数のシステムを保有しており、最適な提案をすることが可能となっています。

管理水準の設定

適切な管理を実施するためには、それぞれの管理者の実態に合わせた管理水準を設定する必要があります。管理水準は予算の把握、健全性を保つために重要な指標の一つとなります。

■ 管理水準の設定例

外見的な劣化損傷が顕在化する前に予防対策を実施する予防保全型、損傷が顕在化した後に対策を実施する事後対策型、さらに、大規模河川渡河橋梁や長大橋や特殊な構造を有する橋梁は重点的に管理する重点管理型と3つの管理方針を定め、それぞれの橋梁の重要度、予算を考慮して管理水準を設定。

また、更なる費用の縮減と平準化を図るため、管理しているすべての橋梁を一律に長寿命化するのではなく橋梁の状況に応じて計画的に更新を実施する計画的更新橋梁を定める。

 


■ 管理水準の設定例

予防保全型、事後保全型、経過観察型、特殊な部材を有する橋梁は個別に管理する個別管理型と4つの管理方針を定め、それぞれの橋梁の健全性、予算、重要度を加味して管理水準を設定。

 


劣化予測手法

代表的な劣化予測手法では以下の表に示すような項目があります。劣化予測手法においても地域の状況、点検の精度などを考慮した形で適切な劣化予測手法を採用します。

点検結果から平均経過年を算出し、
劣化曲線を設定した例
劣化メカニズムに応じた理論式を使用
(劣化年数の設定)の例

 


 


重要度・修繕優先度の設定

自治体の予算には各年度、各自治体に合わせた上限があります。そのため、最終的な長寿命化計画においては、予算の平準化を目的とし、橋梁の重要度、修繕の優先度を設定する必要があります。代表的な手法としては以下のような手法があげられます。

 


■ 点数化手法による設定例

健全度と重要度に重みを加えて修繕の優先度を設定。重要度の順位付けにおいては、AHP手法※を準用し重み付けを実施。

 


※AHPによる重み付けとは
yecでは重要度の算出において、AHP手法による重要度の計算を行っています。一般的に重要度は、客観性が乏しいと言われがちですが、AHP手法を用いることで管理者(橋梁の関係者)の潜在的な考え・指向を反映することが可能となります。 具体的には、管理者にアンケートを実施し、各項目の一対比較により算出を行います。

重み付けの検討結果例

 


4.計画の効果

一般的には、従来型の管理との比較を実施し、その効果を検証します。管理水準、管理手法、重要度などを設定し、予防保全型管理等を推進していくことで、従来行われてきた場当たり的な維持管理よりも大幅なコスト縮減が可能となる計画を目指します。

 


5.PDCAサイクル

平成26(2014)年6月以降、2m以上の道路橋において5年に一度、近接目視による橋梁定期点検が義務づけられました。これにより現場におけるPDCAサイクルの第一歩は確実に実施されることとなります。点検結果の比較により計画の見直しも定期的に実施することが可能となる環境ができてきています。計画は作って終わりではなく、作ってからが始まりです。Check,Actionにより計画の見直し、そして実行していく必要があります。

一方で、点検の法制化によって、予算が修繕に回らないという問題点も生じ始めています。yecでは、それらを解決すべく発注方式の検討(調達方式ロジックモデル)なども実施しています。

 



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