1. TOP
  2. yecが手掛けた橋

title-03.jpg

1.はじめに

 岩手県の沿岸部を南北に縦断する三陸鉄道は、北リアス線(宮古・久慈間71km)と南リアス線(盛・釜石間36.5km)の2路線がある。この三陸鉄道は、平成23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震による巨大津波で甚大な被害を受けた。北リアス線では、宮古・小本間ならびに陸中野田・久慈間が懸命の復旧により3月中に運転を再開したものの、残る線区については構造物の新設や補強が必要となった。
 三陸鉄道は平成23年11月1日に復旧工事の設計施工を鉄道・運輸機構に委託し、平成24年4月1日には、田野畑・陸中野田間24.3kmの運転が再開された。
最後の不通区間の小本・田野畑間10.5kmは、島越地区の高架橋及び3か所の橋梁が津波で流失した区間である。この区間を、八千代エンジニヤリング(株)が担当した。 

img-02.jpg


2.北リアス線(小本・田野畑間)の被災状況 
 北リアス線の沿線に近い宮古市田老町及び野田村野田での観測記録によると、震度はともに5弱であり、最大加速度は3方向成分の合成でそれぞれ241gal、136galであった。北リアス線では南リアス線に比べて地震動による被害は小さいものの、外海に面する位置に路線のある区間では、防潮堤を超えた津波が構造物に直接襲来して被害が生じた。


(1)島越駅付近
 島越駅付近は、ラーメン高架橋4連、橋脚2基、橋台2基、RC桁4連、PC桁1連で構成されていた。施工基面高は10m程度であるが、防潮堤よりもはるかに高い22m以上の津波が襲来して駅・駅舎とほとんどの桁が流出し、ラーメン高架橋が倒壊する等の壊滅的な被害を受けた。

hashi01.jpg
島越地区の被災状況(出典:鉄道運輸機構)
  hashi02.jpg
  被災後の島越駅(出典:鉄道運輸機構)

  

 

 

 

 

 

 

 



 


(2)コイコロベ沢橋梁・ハイペ沢橋梁

 コイコロベ沢橋梁及びハイペ沢橋梁は、防潮堤のない切り立った海食崖に挟まれた区間にある。海岸からの離隔は、2橋とも50m程度である。

 コイコロベ沢橋梁は、起点側から河道上のRC桁(L=20.0m)、県道上のPCホロー桁(L=20.0m)、橋台2基、橋脚1基で構成されていた。津波により、RC桁が約200m、PCホロー桁は約60m上流側に流出した。橋脚は流失を免れたが、躯体の主鉄筋段落とし部で損傷した(図)。

hashi03.jpg
コイコロベ沢橋梁の被災状況(出典:鉄道運輸機構)


 ハイペ沢橋梁は、起点側から河道上の県道を跨ぐPC下路桁(L=32.1m)、RCT形桁(L=16.6m)、橋台2基、橋脚1基で構成されていた。津波により、起点側橋台と桁2連が上流側に約50m程度流出した。流出を免れた橋脚は、躯体基部が洗掘された(図)。

 
 

hashi04.jpg
ハイぺ沢橋梁の被災状況(出典:鉄道運輸機構)
   hashi05.jpg
    ハイぺ沢橋梁の被災状況平面図(出典:鉄道運輸機構)

 

 

 

 

 

 

 



3.復旧計画

 弊社は、小本・田野畑間の復旧計画としては、津波を防ぐ防波堤とするため、高架橋部分から盛土形式(土構造)への変更を基本とするとともに、交差箇所の3カ所の橋梁は耐震性の高い構造で設計した。


(1)島越駅付近

 盛土は、自治体(田野畑村)の防災計画を踏まえ、第2線堤的な役割を果たすよう、耐震性の高い補強盛土形式とした。形状は、のり面勾配は1:1.8(盛土の底面幅約40m、施工基面幅は5.9m)とし、法面工は浸食を防ぐため場所打ちの張コンクリート構造とし、補強材を介して盛土と結合させた。

 この構造は、補強土壁構造(RRR工法)と呼ばれ、軌道を支持する盛土構造として標準的な構造であり、新幹線等の高速鉄道の構造物にも使われている。島越駅付近の盛土構造は、この最新技術により復旧することとした。

hashi06.jpg

島越地区の新旧構造形式

 

hashi19.jpg

島越駅付近復旧盛土断面図
 

(2)GRS一体橋

  盛土構造による復旧を基本とする中で、道路や河川と交差する部分(3カ所;松前川、コイコロベ沢、ハイペ沢)については、前後の盛土構造を活かした橋梁として、GRS一体橋形式を採用することとした。

 GRS一体橋は、桁と橋台と盛土を一体化した構造で、上下部一体の門型ラーメン橋と補強土橋台(ジオテキスタイルで竪壁と背面のセメント改良土を連結した橋台)のハイブリッド構造である。

hashi13.jpg

GRS一体橋梁の構造概要


 上下部一体構造は、津波による桁の流出防止の役割も果たすと考え、また、側壁の補強土橋台により水平力を補強土に負担させることで、上部工がさらにスレンダーとなった。さらに、基礎の負担が少なくなったことで、コイコロベ沢橋梁とハイペ沢橋梁では、既存の橋台・橋脚基礎を再利用し、建設廃材の発生を抑制することができた。

表:北リアス線GRS一体橋梁の諸元
hashi09.jpg

 

hashi10.jpg

松前川橋梁一般図
 

hashi11.jpg

コイコロベ沢橋梁一般図
 

hashi12.jpgハイぺ沢橋梁一般図

4.2径間GRS一体橋の設計

 GRS一体橋は、北海道新幹線の木古内駅付近(木古内中学校線Bv:L=12m)で初めて採用され、施工は既に完了している(2011年11月完成)。また、桁の温度収縮による側壁背面の補強材のひずみについては、現在も鉄道総合技術研究所により計測が続けられており、設計の理論と実挙動の妥当性が確認されている。

 今回の2径間GRS一体橋は、規模は橋長L=24~60mと大きく、温度降下やコンクリートの乾燥収縮等の縦荷重による不静定力の影響が大きくなることが懸念された。

hashi17.jpg

縦荷重による不静定力の影響

(1)補強材

 補強材は、橋長が大きくなると、常時の負担が大きくなることが懸念されるため、設計時には多くのケースを解析し、特徴を解明することとした。


(2)主桁構造

 主桁断面は、一体橋である特徴を生かし、スラブ形式のRC構造を基本とした。橋長が長い上、桁高制限が厳しいハイペ沢橋梁は、下路桁のSRC構造を採用した。

hashi18.jpg
図 ハイペ沢橋梁の下路SRC断面

 (3)耐震設計

 GRS一体橋の耐震設計は、上下部一体橋と補強土の全体系モデルにより動的照査を行い、補強土部分の慣性力の影響を考慮するものとした。動的照査により、長大橋のGRS一体橋の特徴を把握し、各種部材の設計に反映させた。

hashi15.jpg

ハイぺ沢橋梁の動的解析モデル 

 

hashi16.jpgアプローチブロック部の解析モデル

5.おわりに

 本構造は、これまでのGRS一体橋に関する技術と知恵を結集した素晴らしい構造である。設計に関して、鉄道・運輸機構を始め、公益財団法人鉄道総合技術研究所の皆様に多大なるご指導を頂いた。この経験を活かし、さらに良い構造形式の提案の一助にしたいと思う。

 

ページトップ