地下水に関する意識調査2021.10.04

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はじめに

皆さんは、毎年8月1日が「水の日」、8月1日~7日が「水の週間」とされていることを知っていましたか?これらは、平成26 年に制定された水循環基本法において、「国民の間に広く健全な水循環の重要性についての理解と関心を深める日」として位置づけられたものです。

日常生活で当たり前のように利用している「水」ですが、水は限りある自然資本の一つです。そのため、私たちは持続的に利用するために、水を知り、価値ある水資源を守らなければなりません。

水リスクラボでは、「水の日」にちなんで、一般市民の方々の地下水や水に対する意識調査を目的としたアンケート調査を下記の通り実施しました。

【調査概要】

  • 対象人数:1,000人
  • 対象者:全国47都道府県に居住する20代~60代の男女
  • 調査方法:インターネット調査
  • 調査期間:2021年8月1日(日)~8月3日(火)
  • 調査内容
    • Q1.地下水のイメージについてお答えください。
    • Q2.地下水の源は何だと思いますか。
    • Q3.地下水はどのように流れていると思いますか。
    • Q4.地球上の水のうち、人間が使用できる状態の水は何%あると思いますか。
    • Q5.地下水を守るために必要なことは何だと思いますか。
    • Q6.地下水は誰のものだと思いますか。
    • Q7.地下水の保全は誰がすべきだと思いますか。
    • Q8.水が最も使われている製品はどれだと思いますか。
    • Q9.ナチュラルミネラルウォーターを購入する際に、取水地を気にしていますか。

    アンケートの回収数(人)

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    【結果】

    Q1. 地下水のイメージについて全てお答えください。(15択:複数回答)

    アンケート回答者全体における地下水へのイメージは、1位が「冷たい」(78%)、2位が「おいしい」(36%)、3位が「きれい」(22%)とポジティブなイメージが上位となりました(図1:左図)。回答の傾向は年齢別で異なる傾向が見られ、年齢が高いほど上位3項目のイメージの割合が大きいのに対し(図1:右図)、20代では「汚い」(24%)、「おいしくない」(30%)、「ぬるい」(21%)といったネガティブなイメージの回答が、他の世代に比べて大きくなる結果となりました。


    幼少時代に身近にあった井戸や湧水を生活用水として活用していた人が比較的多かったであろう50代、60代は、若い年代に対して相対的に地下水に直接触れる機会が多く、実体験から「冷たい」「おいしい」「きれい」のイメージに繋がっているのかもしれません。そのことは、日本における上水道の普及率が1960年時点で36%だったものが、以降、上水道整備が全国で急速に進み、1990年以降は95%を超えていることが物語っているように思えます(図2「水道の基本統計(厚生労働省)」)。一方、20代は日常生活で地下水に直接触れる機会が少なく、時おりニュースとして流れる地下水汚染などの情報がネガティブなイメージに影響している可能性も考えられます。

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    図1.地下水のイメージに関するアンケート調査結果(左図:全体、右図:年代別)


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    図2.日本における水道普及率の推移

    出典:厚生労働省, 水道の基本統計より引用


    Q2. 地下水の源は何だと思いますか?(5択:単一回答)

    結果は、「雨」(80%)、「河川水」(11%)、「海水」(1%)、「マグマ」(1%)となりました(図3)。世代別に見ても雨の割合が最も大きくなっています。また、若い世代ほど「河川水」の割合が大きい傾向が見られました。

    地下水の源を考える上で重要なことは、水循環と流域です。一般的に、雨が降り地上に到達すると、水の一部は地面・水面から蒸発したり、植物を経て大気に戻ります(蒸散)。大気に戻った水以外は、地下に浸透して地下水となったり、河川水として地上を流れたりします。また、河川水と地下水は相互に行き来する場合がありますが、これらは最終的には海に流出します。そして、海で蒸発した水が雲となり、また地上に雨をもたらします。このように、水が地球上で常に循環していることを水循環といいます。このため、広い意味では明確に源を定めることは難しいと言えます。なお、流域という観点を加え、取水した地下水が流域の中のどこから来たのかを考える場合、地下水の源は上流で降った雨や雪ということになります。その地上に降る雨や雪のうち、どれくらいの量が地下水となっているかを試算したのが、図4の地下水かん養量のマップです。地域によってその量にかなりの差があるのが分かると思います。

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    図3.地下水の源に関するアンケート調査結果


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    図4.日本における年間地下かん養量


    Q3. 地下水はどのように流れていると思いますか?(4択:単一回答)

    結果は、「砂などの隙間が多い地質を流れている」(35%)、「地下にある岩盤の割れ目を流れている」(47%)、「地下に溜まっているため、ほとんど流れていない」(13%)となりました(図5)。また、全ての世代で「地下にある岩盤の割れ目を流れている」が最も割合が大きくなっています。年代別の回答の特徴としては、若い年代ほど「地下に溜まっているため、ほとんど流れていない」の割合が大きく、年代が高いほど「砂などの隙間が多い地質を流れている」の割合が大きくなる傾向が見られました。


    実際に、地下水は主にどのようなところを流れているかというと、「砂などの隙間が多い地質」や「岩盤の割れ目」を流れています。大都市の多くが位置している平野においては、地面の下は固まっていない泥、砂、礫などが堆積しており、地下水は砂や礫といった隙間が多い地層の中を流れています。一方、山間部では岩盤中の割れ目に地下水が存在しています。特殊なケースですが、石灰岩地帯では、鐘乳洞の中を地下水が流れる場合もあります。一般に平野や盆地は、山間部に比べ井戸の掘削が容易なので、地下水の利用が活発になされている地域が多いようです。

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    図5.地下水の流れ方に関するアンケート調査結果


    Q4. 地球上で、人間が使用できる状態の水は何%あると思いますか?(6択:単一回答)

    結果は、「分からない」と答えた人が最も多く、人間が使用できる状態の水が何%あるか、あまり認知されていないようです。また、世代間での大きな相違はありませんでした(図6)。

    地球上で人間が使用できる状態の水は、「0.01%」と言われています。地球上にある水の97.5%は海水であり、残りの2.5%が淡水になりますが、そのほとんどは氷や地中深くに存在する地下水になります。そのため、人間が使える水は河川水、湖水および浅い地下水の約0.01%になります。(詳細は水リスクラボ「#1 水の動画」をご視聴ください。)

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    図6.地球上で人間が使用できる状態の水の割合に関するアンケート調査結果


    Q5. 地下水を守るために必要なことは何だと思いますか?(9択:複数回答)

    結果は、1位が「森林保全」(74%)、2位が「規制」(36%)、3位が「節水」(32%)となりました(図7)。また、森林保全が重要であるとの認識は全世代で共通していますが、年代別の傾向としては、若い世代ほど「節水」や「雨水利用」といった自主的に取り組みやすい内容が、年齢が高いほど「規制」や「監視」といった外部の目が必要と考えている割合が大きくなっています。

    地下水を保全するためには、森林保全によって雨水を地下水にかん養すること、それらを持続的に利用するために規制や監視体制を整備すること、そもそもの使用量を削減するといった一連の取り組み全てが重要であると言えます。


    ※選択肢にある海の保全・河川流量の維持は、それぞれの環境下における生態系や水質を良好に保つために必要な項目です。また、河川水が地下に浸透している地域では、地下水への補給という観点から、河川流量の維持も一つの保全策となりうる場合があります。


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    図7.地下水を守るために必要なことに関するアンケート調査結果


    Q6. 地下水は誰のものだと思いますか?(7択:単一回答)

    結果は、1位が「誰のものでもない」(43.5%)、2位が「市民、国民」(22.5%)、3位が「国」(19.3%)となりました(図8)。


    地下水は公共性が高く、「誰のものでもない」「市民、国民」共有のものといえます。平成26年7月1日に施行された「水循環基本法」では、基本理念の1つに「水の公共性」が挙げられ、「水が国民共有の貴重な財産であり、公共性の高いものであることに鑑み、水については、その適正な利用が行われるとともに、全ての国民がその恵沢を将来にわたって享受できることが確保されなければならない。」とされています。

    これまで、民法上の解釈から、地下水は「土地所有者のもの」と考えされてきましたが、水循環基本法によって地表水も地下水も水循環の構成要素であり、「水は国民共有の財産であり公共性の高いもの」との理念が示されました。

    今年6月には、第204回国会で「水循環基本法の一部を改正する法律案」が可決されました。これにより、水循環に関する施策に「地下水の適正な保全及び利用に関する施策」が含まれることが明確化されました。また、国や地方公共団体は、地下水の適正な保全と利用に向けて必要な措置を講ずるべきといった旨の努力義務の規定が追加されています。

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    図8.地下水は誰のものかに関するアンケート調査結果


    Q7. 地下水の保全は誰がすべきだと思いますか?(4択:単一回答)

    Q6で述べたように、地下水は公共性が高い資源であるため、様々なステークホルダーが連携して地下水保全に向けた取り組みを進めていくことが望ましいと言えます。結果は、「自治体」(22%)、「地下水を利用している企業」(14%)、「地域住民」(6%)、「上記全て」(58%)となっており(図9)、実際に、行政や企業、地域住民といったステークホルダー全員が協力して地下水の保全を進めていくべきと考えている方が約6割と非常に多いということが分かりました。

    一方、地下水の保全は地下水を利用している企業が行うべきである、と考える一般市民の方も2割弱を占めています。海外では、インドにある飲料メーカーの工場が地下水の過剰利用で地域住民に訴えられ、裁判所の閉鎖命令によって工場の撤退に追い込まれた事例もあります。このように、地下水を利用している企業は、何らかの水問題が生じた際にその責任を問われる可能性があるということを認識しなければなりません。そのようなリスクを鑑みると、今後企業においても節水や水源かん養の地下水の保全に向けた取り組みや、持続可能な操業を根拠づけるための水利用状況の把握、情報開示等も進めていくことが重要になります。

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    図9.地下水の保全は誰がすべきかに関するアンケート調査結果


    Q8. 地下水が最も使用されている製品はどれだと思いますか?(6択:単一回答)

    結果は、「工業製品(主に精密機械、自動車など)」(43%)、「飲料」(20%)、「食品(主に野菜、穀物など)」(19%)、「紙類」(11%)、「衣料」(2%)、「その他」(5%)となっており、工業製品の製造の際に、最も地下水を多く使用するイメージを持っている人が多いということが分かりました(図10)。


    しかし、工業統計調査(経済産業省)の「2020年確報 産業別統計表」によると、上記の業種のうち、全国の1日当たりの井戸水用水量の合計は、食料品(1,182,131m³/日)が最も多く、次に紙類(798,253m³/日)、衣類(545,018m³/日)の順となっています。

    また、地下水の使用用途も業種によって様々です。例えば、「良質な水質」という地下水の特性を活かして、ミネラルウォーター等の飲料水、精密機器の製造工程における洗浄、繊維工業における染色などの用途で使用されたり、プラスチック製造や化学工場などでは、「年間を通して水温を一定に保つ特性(表流水に比べて夏は冷たく、冬は暖かい)」を活かして冷却用水として使用される場合もあります。


    ■工業統計調査(経済産業省)「2020年確報 産業別統計表」

    https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/kougyo/result-2/r02/kakuho/sangyo/index.html


    ※計算に用いた値は、上記の産業用統計表のうち「従業者30人以上の事業所に関する統計表(事業所数、事業所敷地面積及び1日当たり水源別用水量)のうち、井戸水を地下水と見なして記述した。

    ※各業種別の井戸水用水量の合計値は、以下の項目を参照した。

    • -工業製品:電子部品・デバイス・電子回路製造業および輸送用機械器具製造業
    • -飲料:飲料製造業
    • -食品:食料品製造業
    • -紙類:パルプ・紙・紙加工品製造業
    • -衣類:繊維工業
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    図10.地下水が最も使用されている製品に関するアンケート調査結果


    Q9. ナチュラルミネラルウォーターを購入する際に、取水地を気にしていますか?(3択:単一回答)

    結果は、「購入時に取水地はチェックするが、特にこだわりはない」(39%)、「取水地はチェックせず、その他の要因(ex.メーカー、価格など)で商品を選んでいる」(36%)、「好きな取水地(ex.南アルプス、富士山など)があり、商品を選ぶ際の基準にしている」(26%)となっており、取水地を見ているという人が約6割を占める結果となりました(図11)。


    取水地を気にする人の中には、もしかすると「きれい、おいしい、安心・安全」といった、良いイメージを連想させる取水地を意識している人が多いのかもしれません。ナチュラルミネラルウォーターは、「地中でミネラル分が溶解した地下水で、沈澱、ろ過、加熱殺菌以外の処理をしていないもの」と定義されています。地下水は私たちが直接見ることができない地下に存在するため、過剰に揚水したり汚染されたりしても、その影響を簡単には確認できません。そのため、地下水を無計画に取水し続けたり、監視を怠ったりすると、気づいた時には水資源の枯渇や水質悪化等の問題が顕在化し、地元住民の生活や自然環境にも大きな影響を与えてしまいます。こういったリスクを抑えるために、地下水を取水している企業やメーカーの地下水保全活動が非常に重要になります。また、ナチュラルミネラルウォーターを購入する消費者側も、取水地だけでなく、企業がどのような地下水保全活動をしているのかを見てみると、より安心して好きな製品を飲み続けられるのではないでしょうか。

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    図11.ナチュラルミネラルウォーターの取水地に関するアンケート調査結果


    さいごに

    今回は、全国1,000名の一般の方々を対象としてアンケートを実施し、地下水に対する関心度や水資源に対する考え方について、意識調査を行いました。その結果、地下水に関して「冷たい」「おいしい」「きれい」といったポジティブなイメージをもつ人々が多い一方で、若い世代ほど地下水に対するイメージや意識が低いことが分かりました。また、地下水の起源や流れ方など基本的な知識については、十分理解されているとは言いがたいことが浮き彫りになりました。地下水を保全していくためには、水そのものや地下水に関する正しい知識に触れる機会を増やし、人の関心を高めつつ、リテラシーの向上を図ることが重要となります。そして、行政、企業、地域住民等のステークホルダーが協力し合い、貴重な水資源を賢く利用しながら、積極的に保全する活動を行っていくのが望ましい方向だと考えます。

    水リスクラボでは、今後も水に対する意識向上や、水資源の持続可能な利用に向けた企業様の様々な取り組みをサポートしてまいります。これまで支援させていただいたサービス事例の一部は、水リスクラボ「事例紹介」にてご紹介していますので、是非ご覧ください。

    執筆者:柳沢早紀 霜山竣

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