1/28(木)開催「バックキャスティング思考で考える気候変動の緩和と適用」

2021年1月28日(木)にウェイストボックス様と水リスクラボの合同でオンラインセミナー「バックキャスティング思考で考える気候変動の緩和と適用」を開催いたしました。

開催概要

  • テーマ1:世界の平均気温の上昇を最大1.5℃に抑えるために何ができるのか?
  • テーマ2:2050年からバックキャストで水リスクを考える
  • 開催日時:2021年1月28日(木)10:00~11:30
  • 開催方法:オンライン(Zoom)
  • 主催  :八千代エンジニヤリング株式会社 水リスクラボ・株式会社ウェイストボックス
  • 参加費 :無料
  • 参加人数:86名

本セミナーは水リスクラボとウェイストボックス様との合同で開催いたしました。
ウェイストボックス様のテーマである「世界の平均気温の上昇を最大1.5℃に抑えるために何ができるのか?」は、世界の気候変動対策の動向とSBT水準の目標設定および認定取得の具体的手順について解説することを目的としたセミナーです。

まず世界の動きとして、ビジネス界がリードし低炭素社会への移行加速を目指す動きが広がっており、We Mean Businessという非政府主体のプラットフォームを中心に、様々な主体が連携し、気候変動対策等に取り組んでいます。
SBTもこの取組の一つであり、それに取組む企業は世界的にも増加傾向にあり、民間企業においてもより気候変動対策が求められる現状であることを述べさせていただきました。

次に、SBT水準の目標設定および認定取得の具体的手順について解説いたしました。
目標設定については、パリ協定水準(1.5℃水準を推奨)と整合すること、対象はScope1,2,3でScope1,2は総量同量削減目標(但し一部業種は原単位目標設定も有り得る)、Scope3は野心的目標(総量・原単位・サプライヤー/顧客エンゲージメント)である必要があること、具体的手順については、手順のポイント(設定手法の選択、削減経路の算出、目標年の設定等)、認定の要件、申請手続きについて解説させていただきました。

最後に、現状の日本企業の認定取得状況について共有させていただき、日本企業の中でも削減目標を持つ流れが主流になっていることを述べさせていただきました。
また、目標設定の次のステップとして、目標達成のための削減方法について、海外の先進的な事例をご紹介させていただきました。

水リスクラボのテーマである「2050年からバックキャストで水リスクを考える」は、気候変動の進行に伴い、深刻化する水リスクについて、今企業は何をすべきなのかについて、バックキャスティングを用いた目標設定やそれに基づくアクション設定について、当社の考えをお伝えすることを目的としたセミナーです。

まず、背景として気候変動の進行が現在の社会において最も大きな問題であり、その気候変動により物理的な被害を与えるのが水リスクであることをご説明いたしました。
また、例え2℃目標を達成したとしても、現在よりも水害は激甚化し、かつ頻度も増加することが予測されています。また、水資源量も変化すると言われ、地域によっては水の確保が困難になります。
このため、水リスクが顕在化している地域では早急な課題解決を、今後顕在化が予見されている地域では、将来に向けた準備として何をしなければならないかを考えることが重要であることを述べさせていただきました。

本題では、将来の課題を見据えバックキャスティングで目標を検討することの重要性について解説いたしました。
流域によって水量、水質、ステークホルダー、インフラ整備状況等が大きく異なることから、水に関する課題やその解決策も様々です。
このため、水に関する目標設定を行うためには、流域の実態把握が最重要となり、流域の水資源や水利用、課題、ステークホルダー等を十分に理解した上で、目標設定を行っていくことが肝要です。
そして、地域のステークホルダーとの連携や実態把握のガイドとして、AWS(Alliance for Water Stewardship)が、目標設定のガイドとしてSBTの考えを参考とすることが適切であることを解説させていただきました。

また、目標設定のみに留まることなく、適切な進捗管理やステークホルダーへの情報開示が重要となることから、CDPを通じた開示も必要不可欠なアクションになると述べさせていただきました。
CDPは会社全体の取組について、網羅的に回答を行う必要があることから、定期的に会社の取組や管理状況のチェックに用いることができます。
今後サステナブルな経営を行っていくためには、このように様々なイニシアチブやプラットフォームの本質を捉え、自社の戦略に組み込み、ツールとして活用していくことが適切であると述べさせていただきました。

質疑応答ではたくさんの質問をお寄せいただきました。文末にQ&Aを掲載いたしますので、参考になれば幸いです。
※本セミナーの趣旨から離れた質問は省かせていただいております。

次回のオンラインセミナーは2021年2月25日(木)11:00~12:00に水リスクラボ単独で開催いたします。
テーマは「工場の持続的な操業のための水源管理」です。なぜ工場が水リスク対応をしなければならないのか、世界の水に関する課題を踏まえて取り組みの例を挙げながらご説明する予定です。ぜひ多くの方のご参加をお待ちしております。

質疑応答

事業会社(子会社)単体でSBT認定を目指す場合、親会社においても、対象になるのでしょうか?
SBTイニシアティブへの参加(SBT認定)は、経営支配力或いは財務支配力を持つ親会社が主体として参加することが推奨されています。その為子会社単体で申請を行う場合は特殊な事情によるものと判断されます。ご質問を頂いた状況については、個別状況によるとは思いますので一概には言えませんが、通常は含まれていないと思われます。
省エネや再エネで15~20%削減できる企業様がいらっしゃるとの事ですが、その場合は、インフラ整備(新技術)によるGHG排出量削減への期待が大きいと理解しました。
そこで、GHG排出量を考慮したインフラの情報については、どのように取得すればよろしいでしょうか。
国内においては、まだ事例があまりございませんが海外においては、SCOPE3のネットゼロ、カーボンネガティブを宣言している企業が複数ございます。こうした企業は、いわゆるNET等の活用も行っており、動きを参考にするのが良いかと思います。
スコープ3の排出削減を反映できる算出方法を教えてください。
想定している削減手法に応じた評価手法が必要です。例えば、製造段階の再エネ比率や、リサイクル比率などを評価する場合は、LCAなどを部分的に取り入れるハイブリッド法などによる評価が必要となります。
親会社がSBT認証を取得しており、子会社でもそれに準じた目標設定をしている場合はどのように社外から評価されますか?子会社自身の認証取得も推奨されているのでしょうか?
通常、子会社の排出量は親会社のバウンダリに含まれていると想定されます。そのため、社外からの評価は親会社のバウンダリの一部分の取り組みという評価になります。なお、通常経営支配または財務支配力を持つ中核企業を中心としたグループ全体での取り組みを推奨しており、子会社単体での申請は推奨されていません。
IPCC第5次報告書の中で最も費用対効果が高い緩和選択肢の一つとして「持続可能な森林経営」がありますが、企業が所有・管理する森林における吸収をSBTの枠組みに組み込める可能性についてご意見をいただければ幸いです。
まだ国際的な定義が決まっておりませんので、明確には答えられませんが、森林経営はいわゆる中和措置(大気中からのGHG除去)に該当する可能性があります。その場合、SBT水準でのバリューチェーン内GHG削減において、価値を主張できる可能性があります。
今後、水災害は他国に比べて日本は増えるのでしょうか。
水害に関しては、現在の2倍になるとされています。
SBTiについて簡単な解説をお願いします。
SBTイニシアティブとは、CDP、UNGC、WRI、WWFなどの国際NGOが共同で構成するイニシアティブです。
環境省が公開されている、将来の気温や雨量の増加傾向が示されていましたが、この変化量に対し,水リスクへの影響が大きいのか小さいのか教えていただけますでしょうか。
大きくなると考えられます。例えば、短時間での雨量が多くなると、水害や都市域で排水が追い付かず浸水などが生じることも増えると考えられます。また、集中的な降水量が増える半面、無降雨期間も増えるとされていますので、渇水なども生じやすくなると考えられます。
SBTコミットメントした後に(5年後等)、目標見直しの場合の手続き方法や注意点等あれば教えて下さい。
また、基準年の見直しは必須でしょうか? 必須でなくても推奨されているでしょうか?
基準年の見直しは必須ではございません。2℃水準の目標で認定を受けている場合、現状のWB2℃あるいは1.5℃水準で削減経路を見直す必要がある点に注意が必要です。
目標設定の範囲や内容は単に水資源の一律削減になるのでしょうか?水リスクは地域性が大きく、GHGとは異なると思っています。
流域によって課題が異なりますので、水資源の資料量削減だけが目標とはならないと考えます。水質、地域の水資源ガバナンス、災害など流域ごとに課題が異なりますので、重要度の高く、操業への影響が大きい課題に対し、目標設定を行うのがよろしいと考えております。
弊社は連結決算開示をしていますが、単体でもSBTi認証へ申請出来るのでしょうか? 海外のスコープ3把握が困難なためです。
SCOPE3排出量が、SCOPE1,2,3の合計の40%を超えている場合は、SCOPE3の把握が必要です。
SBTのバウンダリーは自社定義してもOKなのでしょうか?グローバル100%の内、アジア地区で70%事業なので、アジアビジネスをバウンダリー100%とみなしてよいのでしょうか。
前提としては、自社が経営支配又は財務支配を行っているバウンダリにおける排出は全て含める必要があります。また、SCOPE1,2においては、総排出量の少なくとも95%をカバーしていることを要求しています。ただし、そもそも自社のSCOPE1,2(100%)の算定ロジックについては、自主的な判断により異なる部分がございます。ここの解釈次第というお答えになります。ただし、ここは企業の誠実性に関係する部分と思われますので慎重な対応が求められます。
SBT(気候、水)について懸命に頑張っても目標達成が厳しい事が考えられます。その場合の罰則の有無や、考えられるドライブ(規制強化など)があれば教えてください。
SBTはあくまでも自主的な宣言ですので、罰則は設けられていません。ただ、同業他社の達成状況によって、事業上、影響を受ける可能性が考えられます。例えば、同業他社のうち目標達成あるいは取組に積極的な企業に取引が集中することは考えられます。
水の場合ですと、水リスクが顕在化することで、取水規制や排水規制等が生じることが考えられます。また、水の枯渇だけでなく、貴重な生態系など重要な保全地域がある場合にも、規制が強化されることも考えられます。
具体的な目標設定のためには、流域の特定というお話でしたが、事業所や工場など全国で展開している場合、流域→リスクの有無の判定→対策の必要有無の判断を一つ一つ行っていることはなかなか難しく感じます。手がかりとなるポイントがあれば教えてください。
水リスクの程度(緊急性やリスクの高さ)は地域によって異なりますので、よりシンプルな調査でスクリーニングをし、優先順位をつけて、より優先度の高い地域から詳細なアクションに移るのが現実的かと思います。
当社のコンサルティングにおいても、そのような優先拠点抽出を行い、具体な調査から目標やアクションを設定することをご提案しています。
AWSについて、日本企業で取得されている企業様はどれくらいあるのでしょうか。水のワークフレームとしては、現時点ではCDPが主流でしょうか。
AWSは工場単位で取得する認証であり、現在AWSを取っている日本企業はサントリー社のみです。
水に特化した情報開示フレームワークとしては、CDPが主流です。
CDP水セキュリティの回答支援の相談をしたいです。どんな支援をしてもらえますか?
2020など過去の回答に対するレビュー(失点箇所、失点要因、アドバイス)を行うことが多いですが、貴社回答状況等を踏まえ、ご提案させていただきます。
最新のセミナーに参加する

上記以外のセミナーを開催していますので、
ぜひお気軽にご参加してください。