12/15(火)開催「日本の河川整備と水害マネジメント」と「企業の水リスクマネジメント/実践編 -水目標-」

2020年12月15日(火)にオンラインセミナー「日本の河川整備と水害マネジメント」と「企業の水リスクマネジメント/実践編 -水目標-」を開催いたしました。

開催概要

  • テーマ1:日本の河川整備と水害マネジメント
  • テーマ2:企業の水リスクマネジメント/実践編 -水目標-
  • 開催日時:2020年12月15日(火)10:30~11:45
  • 開催方法:オンライン(Zoom)
  • 主催  :八千代エンジニヤリング株式会社 水リスクラボ
  • 参加費 :無料
  • 参加人数:57名

本セミナーは2つのテーマで開催いたしました。1つ目のテーマである「日本の河川整備と水害マネジメント」は、日本の河川整備および水害リスクの現状と、それを踏まえ企業が水害への備えをどのように考えるかをお伝えすることを目的としたセミナーです。

テーマ1では、はじめに日本と世界の主要先進国における治水安全度の比較し、日本の水害リスクが高い要因を気象や地形、土地利用の観点から解説いたしました。

次に、企業がどのように水害に対応するかを4つのステップで解説いたしました。
ここでは、STEP1において水害リスクを把握し、STEP2で水害による事業への影響(被害額)を診断し、STEP3において事業影響や設備配置、平時の利便性等を踏まえて対策投資規模やハード対策の最適案を決定することが重要であることを述べさせていただきました。
また、STEP4は水害時への備えとして水害特有の影響を考慮したBCPを策定することとしています。

最後に、気候変動の影響により水害リスクは今後さらに高まると予想されており、災害に対する社会の方向性が「防災」から「減災」へ移行していることから、企業も災害が発生することを念頭にマネジメントしていくことが重要であることを述べさせていただきました。

2つ目のテーマである「企業の水リスクマネジメント/実践編-水目標-」は、最新の水目標の設定の考え方であるContext Based Water Targets (CBWT) の解説を通して、企業がどのように水目標を設定するかをお伝えすることを目的としたセミナーです。

テーマ2では、はじめに企業の水リスクマネジメントにおける目標設定の位置づけと、水目標の1つであるCBWTの基本的な考え方についてお話いたしました。CBWTとは、地域が抱える水課題の種類・程度を考慮して設定する目標のことです。

次に、CBWTの考え方に基づく水目標設定手法をカーギル社およびマース社の事例を挟みながら3つのステップで解説いたしました。
STEP1では、事業と水との関わりを理解したうえで、各地域の水課題の深刻度を評価することで、着目すべき水課題と目標設定地域を特定できることを述べさせていただきました。
STEP2では、水課題に対して地域として目指すべき姿を定めたうえで現在とのギャップを把握し、STEP3において、ギャップ解消に対する事業所の比例的責任に応じて目標値を決定することが望ましいとしております。

最後に、その後のアクションも見据えて、地域の水課題の詳細な評価に基づくとともに、コストメリット等を考慮して目標を設定することの必要性をご紹介いたしました。

本テーマでは、Zoomの投票機能を用いて自社がどのような水目標を設定しているか、簡易的なアンケートを取らせていただきました。その投票結果を以下に掲載いたします。

投票結果

参加者所属企業の水目標についてのグラフ

質疑応答ではたくさんの質問をお寄せいただきました。文末にQ&Aを掲載いたしますので、参考になれば幸いです。

次回のオンラインセミナーは2021年1月28日(木)10:00~11:30に気候変動対応の専門家であるウェイストボックス様と合同で開催いたします。
ウェイストボックス様のテーマは「世界の平均気温の上昇を最大1.5℃に抑えるために何ができるのか?」です。1.5℃水準のSBT目標を持つために必要なステップと、そもそもなぜ持つべきなのかという視点をご説明する予定です。
当社のテーマは「2050年からバックキャストで水リスクを考える」です。気候変動の影響化にある2050年の世界を踏まえ、バックキャストで今取るべき水リスク対応をご説明する予定です。ぜひ多くの方のご参加をお待ちしております。

質疑応答

農業用水河川の管理はないのですか?
農業用水は、土地改良区や市町村が管理していることが一般的です。
グローバル指標の設定はどのように設定して数値を決めればよいのでしょうか。
節水目標のような定量的な目標でしたら、各事業所(地域)で定めた目標値を合算することで、グローバル目標とすることが可能です。
海外の国の地下水の状態(水位が低下している等)はどのような団体が公表されているのでしょうか。

地下水の場合は、水リスク評価ツールであるAqueductにおいても、「Groundwater Table Decline」という指標で低下状況を把握することが可能です。また、例えばインドでは、政府が地下水位のデータを集約・公開しております。 【補足】
日本では、都道府県の水資源課などがwebサイトにおいて地下水位の調査結果を公表している場合があります。

定量的目標値を設定しないと,年次評価等が行えないが、マイルストーンだけの評価で毎年評価を見直してよいのでしょうか。
マイルストーンに対する進捗率で年次評価を行うことで問題ないと思われます。
ハザードマップで計画規模と想定最大がありますが違いを詳しく教えていただけますでしょうか。
計画規模のハザードマップは河川整備基本方針(長期目標)で対象としている規模の降雨が降った際に、現在の整備レベルで想定される浸水を評価したものです。
想定最大のハザードマップは周辺地域に過去発生した最大降雨が対象河川で降った際に想定される浸水を評価したものです。
目標設定において、アキダクト評価は使わない方が良いのでしょうか。
目標を設定する事業所(水課題が深刻な地域)を特定する際には、Aqueductの利用は効果的です。実際に目標値を決定する際には、より詳細な評価を行うことを推奨しています。
国内の水害リスクについては行政から公表されていて把握は可能ですが、海外拠点の水災害リスクを調査する手法があれば教えてください。
アメリカはハザードマップが連邦緊急事態管理庁(FEMA)より公表されています。
海外の場合は、オンラインで公表されていない場合があるため、その場合は現地在住者に問い合わせてみるのも有効です。
ハザードマップが整備されていない地域では、過去の水害履歴のヒアリングや文献調査を行うことが一般的です。定量的に評価が必要な時は、河川と対象拠点の位置関係を地形解析したり、シミュレーションを用いた浸水解析なども行っています。
オフィスビルで河川からの取水がなく、水道水のみの場合も「目標設定」(定量的、定性的)が求められるでしょうか。
河川から直接取水していなくとも水道水の供給を受けている場合は、水道事業者が河川等から間接的に取水していることになるので、その水源地の水課題が深刻であれば目標設定を行うべきだと考えます。
水リスク評価にAqueductを用いた場合、LowからExtremely highの5つのレベルで結果を得ることができますが、どのレベルからリスクがあると判断されるのでしょうか。その際、拠点の水使用量や活動内容も考慮すべきでしょうか。
目標設定のガイドでは、水リスク評価ツールによる5段階評価のうち、下から3つ目以上のリスクに着目するべきとされています。そのため、Aqueductでは「Medium to High」からリスクがあると判断するべきと考えます。
また、地域の水リスクが高くても、水をほとんど使用しない場合は影響が小さいと考えられますので、水使用量等の事業情報を考慮することを推奨しています。
近年発生している線状降水帯は台風とは異なり事前に予測が難しいと言われていますが、今後AI等の技術進歩によって予測可能性は向上するのでしょうか。
気象庁の予測も年々、精度が向上しています。近年の水害時には事前に特別警報も出されているため、その際にどのような行動をとるかをきちんと決めておくことが重要と考えます。
アキダクトの評価項目は数多くあり、正確な定義を参照しても理解がしづらいです。八千代さんで咀嚼した資料はございますか?
意見交換の場などにおいてご用意できると思われます。
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ぜひお気軽にご参加してください。