2/25(木)開催「工場の持続的な操業のための水源管理と水リスクマネジメント」

2021年2月25日(木)にオンラインセミナー「工場の持続的な操業のための水源管理と水リスクマネジメント」を開催いたしました。

開催概要

  • テーマ :工場の持続的な操業のための水源管理と水リスクマネジメント
  • 開催日時:2021年2月25日(木)11:00~12:00
  • 開催方法:オンライン(Zoom)
  • 主催  :八千代エンジニヤリング株式会社 水リスクラボ
  • 参加費 :無料
  • 参加人数:60名

水は製造を行う上で不可欠な資源です。持続的な操業に向けて、安定した利水と排水、さらには水害などの水リスク対応が必要となりますが、体系的な管理がされている日本の企業は多くありません。
本セミナーでは、まず、工場ごとに異なる水に関する課題のほか、海外での水に関する課題について認識いただきました。つぎに、水資源に係る基礎情報やモニタリング情報を体系的に整理し、工場が自立的な管理を行うための「水源管理プログラム」について紹介させていただきました。

海外での渇水、国内外の洪水、国内の水道施設の老朽化など水リスクがすでに顕在化してきている中で、今後は工場の水課題と多様な外部環境の変化に応じて水リスクの影響に対応できる自立的な体制を工場が主体となって整えておくことが大切です。
水源管理で重要なのは管理項目にぬけがないこと、情報共有の円滑化と持続的な活用、そして工場職員の負担の軽減です。
一過性のリスク評価ではなく、継続的かつ自立的なリスク管理をすることが持続的な操業において必要不可欠であり、本セミナーで紹介した「水源管理プログラム」はそれを実現することが可能です。
世界では、AWS(Alliance for Water Stewardship)に代表される責任ある水資源管理が企業に求められており、「水源管理プログラム」は今後企業にとって必ず必要になる考え方です。

質疑応答ではたくさんの質問をお寄せいただきました。文末にQ&Aを掲載いたしますので、参考になれば幸いです。

次回のオンラインセミナーは、3月26日(金)10:30~11:35に「サプライチェーンにおける水リスクマネジメント」をテーマに2部構成で開催します。
第1部ではSBTN(Science Based Targets for Nature)等を踏まえた企業に求められる取り組みについて、第2部では当社の支援事例をもとに、サプライヤーの水リスク評価についてご説明させていただきます。
ぜひ多くの方のご参加をお待ちしております。

質疑応答

工場側に持続的にプログラムを実施してもらう上での好事例や工夫点があれば教えてください。
水源管理プログラムは、工場だけでなく、本社の方とも共同で進めるパッケージです。リスク評価や対策は工場で行いますが、対外的なステークホルダーへの発信は、本社で行うことになる場合もありますし、そもそもなぜこのプログラムを行うのか、目的を本社から伝える必要があります。このため、継続をしていくためには、本社側からどんな位置づけ・目的で、どんな効果があるのか説明したり、時々ワークショップや講習会をしてコミュニュケーションを図りながら行うことが大切です。また、良い取り組みをした工場に対してはきちんと評価を行うことも重要です。
工夫点としては、工場の周りのステークホルダーや行政と上手に連携しながら行っていくことが挙げられます。工場見学の際などに、自然界の情報などを積極的に発信していくことも重要です。
水資源量や地下水の流れなどは一度評価しておけば、しばらくはその情報が活用できるという認識であっていますでしょうか?このような情報は他企業では何年に1回程度更新していますか?
地下水は基本的に地質構造によって流れ方が決まります。地質構造は頻繁には変わらないため、一度整理すれば更新は必要ありません。ただし、限られた情報を利用し想定したものですので、地域の地下水や地質の情報が追加された場合には見直すこともありますが、基本的には稀です。
モニタリングについては、日々取得し、記録をしていくことを想定しております。その他、地域の水バランスなどは、降水量や気温が大きく変わったり周辺の水利用状況が変化した場合(工業団地が進出してきて地下水の取水量が大きくなるなど)には見直しをしたほうが良いと考えられます。通常であれば、3~5年での見直しを目安としています。
水リスクの目標とは、具体的にはどういった項目・内容でしょうか。
工場ごとに課題やリスクを網羅的に調べて、とりわけ事業への影響が高いものを、優先度が高いリスクと位置付けるべきです。したがって必ずしも節水や水使用量削減の目標だけではなくて、例えば、排水基準は満たしているが、地域の河川としてはそれほど綺麗な状態ではないということであれば、排水規制の強化に繋がってしまうので、法令よりも厳しい排水基準を設定することや、地域と共に公共水域の水質改善活動していくことが目標になることもあります。
水リスクの一部は気候変動リスクとも重なりますが、水資源管理プログラムとTCFD対応はどう関連するのでしょうか。
水源管理プログラムそのものは、TCFDのために作られているものではありませんが、特徴としては持続的、自立的に管理することを目指すものです。TCFDなどでは、設定した目標やそれへのアクションの進捗を持続的に評価をしていくことが重要になりますので、持続的に管理をしている裏付けをとって追跡していくという点で関連すると思われます。
プログラム策定と情報抽出の工程での作業の違いをもう少し詳しく説明してください。また、工場や小流域のリスク評価は自身でできるのでしょうか。
工場内での水の利用方法や、取水水源(井戸水、工業用水、上水、河川水)の違いによって異なるメニューを用意しています。それをお客様の状況や立地の状況などから選択したうえでカスタマイズしていきます。
工場や小流域のリスク評価は、基本的には自立的に実施していくプログラムを想定しています。最初は我々が支援をしながら自然科学や水文学に関する考え方を説明をし、その後の更新は皆さまに行っていただき、お困りの際にサポートさせていただくことを想定しています。
水源流域の把握は、具体的にはどのようにされるのでしょうか。把握にかかる一拠点当たりの費用はどれくらいでしょうか。また、森林保全活動による水源涵養の効果を計測することは可能でしょうか。
水源流域は、取水水源の位置、取水水源周辺の地形や地質構造等を考慮して評価します。
把握にかかる一拠点当たりの費用は、上記の理由から工場の立地状況により変化するため、個別にお問い合わせいただきましたら回答させていただきます。
森林保全活動による水源涵養の効果についても計測可能です。
水リスクという観点からは、取水量削減という活動は今後各企業で取り込まれるような方向性はありますか?そうした時の具体的手法へのアプローチをサポートしてもらえるコンサルティングはありますか?
取水量の削減を目標として掲げている企業は多いと認識しております。しかしながら、工場によっては、水資源は豊富だが水質に問題を抱えている場合もあり、工場ごとに課題や取るべきアクションは異なります。そのため、課題に優先順位をつけて行動していく必要があります。当社では、工場の課題に対する具体的なアプローチをコンサルティングすることも可能です。
大地震が発生した際には地下水の流れが変化するのでしょうか?
全く変化しないとは言い切れませんが、(大地震が発生して断層のようなものが大きく動くと、地下水の流れている場所にずれが生じる場合もあるため)今のところ熊本地震や東日本大震災であっても地下水の流れは大きく変化はしていません。熊本地震では一時的に水前寺公園で水が枯れたりしましたが、現在は回復しているので長期的にみれば大きな変化はないと考えられます。
目標設定にあたっては、その根拠を明確に提示することが取り組みの成否を左右する大きな要素と思いますが、水に関しては、CO2(SBTなど)と異なり公的な数値はありません。各事業所ごとの目標設定にあたって、具体的にどの程度の負荷となりますでしょうか。また、御社と連携させて頂くにあたり、どのような手順になりますでしょうか?
SBTにおいても、流域・工場ごとに課題を抽出し、その中から事業への影響が大きいものに着目して目標を設定します。目標を達成し、地域の課題を低減していくことが流域全体での持続可能性に結び付くという考え方です。公的な数値はないので、地域ごとに自らの水利用や周辺の水利用、雨の量といったデータを用いながら、使用量と供給量のバランスや下流域での需要量を見込んで数値・目標を設定していく必要があると考えられます。
具体的な負荷の程度については、国内と海外でも状況が変化しますので、個別にお問合せいただきましたら、状況をうかがった上で提案や概略のお見積りなども対応させていただきます。
ご説明にあった、工場内の生産設備の管理ツール(MENTENA)を販売するご予定がありますか?
MENTENAは販売しております。我々の水源管理のプログラムも組み込み、徐々に機能を充実させていくことで、担当者様の負担を軽減するサポートを行いたいと考えております。しかし、現時点では水源管理プログラム自体が組み込まれていないので、ぜひ井戸をお持ちの企業様などであれば、MENTENAを導入していただきつつ、水源管理プログラムを付加させたときの使用状況のご意見も伺いながら、サービスを作っていきたいので、ご協力いただける場合はお声がけをお願いします。
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ぜひお気軽にご参加してください。