海洋プラスチック問題への取り組みについて2021.07.26

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はじめに

海洋プラスチック汚染問題は、メディアでも注目されており、カメが漁網に絡まる画像やクジラの胃袋から大量のプラごみが見つかる等、世界的な環境問題として認識されています。G20の「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」では、2050年までに追加的なプラスチック汚染をゼロとすることが共有され、SDGs目標14“海の豊かさを守る”の指標としても浮遊プラスチックゴミの密度が含まれます。

マイクロプラスチックとマクロプラスチック

国内では、5mmより⼩さいものをマイクロプラスチック、それよりも⼤きいものをマクロプラスチックと呼ばれていることが多いです。プラスチックごみは紫外線等の外力により劣化し、マイクロサイズになり、一度海洋へ排出されてしまうと、その大きさから回収する事は困難となります。プラスチックはPCBsやDDT等の有害化学物質を吸着し、広域に拡散し、生物が摂取することによる生態系の影響が懸念されており、世界中の研究者等がその実態や対応策について検討されています。

日本から排出されるプラスチック排出量

海域へ排出される海洋ごみの多くは陸域から河川経由で輸送される事が知られています。そのため、陸域でのプラごみ削減対策を実施することが必要です。日本からは、東京・大阪・名古屋・福岡等の都市部から、多くのプラスチックごみが海域へ排出されていることが示されております。


■High-Resolution Mapping of Japanese Microplastic and Macroplastic Emissions from the Land into the Sea(Nihei et al.)
https://www.mdpi.com/2073-4441/12/4/951


また、一級河川別で集計した場合、流域面積が大きい河川や人口密度が高い都市部を流れる河川にて、プラスチックごみの排出量が多い傾向が見られます。


■全国一級水系から海へ排出される総プラスチック量の算定(吉田ほか)
https://www.yachiyo-eng.co.jp/papers/2020_128_yoshida.pdf

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図1.一級水系毎に年間排出される総プラスチック量(各水系の中央値を記載)
出典:土木学会, 吉田ほか, 2020

プラスチック排出量の実態把握

当社では,プラスチック排出量の実態把握のために、学校法人東京理科大学理工学部土木工学科・二瓶泰雄教授と片岡智哉助教(現 愛媛大学准教授)との研究成果※を適用した、川ごみ輸送量計測ソフトウェアの「RIAD(River Image Analysis for Debris transport)」を製品化し、令和3年7月7日より、販売を開始しております。IPカメラ等により河川水表面を撮影し、得られた動画データを用いた画像解析により、人工系・自然系ごみを抽出し、その輸送量を算定します。従来は、直接採取にて、河川ごみを採取しておりましたが、課題であった安全性や確実性を解消できるシステムです。清掃活動等のごみ削減対策や河川・海洋管理費を把握するためにも、本システムは有効です。

※T. Kataoka and Y. Nihei: Quantification of floating riverine macro-debris transport using an image processing approach, Scientific Reports, Vol.10, No.1, pp.1-11, 2020.

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図2.RIAD(River Image Analysis for Debris transport)

プラスチックごみの発生源について

陸から河川に流れ込むごみのメカニズムの解析例として、河川流域におけるごみの分類としては、「投棄・ポイ捨て系」「漏洩系」に大別されております。


■【増え続ける海洋ごみ】海ごみの7〜8割は街由来。その流出原因を探る調査から分かったモラルでは解決できない社会課題(日本財団ジャーナル)
https://www.nippon-foundation.or.jp/journal/2020/46494


その原因としては、生活が苦しく優良指定ごみ袋を買えずに川に捨ててしまったり、自治体が決めたごみの回収時間と生活サイクルが合わずに収集場所に放置し、それをカラスが突いて散乱させてしまったりするといった、社会的な問題や産業構造等が原因である事が示されています。ごみが適切に管理されていない状況は、環境面や衛生面にも影響を及ぼします。

日本から排出されるプラスチック排出量CDPのテーマとしての「プラスチック」

現在は気候変動・水・森林をテーマとしているCDPが、2024年頃から「海洋」にもテーマを拡げ、水産資源やプラスチック汚染など海洋に関する全領域をカバーする予定で、農業・水産業セクターを回答企業に追加する予定と公表されました。


■「CDP生物多様性」始まる 22年から統合的な質問書に(日経ESG)
https://project.nikkeibp.co.jp/ESG/atcl/column/00005/050600075/


ESG投資の関心の高まりから、多数の企業が対応している中で、質問の内容については、バイオプラスチック素材の使用、資源循環への取組、清掃活動への参加等、幅広く想定されます。

最後に

プラスチック問題において、重要な視点を以下に示します。

  • 都市部からプラスチックの排出量が多い
  • 河川に流れ込むごみの原因としては、「社会的な問題」や「産業構造」等がある
  • CDPのテーマとしても2024年頃から「プラスチック」が対象となる

文責:水リスクラボ

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