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太田川ダム濁水対策検討業務
実績

太田川のうるおいと清流を守る

太田川ダム濁水対策検討業務

# 官公庁のお客様 # 国内 # 環境・エネルギー # 環境アセス・保全 # 国土保全 # ダム

アユと清流を守るために!

静岡県が管理する太田川ダムは、静岡県周智郡森町の大日山に源を発する二級河川太田川に建設された重力式コンクリートダムで、遠州の小京都「森町」に位置します。表に示すように規模は大きくありませんが、洪水調節・流水の正常な機能の維持・水道用水供給を目的とした多目的ダムです。下流河川ではアユ釣りやキャンプ、水遊びなどの多くの利用者で賑わっています。
しかし、2009年7月のダム運用開始直後より濁水長期化問が問題となり、下流河川のアユ生育やレジャー利用など河川環境への影響が懸念されるようになりました。そこで、県ではさまざまな濁水軽減対策の検討に取組み、2016年からは選択取水設備運用による早期濁水放流を実施しています。早期濁水放流とは、雨により上流から濁水が流入する出水時に、貯水池内の高濁度層から積極的に濁質を放流して早期に排除し、出水後は清澄水を取水放流する方策です。
本業務では、ダム取水放流水質を検討するために鉛直二次元水質予測モデルを構築し、早期濁水放流運用実績について濁水放流日数の低減効果を確認し、選択取水設備運用の課題も抽出しました。また、ダム地点での気象の特徴や貯水池水質の季節別特徴から濁水長期化の要因を把握し、その特徴を踏まえた選択取水運用案策定のための基礎資料を作成しました。

  • ダム諸元の表と下流河川

  • ダム地点の24時間積算雨量

環境保全のための取り組み

一般的に、ダムや湖沼などの貯水池では、季節により鉛直方向の水温分布が変化する「成層期」と、対流により混合される「循環期」が生じます。そのため、成層期に流入した濁水は水温の低い底層へ沈み込み、循環期には全層循環により貯水池内に拡散する傾向が見られます。本業務において貯水池内水質の挙動を分析した結果、次のような特徴を把握しました。

    ・濁水に含まれる土砂の粒子が微細で底層まで沈みにくい。

    ・夏季の成層期に、ある一定の水温帯に高濁度層が形成される。

    ・ダム地点では、成層期に移行する前の春季に出水の発生頻度が高く、温かい濁水が流入して表層に滞留する。

また、常用洪水吐きはゲートレスで自然調節の洪水調節方式であるため、常時満水位に達した貯水池の中層部に潜り込んだ流入濁水が表層へ誘導され、常用洪水吐きから長期に渡って放流される現象についても、予測計算と現地観測により把握しました。これらの特徴から、出水時から選択取水設備の放流能力を最大限活用して洪水吐きからの放流量を抑制し、清澄水を確保しやすい運用案を提案しました。
これらの運用案に対する水質予測計算により、濁水対策評価指標を超える日数を予測した結果、降雨による出水回数が多かった2018年においても約35%の濁水放流日数低減効果が得られました。
このように、既存のダムの機能を最大限活かしながらより高い効果を得ることで、河川を含む環境を保全するための工夫に取り組んでいます。



※2019年11月時点での情報です。

プロジェクト詳細

    業務名 :太田川ダム濁水対策検討業務
    発注者名:静岡県袋井土木事務所