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八千代エンジニヤリングが毎月お届けするちょっとイイ話

エジプトのデルタ地帯より 開発途上国の水道事情

  • 海外事業

普段なにげなく使っている水ですが、きれいな水を蛇口へ導くためにはいろいろな苦労があります。今月は、エジプトの事例を通して、我々の生活に欠かすことのできない「水」について考えてみたいと思います。

開発途上国の水道事情

エジプトであらためて想う「水」

Written by OOMORI Mitsuhito 大森光仁

生活、そして生きるために必要な水。飲み水や食事、洗濯やお風呂など、毎日の生活に欠かせない水ですが、みなさんはどのように使っていますか?

八千代エンジニヤリングでは現在、エジプトで水道サービス向上のためのプロジェクトを実施しています。エジプトと言えば「砂漠に浮かぶピラミッド」というイメージがありますが、私たちがプロジェクトを実施しているデルタ地帯では、ナイル川の恩恵を受ける溜め水が豊富にあります。ですから水田や畑、緑地もいたるところで見ることができます。

今回はエジプトの水道事情を日本と比較しながら、水道の「水」について考えてみましょう。

いつでも蛇口から水の出るありがたさ

日本ではほぼ全国で水道が整備されており、蛇口をひねればいつでも透明な水が勢いよく出てきます。断水がほとんど発生しない今日の日本では、災害時にライフラインが寸断された時ぐらいにしか、水道のありがたさを実感できないのが実情ではないでしょうか?

ここエジプトでは、いまだに水道が引かれていない地区が数多くあります。また、水道が引かれているところであっても、蛇口から濁水が出る、断水が頻繁に起こる、時間帯により水圧が低い、夏場は水需要が増えすぎるために一部地域で水道が使用できなくなるなど、水道の根幹にかかわる事態が頻繁に発生しています。そう、エジプトではライフラインの一つである水道が、日々、脅かされているのです。


おいしい水へのこだわり

最近、日本ではミネラルウォーターの販売量が急速に拡大しています。この背景には、おいしさと安全性を求める時代の風潮があるものと思われます。

そして、開発途上国であるエジプトでも同じ傾向が見られます。ここ数年、エジプトの富裕層ではミネラルウォーターを飲むことが一つのステータスになっているのです。しかし、ミネラルウォーターに手が出ない一般市民は、依然として水道水に頼らざるを得ません。しかも私たちが行ったアンケートによると、市民から最も多かった苦情は、水道水の安全性についてでした。

このような背景があったためか、数ヶ月前にはついに、おいしい水と十分な水の供給、そして水道料金の値下げを求める大規模なデモまでが発生しました。


環境意識

最近の日本では、鮎が川に戻ってきたニュースが流れるなど、ずいぶんと河川がきれいになってきています。これは、市民の環境意識の高まり、そして行政や民間企業の不断の努力による賜物と言えるでしょう。

エジプトの水道水源の多くはナイル川及びその支流となる運河です。しかし、都市部では他の開発途上国と同様に、その水源となる川や運河沿いは、汚染源となるビニールやペットボトル、生ごみといった様々なゴミに覆われており、川や運河は一層その汚染度を増しています。こういった水源からつくる水ですので、水の処理には相当な処理の手間とお金が必要となります。

実は、ひと昔前の日本の川もエジプトと同じような状況でした。しかし、公害という大きな過ちをきっかけに市民の環境意識は急速に高まり、ゴミのポイ捨てや不法投棄を禁止するなどしていった結果、日本の川はきれいになりました。

ようやくエジプトでも一部の市民の間で環境意識が高まってきているとはいえ、今後、「自分の水道水源は自分で汚さない」といった市民レベルでの環境意識をもっと幅広く浸透させていく必要があります。


水道料金の徴収と水道公社の赤字体質

みなさんのご家庭には水道メータがありますよね。毎月の水道料金はそれをもとにして請求されるわけですが、基本的にはエジプトでも同じようなシステムが適用されています。

ところが、なかには水道メータが設置されていない家もあり、このような家庭ではいくら水を使用しても料金が変わらない定額制になっています。すると、これを悪用してわざと水道メータを壊し、定額制にするような悪質な市民もいるそうです。水はナイル川に豊富にあるのだから水道料金は安くあるべき、という考え方がでてくるのも、ある意味仕方のないことかも知れません。

このような不適切な水道料金徴収システムは、水道公社の慢性的な赤字体質を招いています。そしてお金のない水道公社は十分なサービスを行うことができない、だから市民に不満が蓄積する……。

こうした「負のスパイラル」は、現在のエジプト水道事業が抱えている大きな問題です。


保険料が高いと損?

今月は、生活の身近な水道について、日本とエジプトを比べてみましたが、現在、八千代エンジニヤリングはエジプトの水道公社と協力して、こうした問題の解決に向けて積極的に取り組んでいます。今ある施設をいかに効率的・効果的に使うか、ということをメインテーマにしています。


yecの取り組み
(1)漏水の検知

水道管の破損による漏水は町中のあちらこちらで見ることができます。漏水は、敷設された管の老朽化が主な原因ですが、浄水場から供給される水圧をうまく調節できていないことも原因の一つとなっています。

漏水した水は、水道公社の料金収入にはなりません。そこで、現地の水道公社の赤字解消のため、私たちは地下で漏水した水道管を地上から見つける技術の指導を行っています。

(2)水道施設の効率的な利用

エジプトの水道施設は古いものが多く、第二次世界大戦前に建設された施設がそのままの形で稼動していることもあります。また、これはどの施設についても共通していえることですが、エンジニアたちの間では機械の運転や維持管理記録を残す習慣がそもそも無く、施設は現場技術者の勘に頼って運転されています。したがって、自分たちが一体どれだけの水を町に供給しているのかさえも把握していません。

そこで私たちは、必要な記録の収集・分析を行い、それを活かした効率的な浄水施設の運転制御の指導を行っています。

(3)市民の環境意識

川や運河をきれいにしておいしい水をつくるためには、市民の環境意識の向上も必須条件です。そこで私たちは、主に小中学生や主婦をターゲットにして、節水や環境意識の向上のためのキャンペーン活動を行っています。


数年後には、いつでも豊富な水が出る水道となるように、そして、水道水が安全でおいしい水となっていることを夢見て、私たちは日々、砂漠の国エジプトで活動を展開しています。

以上、エジプト・シャルキーヤ県より。


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