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当社は、持続可能な社会の実現に向けて「サステナビリティ経営」を推進しています。サステナビリティ座談会では、「サステナブルな地域づくり」をテーマに、地方創生や地域振興に取り組まれる公益財団法人日本交通公社理事で立命館大学ビジネススクール客員教授の山田雄一さまをお迎えし、地域社会における課題や解決策、今後の展望についてお話しました。
※2025年6月時点
当社は総合建設コンサルタントとして、これまでさまざまな社会インフラの整備に取り組んできました。2008年に人口のピークを迎え、人口減少社会に転じた日本において、社会インフラの整備だけではなく、社会課題を解決することそのものが当社の役割だと認識し、社会課題解決をしながら当社も持続的に成長する「サステナビリティ経営」を推進しています。
人口減少により地域社会ではさまざまな課題に直面していますが、日本の約7割のGDPを担う地方が豊かになることが日本に活力を与えると考え、環境保全や循環型社会の構築、また地方創生といったコミュニティ事業にも注力しています。
現在、宇都宮市では大谷石採石場跡地の地下空間に溜まった冷涼な貯留水を熱エネルギー源として活用した夏いちご栽培、日光市では地域の郷土センターの指定管理者を担うなど、当社主体の事業やサービスを展開しています。このように、これまで携わってきた自治体などの発注者支援に加えて、自らもプレイヤーになって、豊かな地域づくりに引き続き貢献していきたいと考えています。
現在、日光市でmekke日光郷土センター等の指定管理者として、そこを拠点とした地場産業の活性化や文化交流の促進などを担当しています。また、2025年4月には、農業分野における地域資源の利活用や持続可能な営農モデルの確立などを目指した「株式会社Chika-BerryFarm」を設立しました。その中で、最も感じたのは「人材」の重要性です。mekke日光郷土センターでは、当社社員が日光に移住し、ノウハウやサービスを地域に提供しています。
その継続により、地域との信頼関係が構築でき、人や情報が集まりやすくなります。地域の目線で地域課題に取り組むことはもちろんですが、事業を通して地域の雇用を安定的に確保することも地域づくりの一つの形なのではないかと思います。
私が所属する社会計画部では、地域づくりに関する計画の検討や、それに伴う地域関係者の意見交換などのコーディネートをしていますが、近年、住民参加のあり方が行政主導から地域主体へと移行していると感じます。
行政からの働きかけに応じて意見や要望を出すのではなく、地域の住民や事業者の方々が「自分たちの地域をどうしていきたいか」、「自分たちのビジネスを地域にどう活かすか」と地域課題を自分事化して取り組む意識が高まっていると思います。その中で私たちはコンサルタントとして、行政と地域関係者の間に入り、それぞれの意見や考え、価値観などを翻訳し、裏付けるデータを提示したりしながら、多様な主体が共有できる「地域づくりの方向性」として示していくことが役割なのではないかと思っています。
サステナビリティは世界中で叫ばれていますが、欧州では環境問題、アジアでは持続的な発展という考え方が主流で、実は国や地域によって求められる視点が異なります。日本はこれまで、経済活動の再生や延命が重視され、実は変えなければならなかった社会システムを放置してきてしまいました。世界のどこよりも急速に人口減少が進む中で、日本のサステナビリティに対する課題解決は、まさにこれからだと思います。
そうした状況の中で地方に目を向けると、若い世代が自発的・選択的に地方に戻り、地域再生の担い手になる動きも加速しています。そうした方たちが、地域でプレイヤーとして活躍できる社会システムや地域づくりが重要なのだと思います。彼らの想いをくんで活用することが、地方再生の原動力になるのではないでしょうか。そのバトンをつなぐのが、私たちの役割だと思います。
私は現在、小豆島の「20年先の小豆島をつくるプロジェクト」に携わっています。小豆島はオーバーツーリズムや生産年齢人口の減少など、将来の日本が抱える課題が20年早く訪れているといわれていますが、地域住民と企業が共創し、観光・教育・環境・交通などの課題に取り組み、持続可能な島づくりを進めています。小豆島にはIターンやUターンによる若い世代も多く、「小豆島の美しい風景を守っていきたい」という熱い想いをもった方も少なくありません。また彼らの多くは、東京などの都市部で習得したビジネスの経験や知見があります。当社がそうした想いをくみながら、彼らの経験や知見を引き出して貢献することも、サステナブルな地域づくりなのだと思います。
「美しい風景」という話がありましたが、私は大学では景観論を学び、まちの風景が好きでこの業界に入りました。
以前、神奈川県秦野市で、地元のお茶農家と連携して6次産業化※1によりお土産をつくる業務に携わりました。商品開発にあたり現地で茶畑の説明を受けたり生産者のお茶への思いを聞いたりする中で、自分にとっても地域への思い入れが深くなっていき、完成した商品を手に取ると、自然と秦野のお茶農家の風景が思い起こされました。そこに暮らしがあるからまちの風景があり、また産業があるからその風景があって、そこから生み出される商品は、そのまちの風景を守ることにもつながるのだと、地域づくりの大事なポイントに触れたように思います。こういったことをいかにメッセージ性やストーリー性として表出できるか、離れていてもその地域の風景を思い起こさせるような仕掛けが、地域ブランディングにつながるのだと思います。
おっしゃるとおり、「風景」は地域づくりの重要なキーワードです。ただ、万人が美しいという風景ではなく、地域ならではの風景をどうつくるかがポイントです。やはり、風景は人の営みがつくるものだと私も感じます。その地域の人々が、楽しんで活用するものでないと、本当のまちの風景は残していけないのではないでしょうか。
今まさに、地方は次世代に何を残すかの選択を迫られているのだと思います。何に投資するのか、何を残すべきなのか、本当に必要な社会インフラやまちの魅力を向上させる機能を、地域住民自らが考えていかなければなりません。まちの価値や魅力を向上していくためにどうチューニングするか、また自分たちの暮らしのために必要な投資をしっかりと見極めて、そしてそれこそ楽しく、安心して暮らせる地域づくりに取り組む必要があります。
日本の地方自治体の多くは赤字というのが現実で、国がそれを補填しています。欧州では自分たちの税収で自治するため、財源の使い方にはシビアです。日本でも自分たちで賢く、地域をどうつくっていくかということを考えていかなければなりません。
欧米では、まず試行して結果が良ければ、それを制度化するという文化が根付いています。スピード感を持って、社会の変化に対応できるアジャイル型の制度設計です。日本も柔軟にルールや制度は変えていかなければいけない時代です。
サステナブルな地域づくりに向けて、当社と地域との関わり方も持続的でありたいところですが、行政の単年度業務の仕組みの中で縁が切れてしまい、歯がゆく感じることも少なくありません。それでも、何年か継続したプロジェクトや業務では、地域との信頼関係が生まれ、その地域に大切なものを理解して、住民や行政の方と一緒に育っている実感を持つこともできます。また、建設コンサルタントだからこそ受け続けられるプロジェクトや業務もあり、もし行政担当者が交代されても、私たちが知見や経験を伝承できますので、そうした役割は期待されていると感じます。
また、コンサルタント業では満足できずに、退職して地方で起業した同僚もいます。そういうチャレンジをバックアップする中で、当社が深く関わっていける地域も増やしていけるのではないかと思います。
例えば、御社の若手社員が年に数回でも地域に足を運び、地域の方と交流することで、信頼関係やコミュニティが形成されます。それを継続することで、地域の方にも地域づくりに対する意識が広がり、その継続で地域が育っていきます。そうした視点で地域とともに成長することも必要なのではないかと思います。御社には、持続的に地域の方々との交流をしていただくことを期待します。
当社は、これまでに指定管理者やPFI※2事業により、事業者としても地域に携わってきました。また、新しい事業を推進するためには、オープンイノベーションによる「共創」が、今後ますます重要になります。2025年5月には、社会的・環境的にポジティブなインパクトのある事業への投資・事業支援の推進として「GIIN※3」に加盟しました。
今回の座談会を通して、サステナブルな地域づくりは「しごと、ひと、まち」なのだと、改めて思いました。仕事があるから人が集まり、そこにまちができます。そのためには地域の課題と資源を見極め、コーディネートしてビジネスとして昇華させることが必要です。経済的価値だけではなく、そこから、美しい風景や地域固有の財産が生まれ、それらを残すことができます。
さまざまなアプローチからサステナブルな地域づくりに貢献し、社会課題解決と持続可能な社会の実現を引き続き推進してまいります。
※1 6次産業化:1次産業としての農林漁業と、2次産業としての製造業、3次産業としての小売業などの事業との総合的かつ一体的な推進を図り、地域資源を活用した新たな付加価値を生み出す取り組み ※2 PFI(Private Finance Initiative):公共施設などの建設、維持管理、運営などを民間の資金、経営能力および技術的能力を活用して行う手法 ※3 GIIN(Global Impact Investing Network):世界中の400以上の機関投資家が加入しており、インパクト投資に関する知見の共有やネットワーク構築を行っている非営利団体
農業分野における地域資源利活用に関する技術の開発や持続可能な営農モデルの確立などを通じた地域社会への貢献を目指し、2025年4月に新会社「株式会社Chika-Berry Farm」を設立、地域資源である地下水を最大限に活用し、酷暑下でも安定した夏いちごの生産に取り組んでいます。こうした地域資源を活用した複合型プロジェクトにより、施設園芸の持続可能性向上や新たな特産品の育成など、次世代農業の可能性を追求するとともに、地域雇用の創出にも貢献することを目指しています。今後はさらに、農業分野にとどまらず幅広い事業分野において、地域との共創により、地域社会の課題解決と活性化に取り組んでいきます。
ーESGの取り組みー