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八千代エンジニヤリングが毎月お届けするちょっとイイ話

地球を考える 恐竜から地質の世界へ

  • 環境

人類の存亡に関わる重要な問題でもある、地球の環境問題。私たちコンサルタントも、日夜、地球を考え、環境を考え、人類とその暮らしを考えています。今月は、あるエンジニアが地質の世界に足を踏み入れたきっかけを紹介し、その専門的な視点から地球について考えてみます。

恐竜から地質の世界へ

マイナーな地学にハマる

Written by OGAWA Kunihiko 小川邦彦

いきなりですが、皆さん「地学」と聞いてどんな印象を受けますか? 物理などと並んで理科の一科目に挙げられますが、専攻している人は少ないですね。正直、地味な存在です。というか、学校の授業自体、ある方が珍しいと思います。

そんなマイナーな科目ですが、地学は、地球の生い立ちを学ぶことのできる教科であり、私はハマりました。その結果、私は地学を専攻し、いま地質調査を生業としています。

昨今、日本の学生の理数系離れが叫ばれておりますが、私がハマった「地学」という科目に少しでも皆さんに興味を持ってもらいたいと思い、今回書かせていただきました。


きっかけは恐竜

私が地学にハマったきっかけは「恐竜」でした。

もともと小さい頃から、恐竜には興味がありました。巨大な体と格好良さを兼ね備え、人類が誕生する遙か以前、大いに繁栄していた恐竜。

図鑑などでもよく見ましたが、一番はやはり「ドラえもん」でしょうか。作者の藤子・F・不二雄(当時:藤子不二雄)さんもお好きだったようで、タイムマシンに絡めてよく登場していたのを憶えています。

成長とともに、だんだん興味は薄れていきました。が、高校の頃、ある番組がきっかけで再び覚醒させられました。NHKで今から約20年前に放送された「地球大紀行」という番組です。


恐竜は隕石衝突によって滅びた?

「地球大紀行」は、当時はまだ珍しかったコンピュータグラフィックスを多く用いて、地球の生い立ちをわかりやすくまとめた番組です。

月1回のペースで1年間12回放送されましたが、そのなかに、恐竜が絶滅した様子を描いた回がありました。それは「恐竜は隕石の衝突で突然絶滅した!」という、非常にインパクトのあるものでした。おおざっぱに要約した内容は以下のとおりです。

今から6500万年前、直径10kmほどの隕石が地球に衝突した。衝突によって巻き上げられた塵やガスが地球上全体に蔓延し、太陽光線が遮られて気温が低下した。その結果、当時栄華を誇っていた恐竜(翼竜、海竜等も)が絶滅した。

この隕石衝突説、根拠としては、地球深部や隕石に存在する「イリジウム」なる元素を大量に含む黒色の層が、恐竜絶滅時期の地層に世界的広範囲に分布している、という点が挙げられます。

イリジウムの層が世界的広範囲に分布しているということは、地球全体を巻き込む、なにか非常に巨大な爆発があったに違いない、というわけです。

ちなみに、隕石が衝突した場所は現在の中米ユカタン半島付近といわれ、「チチュルブクレーター」と名付けられています。


地球上であれだけ繁栄していた恐竜が、隕石衝突という、宇宙的かつ壮大な規模で突然絶滅した ― これは私にとって大きな衝撃でした。

当時、隕石衝突説はそのインパクトの強さから大きな話題となり、恐竜が絶滅した原因の大本命だったと記憶しています。
(余談ですが、前に触れましたドラえもんでも、当時作成された劇場用作品「のび太と竜の騎士」は、この隕石衝突説に基づいて制作されており、ためになります。)

しかしながら、この隕石衝突説はいくつか矛盾点も指摘できます。

例えば、なぜ恐竜など特定の種類が絶滅し、トカゲや蛇などのは虫類は生き残ることができたのか? といった点です。

しかし残念ながら、こうした代表的な説でさえ、恐竜絶滅の原因を裏付ける決定打とはなっていないようです。


隕石衝突説の他、恐竜絶滅の原因はどんなものが考えられる?

さて、ここで、隕石衝突説以外の恐竜絶滅の原因についても、いくつかの説を挙げてみます。

  • 火山の噴火で気温が下がったとする「火山噴火(マントルプリューム)説」
  • 草食恐竜が主食としていた裸子植物に取って代わって被子植物が繁栄してきたことで絶滅したという「植物変化説」
  • ほ乳類の祖先が恐竜の卵を食べ尽くしたという説
  • 伝染病説、便秘によって絶滅した説
    ・・・などなど

このうち、火山噴火説と植物変化説は、今でも有力な説として挙げられます。特に、インドのデカン高原に大規模な溶岩噴出の跡があることやイリジウム堆積の説明がつけられることから、火山噴火説が今のところ最も注目されている感があります。ただし、特定の種類だけ絶滅していることの説明がつかないところは隕石衝突説と同様です。


以上のように、恐竜絶滅の原因はいずれの説もまだ不確定な感じです。特定するには、それこそ今後タイムマシンが発明されない限り、不可能かもしれません。

個人的には「隕石衝突説」を推したいところですが。


地球の生い立ちは、フィールドで過去の痕跡をたどるべし!

地球の生い立ちのなかで、恐竜絶滅などといった地球上の出来事は、その痕跡を地上に残しています。

たとえば「化石」。化石は、過去に存在していた生物の骨、あるいはその足跡なども含まれます。その形から生物の種類を特定し、化石のある地層が堆積した年代、環境を想定します。

また、火山の溶岩や灰(固まって凝灰岩という岩石になる)も、火山噴火の歴史をさぐるうえで重要な証拠となります。

先ほど、イリジウムの層の分布を隕石衝突説の根拠と述べましたが、これも、過去の隕石衝突、もしくは大規模火山噴火の痕跡といえます。

こうした痕跡は、地中を掘り起こすか、崖や河床にみられる岩肌(露頭といいます)で直接みることができます。しかし、地殻変動が激しい日本のような地域では、地質構造が複雑で、痕跡をたどるのは容易ではありません。

痕跡をたどるには、調査・研究を積み重ね、地質構造を紐解いていくことが必要です。そしてその課程で、実際に外(フィールド)へ出て、自然の中で直接確認することも重要です。

隕石衝突説による恐竜絶滅という説はインパクトがあって刺激的ですが、地学を学んでいくうち、こうした説に行き着くまでには、地道な調査・研究と、フィールドの確認が欠かせないことを痛感しました。

自然の中、自分自身で過去の出来事の痕跡を見つけ、答えを導いていく課程は、大変ですが何ともやりがいのあることです。


みなさん、もっと「地球」を学びましょう!

私が恐竜絶滅の隕石衝突説から進んでいった「地学」、その魅力は、身近にある自然現象(地震や火山、気象や天文など)が対象であることに尽きます。

地震や火山噴火は、いつ、どこで、どのように起こるものなのか。我々の生活に大きな損害を与えかねない事象なだけに、充分な認識・教育が必要です。

特に日本は、地震や火山噴火など自然災害の多い国であることは言うまでもありません。新潟県中越地震や台風が立て続けに襲った2004年は、その年の漢字として「災」が選ばれたほどです。

それだけに、自然災害に対する防災意識は高いものと思いますが、これと相反するように、自然を学ぶ「地学」が教育の現場で今でも虐げられているように思えます。

自然を学び、親しむ体制を整えることで、人々の防災意識を促進することが必要ではないかと思います。


私は、恐竜を通して地球に対する興味を覚え、その奥深さを今も痛感しているところです。

私が今の地質調査の仕事に就いて10年以上になります。仕事の内容は「土木地質」といわれるもので、平たく言えば、ダムやトンネルといった構造物が建設できる地盤か否か調査し、判断することにあります。

今の仕事で、直接、恐竜につながるような場面はありませんが、自然の過去の出来事を想わせる痕跡は、身近なところでも多々あることに気づきます。


たとえば、多くの人々が生活の場とし、様々なビルが林立する平地。なぜ平らなのか?それは、かつてその場所にあった地面(水面下)の起伏を平らにしてしまう「事件」があったからです。具体的に言えば、海沿いや川沿いの平野。これらは、過去に大雨や津波など、増水を繰り返すことで均され、平たくなったのです。つまり、平地は自然災害を過去に被った「痕跡」といえます。


一見、なんでもないような場所にも、自然の過去の出来事はしっかり残されているのです。身近なところでも、注意深く観察し学んでいくことで、われわれの住む地球の過去の出来事や、今後起こりうる自然災害をも知ることができるのです。


みなさん、もっと「地球」を学びましょう!


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