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八千代エンジニヤリングが毎月お届けするちょっとイイ話

バーチャルウォーターだけじゃない! あふれる窒素をどうするか??

  • 河川・水工

地下水は良好な水質と安定した水温を保つ水資源です。そんな地下水が豊富な日本では、それ自体があまりに身近すぎるため、そのありがたみに気づいていないことも多いように思えます。今月は、そんな地下水が危機に瀕している現実に、コンサルタントの視点で斬りこんでみます。

~あふれる窒素をどうするか?~

水の世紀に...

Written by Yamamoto Akira 山本晃

バーチャルウォーターとは

みなさん、バーチャルウォーター(※)って聞いたことありますか?

食料輸入大国日本は、食糧という形で、実は間接的に大量の水も輸入しています。しかし環境バランスの視点で見たとき、 この大量の水輸入以上に問題となるのは、その水が含む様々な物質もまた、過剰かつ急激に日本へ入ってきていることです。 すでに一部では自然環境が吸収できる量を超え、環境および人間生活に影響を与えています。今回はそうした過剰物質のひとつである窒素について、 地下水汚染の問題とあわせてご紹介します。

窒素による地下水汚染の現状

環境省では全国の市区町村で地下水汚染の実態を調査しています。 このうち約3割の市町村で何らかの項目が環境基準を超えており、地下水汚染が意外と身近に迫っていることが感じ取られます。 では、実際のところどのような項目が環境基準を超えているのでしょうか? それは例えば、主に電子産業やクリーニング業で油を取り除くために多用されてきた「揮発性有機化合物」や、 製造業や化学工業で原材料や添加剤として利用されてきた「重金属」などが挙げられます。しかしこれらを超えて、最も多いのが「硝酸性窒素」です。

窒素による地下水汚染の現状

硝酸性窒素とは

硝酸性窒素とは硝酸イオンの形をした窒素のことで水に溶けやすいのが特徴です。 窒素は植物にとっては栄養なのですが、人間はあまり多量に摂りすぎると悪影響を受けてしまいます。 特に乳幼児や老人が多量に取ると「メトヘモグロビン血症」と呼ばれる酸素欠乏症に陥り死に至ることもあります。 この硝酸性窒素は、例えば、農作地に作物が吸収できる以上の肥料を与えたり、家畜のふん尿を無分別かつ不適切な状態でばらまいたり、 あるいは下水道が整備されていない環境において生活廃水を垂れ流したりすることで、地下水に溶け込み、地下水を汚染していきます。

あふれる日本の窒素

ところで揮発性有機化合物や重金属による地下水汚染は、汚染の原因となる場所が明確で数が少ないことから、防止するのは比較的簡単です。 しかし硝酸性窒素は、原因となる農作地や家畜場が全国至る所にあることから、その防止対策にはそれぞれの土地管理者の理解と協力、 ならびに関係機関の支援が不可欠です。 したがって対策はなかなか思うように進まないのが現状です。 しかしこれら以上に考えなくてはならないのは、日本全体でみた窒素収支の問題です。 食糧自給率が30%台と低い日本は、大量の食料とともに、多量の窒素を間接的な形で輸入してしまっています。 現在、こうして日本にやって来た窒素のほとんどは農作地を含む環境が吸収していますが、このまま放っておくと、 日本はいずれ窒素であふれかえった国となってしまいます。

日本の窒素支出グラフ

どうする?日本の窒素

では、私たちはこうした歪んだ自然環境を正すためにどうしたらよいのでしょう?

最近、肥料を極力少なくして農作物を生産するエコ農業や、家畜排せつ物をエネルギーとして利用するバイオマスシステムの整備が、産学官を問わず、 少しずつ進められています。世界中で熾烈な資源争奪戦が繰り広げられる中、各国はいつまでも輸入に頼ることは難しいと考え始めています。 環境に配慮しながら自国内の資源を有効に利用していく必要に迫られている状況からすれば、 こうした新しいアグリシステムに注力することは至極当然の流れといえます。

したがって日本への窒素流入量を減らし、総量を減らしていくためには、 輸入に依存しきっている食糧をなるべく国産のものに置きかえられるように、農業のあり方を根本から見直すことが重要です。 そして、窒素リサイクルのあり方を見直し、余分な窒素のガス化(脱窒)を促進させるといった抜本的な方策が必要です。

建設コンサルタントとしてできること

私たち建設コンサルタントは価値(方策)を生み出す知的産業です。 社会の成熟化が進むにつれ、社会の求める価値も一段と多様化しています。 これからのエンジニアは従来の土木的な方策を生みだすだけでなく、幅広い分野において行政や地域住民等の意向を踏まえながら、 現実的な方策を示してゆかなければなりません。

残すべきもの

21世紀は水の世紀と呼ばれています。地下水は本来良好な水質と安定した水温を保ち、水資源として非常に有用なものです。 しかし、地下水の豊富な日本では、それ自体があまりに身近すぎるため、そのありがたみに気づいていないことも多いように思えます。 あふれる窒素に対処しつつ、地下からの恵みである清らかな地下水を出来る限り後世に残したいものです。

日本の豊かな地下水資源写真

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