環境負荷を最小限とすることを目指したエコダム
Menu
環境負荷を最小限とすることを目指したエコダム
高知県宿毛市山奈町一生原地区は、棚田の続く昔ながらの里山風景を残す土地でした。ダム建設予定地直下には、水神が宿っているという地元の信仰がある「とどろの滝」や「雨乞いの祠」があり、樹木に覆われた自然豊かな環境で、シイ・カシなどの天然生林のほか、高知県の県鳥、また国内希少野生動植物種(絶滅危惧ⅠB類)に指定されているヤイロチョウの生息が確認されています。
横瀬川ダムは「環境負荷を最小限とすることを目指したエコダム」として高知県宿毛市山奈町山田地先に新規建設、2020年(令和2年)6月に運用を開始しました。宿毛市平田町黒川に建設された中筋川ダム(平成10年竣工)とともに、高知県西南部における河川総合開発の一環となるものです。堤高72.1m、堤頂長188.5m、堤体積170,000㎥の重力式コンクリートダムであり、以下を目的としています。
① 洪水調節
横瀬川ダム地点の計画高水流量210㎥/sのうち、140㎥/sの洪水調節を行い、中筋川沿川地域の洪水被害を軽減する。
② 流水の正常な機能の維持
ダム地点下流の横瀬川、中筋川の既得用水の補給を行うなど、流水の正常な機能の維持と増進を図る。
③ 水道用水の供給
四万十市の水道用水の取水(最大800㎥/日)を確保する。
非常用洪水吐きの様子(試験湛水サーチャージ水位到達時)
横瀬川ダムは、地域と共存する「ダム」とするため、様々な新しい取り組みを行い設計されています。
ダム減勢工方式に世界初となる「側水路減勢方式」の採用
ダムからの流水を直接下流河川に流すと、勢いが強く周辺地山や川が洗堀される恐れがあります。そのため、減勢工を設けて流水の勢いを抑え下流河川に流します。重力式コンクリートダムの減勢工は、ダム直下流に数十メートルにわたり配置されることが一般的です。ダム直下流の「雨乞いの祠」や「とどろの滝」を保全し、自然環境の改変区域を最小限とするため、水平水叩き式減勢工の代替案として、ダム堤体下流面に配置した側水路と堤趾導流壁を組み合わせた「側水路減勢方式」を世界で初めて採用しました。基本形状について、側水路は常用洪水吐き吐口標高で堤体下流面に左右縦断配置し、堤趾導流壁は常用洪水吐き吐口標高以下でダム堤趾部のフーチング上に連続配置しました。なお、この減勢方式の形状寸法は、ダム水理模型実験により検討を行い、詳細・最終形を定めました。
「VRを用いた視点場設定方法」の特許取得
ダム本体実施設計時においてVR(Virtual Reality)を試用し、エレベータ室と水位計室及びプラムライン室のシンメトリー、堤頂部などに関して景観検討を実施しました。なお、本検討での成果は、「VRを用いた視点場設定方法」として特許(特許第6673761号)を取得しました。
堤体下流面を活用したクライミング
地域活性化の一つとして、日本初「堤体下流面を活用したクライミングウォール(ボルダリング)」を計画・配置しました。
側水路減勢方式を採用(試験湛水サーチャージ水位到達時)
プロジェクト詳細