ギニア国公衆衛生の砦を目指して
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ギニア国公衆衛生の砦を目指して
2020年の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行に先立つ2014年3月、本プロジェクトの対象国である西アフリカのギニア共和国でエボラウイルス病が発生し、隣国のリベリアやシエラレオネにまで拡大するほどの大流行となりました。同国内の感染者数は合計で3,804人、そのうち2,536人が死亡する(出典:外務省「世界の医療事情(2024年10月1日)」より)など、公衆衛生上の大問題に発展し、同国の保健システムの弱さがあらためて浮き彫りとなりました。同国において、公衆衛生検査室としての役割は国立公衆衛生研究所(「Institut National de Santé Publique」、以下INSP)が担っています。具体的には、①流行疾患の監視、②全国の検査の質の評価・監督、③検査技師の研修、④感染症対策における研究の大きく4つの活動を行っています。
一方で、プロジェクトを開始した2019年当時、検体の研究や検査技師の研修実施に必要な機材が不足していました。また、旧INSP施設は、取り扱うウイルスや病原菌などが外部へ流出することを防ぐ「バイオセーフティ(BSL1~4の4段階※)」と外部の人間による施設内のウイルス・病原菌へのアクセスを防ぐ「バイオセキュリティ」への対策が十分に取られていませんでした。さらに、施設自体も狭く、INSPがギニア国内で担う検査・研究および研修の役割に対して十分とはいえない状況でした。
そのため、本プロジェクトにて、INSPが4つの役割を十分に果たせるよう、必要な施設と機材の整備し、検査・研究および研修の実施体制を強化しました。
※ BSL(バイオセーフティレベル):バイオセーフティは、取り扱う病原体の危険度に応じてBSLという4段階の分類が国際的に定められており、数字が大きくなるほど病原体の危険度が高く、より厳重な封じ込め対策が必要とされる。
旧INSP施設
旧INSP施設(検査室)
旧INSPの会議室の様子
INSPはギニア国全土を対象とする重要な機関ですが、旧施設は当時築60年と老朽化していたため、郊外の新たな土地にその機能のほとんどを移設する大規模な計画となりました。計画した施設は、検査・研究、研修の中核を担うラボ/研修棟、INSP全体を管理する事務棟に加え、施設全体に電気、水などを供給するエネルギーセンター棟、全国へ供給する薬品などを保管する供給倉庫棟など計6棟に及びます。
これらの施設、特に中心となるラボ/研修棟と事務棟では、上履きへの履き替えといった厳重な衛生管理が求められる検査室エリアと、事務や座学研修などを行う一般エリアを明確に分けることが不可欠でした。
さらに、検査室エリアの計画において、エボラウイルスや鳥インフルエンザウイルスなどの検体はBSL3以上の施設が必要でした。しかし、同国の予算や技術レベル、検査機材・空調機器のメンテナンス体制などの運営・維持管理に課題がありました。そこで、ギニア側と綿密な協議を重ねた結果、本プロジェクトではBSL2 を基本としつつ、リスク群の高い病原体を扱う検査室には緊急用シャワー、専用フィルターなどを備えた施設とすることで、同国での運営・維持管理における課題とトップ感染研究所としての役割の両立を図りました。WHOの基準ではBSL3には独立した建物が求められますが、 現地の維持・管理能力を考慮し、他の研修室と同じ建物に計画しました。ただし、建築計画、設備、機材についてはBSL3相当の基準で整備しています。
この国立公衆衛生研究所の建設は、ギニア国が策定した「国家保健開発計画2015-2024」および「保健システム復興計画2015-2017」などの保健分野における国家計画や、同国の中・長期開発計画の目標に資するものです。さらには、SDGsの目標3「あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する」にも貢献するプロジェクトとして、2023年に完成しました。
※2025年6月時点の情報です
移転後のINSP施設(緊急用シャワーや専用フィルターなどを備えたBSL2検査室)
50人まで収容可能な研修室
バリアフリーも考慮したスロープ
プロジェクト詳細