地盤沈下を食い止める
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地盤沈下を食い止める
1000万人以上が暮らすインドネシアの首都ジャカルタは、アジア有数の大都市として知られる一方で、地下水の過剰揚水を一因として、北部では1970年以降最大4m以上の地盤沈下が発生しています。地盤沈下はジャカルタ中心部を含む広範囲で見られ、都市機能の脆弱性を高めています。既に、満潮時には一部の地域で海水が浸水する等の被害が表面化しており、降雨時の浸水被害や洪水時の湛水被害も拡大するなど、住民への影響が出始めています。また、不等沈下等が地上インフラ(建物、橋梁など)及び地下インフラ(水道管、下水道管、ガス管など)に与える影響も懸念されており、地盤沈下は喫緊に対応すべき課題です。
本プロジェクトは、ジャカルタ特別州において、地盤沈下対策を推進するための体制を整備し、アクションプランを策定することにより、インドネシア側実施機関による対策の促進と人材育成に寄与することを目的に進められています。
沿岸部では地面より海水面が高いところが見られる。高潮で海水が堤防を越え、家屋が浸水する。 出典:NCICD(国家首都総合沿岸開発プロジェクト)
本プロジェクトでは、JAXAの陸域観測技術衛星「だいち」、「だいち2号」を使って地盤沈下地域を把握し、さらに二重管式と呼ばれる観測井戸を設け、地盤の沈下量を記録するための沈下計、地下水位の変動状況を観測するための水位計を設置しました。この観測井戸建設に対しては、プロジェクトメンバーとC/Pや、建設業者が現場で議論を重ねて、世界でも例のない設計、工法を採用しています。
地盤沈下の進行を止める対策と、気候変動の影響による高潮や洪水などへの対策を強化する施策をとりまとめ、高潮・洪水のリスク評価・浸水リスクマップの作成を進める予定です。また、気候変動に伴う海面上昇や高潮、豪雨の激化が、地盤沈下による災害リスクをさらに高め、急速に経済発展するジャカルタへの影響は大きくなることが予想されます。そのため、行政関係者、商業・工業関係者、市民がこうしたリスクを理解し、地下水くみ上げに関する新たな法整備、代替水源の確保など総合的な地盤沈下対策を進める必要があります。
プロジェクトでは、気候変動も考慮した総合的な対策のためのアクションプラン作成支援、能力強化及び社会への啓発活動も実施していきます。
「だいち」、「だいち2号」によるジャカルタ市内の地盤沈下の衛星画像解析結果。水色の個所は2007~17年に50㎜以上沈下、赤や黄の旗はより沈下が激しいところを示す。 ⓒJAXA/ジャカルタ地盤沈 下対策プロジェクト共同企業体
観測井戸。深さの異なる3本の井戸を建設している。2重構造のパイプになっており、それぞれのパイプの沈み具合の差で、どの層で地盤の収縮が発生しているかを計測する。
プロジェクト詳細