アジア最貧国における
ごみ問題へのチャレンジ
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アジア最貧国における
ごみ問題へのチャレンジ
バングラデシュ国は1971年の独立以来、経済成長と人口増加に伴い廃棄物、大気汚染、水質汚濁等の都市環境問題が顕著化していました。2000年当時、最も深刻な都市環境の悪化に直面していたのが人口1,200万人以上を抱える首都ダッカ市であり、その中でも街中に捨てられたごみは悪臭、汚水や衛生害虫獣を発生させ、雨水側溝を詰まらせ、時にはコレラの発生の原因を作るなど廃棄物の処理が大きな社会問題になっていました。しかし、廃棄物管理を担うダッカ市は廃棄物管理に関わる事業実施体制の貧弱さ、計画の欠如、機材不足、予算不足及び住民の衛生意識の低さなどの理由により、適切な廃棄物管理が行われてきませんでした。
このような状況から、国際協力機構(JICA)はダッカ市に対して2000年から廃棄物管理改善の支援を行っています。当社は2003年からこの政府開発援助(ODA)事業に従事しています。
街中に設置されたごみ捨て場(コンテナ)周辺に散乱するごみとウェストピッカー
改善前のダッカ市の唯一のごみ投棄場(悪臭、ハエ、汚水の流出がすさまじい)
清掃員への労働安全講習会(約9,000人の清掃員が毎日街の清掃を行っている)
本プロジェクトの支援対象都市であるアジア最貧国のダッカ市(現在の南北ダッカ市)は、廃棄物管理に関わる“人や組織”、”予算”や“機材や施設”がとても不足していました。そのため、2000年の専門家派遣から現在に至るまで、専門家派遣、開発調査、技術協力プロジェクト、無償資金協力、債務削減相当資金、JICA海外協力隊(JOCV)など、JICAのありとあらゆるスキームやプログラムを提案し、これらを通じて廃棄物分野の支援を行っています。
都市廃棄物管理事業を所轄するダッカ市役所(DCC)の職員、行政組織、制度・社会システムの改善を目指して、開発調査「ダッカ市廃棄物管理計画調査(2003年-2006年)」でクリーンダッカ・マスタープランを策定しました。その後、マスタープランを実現するために、廃棄物の収集運搬、最終処分場管理、組織運営、市民参加等を中心とするDCC の廃棄物管理能力の強化支援を目的とした技術協力プロジェクト(2007年-2013年)及び学童の環境教育支援を目的としたJOCVの派遣(2006年-2015年)などのソフト面の支援と平行に、債務削減相当資金(2005年―2010年)を使った最終処分場の改善と建設、草の根無償(2006年)を使った医療系廃棄物焼却炉の設置及び無償資金協力(2009年―2010年)によるごみ収集車両の供与などハード面の支援を行いました。
このように段階的にソフト・ハード両面から支援を実施し、廃棄物管理局の設立、廃棄物収集率の向上・運搬量の増加、衛生埋立技術の導入・確立、住民の意識向上等の成果を挙げ、課題対処能力が向上しました。
現在は、クリーンダッカ・マスタープランのフォローアップとして、ダッカ市が南北に分割され新たにできた北ダッカ市、南ダッカ市で“ごみゼロ”を目指した後継マスタープランを策定しています。また、ごみ収集車両の供与をバングラデシュ第二の都市であるチッタゴン市に行うなど、国内の他都市にダッカ市の経験の共有と廃棄物管理能力向上効果を拡げていくことを目指して技術協力を行っています。
これらの支援の結果、ダッカ市のごみ収集は大幅に改善し、2000年当初は約40%だったごみ収集率は、現在では先進国レベルの約85%まで増加しました。また、JICAが支援を開始した2000年からの約20年間で技術協力の内容もより高度化しています。プロジェクト開始当初はごみをたくさん集めて衛生的に処分する“適正処理”を目標にしていました。現在では、2R(Reduce, Reuse)によるごみの減量と、エコタウン(リサイクル工業団地)でのリサイクルにより埋立処分量を限りなく減らす“ごみゼロ”を目指すところまで来ています。
地域の廃棄物管理の中心となる清掃事務所を建設した(南北ダッカ市で合計49ヵ所)
無償資金協力でダッカ市初のコンパクターを導入し戸別収集を開始した
現最終処分場は、ごみの飛散や悪臭を防止する覆土や浸出水処理施設も設置され近代的な処分場となった
プロジェクト詳細