健全な水循環の維持
地下水の持続的な利用と保全
Menu
健全な水循環の維持
地下水の持続的な利用と保全
岐阜県が位置する濃尾平野では、高度経済成長期における地下水の過剰な揚水に伴う地盤沈下が大きな社会問題となり、これまで行政・企業・地域住民などの尽力のもとで対策が講じられてきました。このため岐阜県は、全県域を見据えた地下水管理(揚水規制)の必要性を検討していました。
本業務では、2014年7月に制定された「水循環基本法」の基本理念を踏まえ、岐阜県および周辺地域における健全な水循環の維持と地下水の持続的な利用・保全を両立させることを目的に、県全域の水資源実態の把握や水収支の分析、水循環モデルの構築、同モデルを用いた将来予測、地下水利用による影響把握、そして地下水管理のあり方の検討などを行いました。
濃尾平野では、地下水の過剰揚水による地盤沈下が問題となっている(画像はイメージ)
岐阜県は県内の8割を森林が占めており、高知県に次いで2番目に森林が多い都道府県です。そのため、森林からどの程度の水資源が供給され、表流水または地下水として県内を流れていくのか、その定量化が岐阜県の水資源を正しく理解する上での課題の一つでした。一般的に、森林の年間の蒸発散量は700mmとされますが、その算出によく用いられるソーンスウェイト式やハーモン式では、蒸発散量が少なく算出され、うまく再現できませんでした。
当社では、国立研究開発法人森林研究・整備機構(森林総研)との共同開発により、森林域における新たな計算手法を開発・適用。正しい蒸発散量(年間700mm程度)を算出した上で、県内を流下する水資源量を定量化しました。
過去から現在における県内全域の地下水利用量を調査・集計した結果、横ばいまたは減少する自治体がほとんどでした。濃尾平野の地下水位の連続観測結果からも、地下水位は現状維持もしくは回復傾向にあることが確認されました。
この結果を受け、岐阜県は一律の揚水量規制は時期尚早と判断。引き続き観測を継続しつつ、地下水の状況を共有・学習・理解する場を設けながら、地下水管理に取り組んでいくこととしました。
また、県内の各自治体へ、地下水への気づきを啓発するため、説明会を実施するとともに、自治体ごとの地下水の概要シート(水収支や地下水の流れなど)を提供しました。
推計手法の違いによる蒸発散量の比較
(左:ソーンスウェイト法 中:ハーモン法 右:新たな計算手法)
岐阜県の地下水涵養量(地下水資源供給量)の分布
各自治体向けの地下水の概要シート
(左:表紙 右:概要シート)
プロジェクト詳細