景観に配慮した水門設計
排水不良となっていた古く小さな既設樋管を
排水良好な新しい水門施設へ改築
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景観に配慮した水門設計
排水不良となっていた古く小さな既設樋管を
排水良好な新しい水門施設へ改築
利根川左岸125.5キロ付近に位置する女沼川の排水施設は、堤防の拡幅事業により既存の樋門では対応ができなくなる、また川裏に支川が接続しているため排水能力が不足している問題などから、既存の樋門の改築が求められていました。
当社は樋門構造と水門構造の形式比較検討を行い、経済性、構造性に優れる水門構造を選定してゲート工の概略設計、水門本体の詳細設計を行いました。堤防構造設計では、既往検討を踏まえて現地状況を加味した実現可能な整備断面を設定、浸透流解析(※1)の追加、既往解析の精査などを行い堤防断面構造を定め設計を実施しました。またゲート工の概略設計および水門本体工(下部構造と建屋)の詳細設計を行い、本体設計はカーテンウォール(※2)を採用してゲート設備の経済性を高めました。
また、3Ⅾモデルによる景観検討を行い、本体・操作室、翼壁などのデザイン細部を決定しました。全体的に曲線を取り入れたデザインを採用することで周辺景観に馴染むような工夫を行いました。
※1:浸透流解析:地下水がどう流れているか、あるいは工事などで地下水流れがどう変化するかを予測する技術
※2:カーテンウォール:ゲート扉体面積縮小のためゲートの代わりに設置される壁
釈水水門
本設計において、特に苦労した点は下記の3つです。
構造形式の比較検討
既往設計として6連の樋門の設計がされていましたが、本設計では条件の見直しなどを行い3連樋門に水門形式(カーテンウォール有り案、カーテンウォール無し案)を追加して水理面、経済性、施工性などについて総合的に比較検討を行いました。基礎工として、樋門では地盤改良、水門では基礎杭が必要となりますが、先に記載した、経済性から水門形式(カーテンウォール有り案)を採用しました。
景観デザインの検討
水門らしさと周辺景観に馴染むことを主題にして検討を行いました。水門らしさは、既設の水門のデザイン事例の調査を行い、あまり華美で自己主張が強くならないように配慮しました。具体的には、カーテンウォールの採用により低いレベルに操作台設置と低い建屋高さを採用し、コンクリート表面にタイルなどの貼付けは行わずに、生のコンクリートの形で勝負する細部のデザインを行いました。また、堤防がサイクリング道路に指定されていることから、水門上部を展望台として休憩スペースにはベンチを設けました。
下部構造の設計
下部の土木構造では、底版からの壁の立ち上がりが約13mとなります。また、水門の内幅が19mになるため、側壁の応力が非常に厳しくなることが課題でした。そのため、経済比較などから管理橋を頂版とした2連のボックス構造とするとともに、側壁下端の外側は2段配筋として設計しました。さらに、L2設計を行いせん断耐力が不足することから、帯鉄筋、中間帯鉄筋の径とピッチを増強しました。そして施工計画では、コンクリート硬化時の温度応力によるひび割れが懸念されることから3次元FEMによる温度応力解析を実施して施工工程での調整を図りました。
釈水水門
プロジェクト詳細