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TOPICS

質の高いインフラ整備

南阿蘇鉄道復旧事業

2016年に発生した熊本地震により、熊本県の南阿蘇鉄道は甚大な被害を受けました。当社は鉄道施設災害復旧調査をはじめ、南阿蘇鉄道全線復旧に向けたマネジメント業務および一級河川である白川に架かる第一白川橋梁の下部詳細設計を担当しました。

1927年に完成し、先人たちの貴重な建設技術とその優れた景観美から土木学会選奨土木遺産にも選出された第一白川橋梁は、地震の影響で右岸と左岸の両側から橋の中心方向に力がかかり、そり上がりなど異常な変形が生じました。複数の部材が損傷を受けており、架替えによる復旧が計画されました。新しい橋は、耐震性能を向上させることはもとより、旧橋の構造形式・部材の断面寸法・色を踏襲し、震災前の景観美を復活させることをコンセプトとして設計され、工事が進められました。第一白川橋梁は、2022年度の土木学会賞※田中賞[作品部門]を受賞しました。

※ 土木学会賞は学会創立後6年目の1920年に「土木賞」として創設されました。以来、第二次世界大戦終了後の1945年から48年までの余儀ない中断はあるものの、100余年の伝統に基づく権威ある表彰制度です。

大動脈の運行継続に貢献する
北陸新幹線散水消雪設備

日本有数の降雪地帯を走る北陸新幹線では、積雪による新幹線運行への影響を防止する雪害対策が行われています。

当社は、この雪害対策の中で主要な形式である「散水消雪設備」を、長野駅~金沢駅では9カ所、2024年春に延伸開業の金沢駅~敦賀駅では25カ所において設計しました。

これまでに当社は、東北新幹線の八戸駅~新青森駅区間において同形式の設計実績があり、そこで培ったノウハウを生かしつつ、北陸地方の雪質を考慮した設計を行いました。

北陸地方を中心に在来線や一般自動車道の立ち往生をもたらした2018年の大雪においても、北陸新幹線は一部徐行区間を設けながらも運行を継続しました。雪害対策は、屋根を設けるスノーシェッドや融雪装置など、複数の対策による複合的な効果として降雪時の運行継続を実現します。「散水消雪設備」が、その主要な対策の一つとして効果を発揮し、大雪の際の運行継続に貢献しました。

社会インフラの長寿命化

官民連携による多摩市橋梁包括管理プロジェクト

東京都多摩市が管理する橋梁(175橋)は、その多くが高度経済成長期の多摩ニュータウン開発に伴い、短期間に集中的に建設されたため、今後老朽化の進行と修繕の集中が懸念されていました。そのような中、予防保全型の管理へ移行することで長寿命化を図り、修繕の集中回避と管理費用の削減を図る方針を掲げましたが、修繕が必要な橋梁が多く、事後保全から脱却が進まない状況でした。そこで、一貫性のある橋梁管理により予防保全への移行を推進し橋梁の長寿命化を実現するため、定期点検と補修設計、長寿命化計画改定業務をまとめて5年間の長期契約で1業務として発注する本事業がスタートしました。橋梁管理のプロセスの対応を当社のみで実施することで工夫の余地が生まれ、さまざまな提案や取り組みを実施することができました。点検時の診断フローの改善や即時措置の試験施工、AIによる追跡調査などにより、橋梁の健全性が大幅に改善し、橋梁の長寿命化の実現に向けて予防保全への移行が進んでいます。

火山砂防事業の長寿命化に向けた取り組み
UAV自律飛行による砂防施設の点検・健全度評価

北海道支笏湖の南東に位置する樽前山は、日本でも活発な活火山の一つです。樽前山周辺は豊かな自然環境が育まれ、豊富な地下水資源をはじめとした多くの恩恵を受けています。一方で、火山噴火に起因した火山泥流による被害が想定されるため、苫小牧市など市街地の被害軽減を目的に、樽前山直轄火山砂防事業として、砂防施設整備が進められています。

砂防施設の機能を長期にわたり持続させるには点検による健全度の診断が必要です。UAVを活用して定期点検を行うことで、危険な場所に人が直接立ち入ることなく、短時間のフライトで施設状況を把握することができ、撮影画像から作成した三次元モデルで施設の劣化状況を定量的に評価できるなど、当社でもi-Construction※を積極的に業務へ取り入れ、既往技術の効率化・高度化を目指しています。

2022年度業務は、「北海道開発局 i-Con奨励賞2023」として表彰いただくなど、一連の取り組みが評価されました。

防災・減災の高度化

トンガ王国における
全国早期警報システムの導入

サイクロンに見舞われやすく、また地震多発地帯に位置することから津波のリスクも高いトンガは、住民が島々に分散しているため、迅速な災害予警報の伝達が困難でした。日本のODA支援による災害情報伝達インフラ構築として、①緊急無線システムによる防災関連組織間の連携強化、②サイレンシステムによる津波ハザードエリアの住民に対する早期警報の伝達、③国営放送局のスタジオ局舎・送信所および中波ラジオ放送システムの更新による全国カバー率の確保を実施しました。当社は調査・設計などの計画段階から、施工監理に至るまで一貫して担当、コロナ禍による工事の一時中断もありましたが、2022年9月に無事完成しました。

津波警報の到達所要時間は、それまでの最大90分から8分以内に改善しました。津波シミュレーションに基づき、スタジオ局舎や送信所は1.8m以上の床・基礎高とすることで津波襲来時にもラジオ放送を継続可能としたほか、非常用発電設備を有し、屋上は周辺住民の避難場所として利用可能としました。2022年1月のフンガ・ハアパイ火山の噴火時には住民避難に貢献しました。

防災・減災リスクコミュニケーションの促進

「マイ・タイムライン」とは、住民一人一人のタイムライン(防災行動計画)であり、台風などの接近による大雨によって河川の水位が上昇するときに、自分自身がとる標準的な防災行動を時系列的に整理し、自ら考え命を守る避難行動のための一助とするものです。その検討過程では、自らの洪水リスクを知り、どのような避難行動が必要か、また、どういうタイミングで避難することが良いのかを自ら考え、さらには、家族と一緒に日常的に考えます。

当社は、奈良県と大阪府を流れる一級河川の大和川において、「マイ・タイムライン」の作成促進を図るため、水害危険性が高い地域における作成講習会を行い、マイ・タイムライン広報動画の作成など効果的な展開方法を検討しました。また、自らが生活する地域の水害の危険性を実感できるよう、生活空間である“まちなか”に水防災に関わる情報を標示する「まるごとまちごとハザードマップ」の取り組みも進めており、当社ではその普及浸透と意識の醸成を図る「まるごとまちごとハザードマップ実施の手引き(第2版)」を検討した業務経験を生かして、事前調査段階から設置、活用までを支援しています。

スマートシティの実現

交通事故リスクの低減を図る
ソリューション開発

当社とMS&ADインターリスク総研株式会社は、相互に連携して新ソリューションにおける協業・新技術の共同開発を目的とした業務提携を2023年3月に締結し、交通事故リスクの低減を図るソリューション開発を進めています。

SDGsのターゲットの一つでもある交通安全に対して、事故発生リスクAIアセスメントを実施し、街のなかにおける解決策を提供します。

過去の事故データに加え、MS&ADグループが有する膨大な交通リスクデータをはじめとしたさまざまなデータを用いて、潜在するリスクの大きさをMS&ADインターリスク総研株式会社がAIで定量的に評価します。その評価結果を有効活用し、当社は具体的な交通事故削減策を検討します。これらのアプローチにより、再発防止型から未然防止型の効果的な事故対策を実現していきます。

デジタル技術を活用した持続可能な経済社会
愛媛県・デジタル田園都市国家構想に参画

デジタル技術の活用により、地域の個性を生かしながら地方を活性化し、持続可能な経済社会を目指す「デジタル田園都市国家構想」が全国で進められています。当社は2022年12月~2023年3月に愛媛県デジタル基盤技術コンソーシアムを設立し、愛媛県のデジタル田園都市国家構想推進交付金事業に参画しました。

2022年6月に愛媛県の「多極分散を志向した強靭なデジタルまちづくり」が、デジタル田園都市国家構想のデジタル実装タイプTYPE2(データ連携基盤を活用し、複数のサービス実装を伴う取り組み)に採択されました。愛媛県デジタル基盤技術コンソーシアムは、愛媛県のデジタル田園都市国家構想推進交付金事業である「愛媛県データ連携基盤構築運用等業務」に採択され、愛媛県のスマートシティ推進の中核となるデータ連携基盤およびセンサー基盤の整備を行いました。 このことにより、県内各地に分散している各種センサー情報やライブカメラ画像、IoTによるセンシング情報などを集約、可視化し、スマートシティ推進の加速に貢献していきます。

地域・産業活性化

中小企業DXを支える
設備保全クラウドサービスMENTENA

工場を安定稼働させるために、日々の設備保全業務は非常に重要です。多くの設備保全の現場は、経験や勘による暗黙知で支えられており、紙やExcelで管理されているのが実態です。また、技術の革新や人材不足などを背景に、DXの実現が求められており、設備保全業務の効率化・高度化が喫緊の課題となっています。

当社が提供する設備保全クラウドサービス「MENTENA(メンテナ)」は、設備保全業務を見える化し、DXに貢献するクラウド型のソフトウェアです。MENTENAにより、紙やExcelの管理からシステム管理(スマートフォン入力やデータベース)へ移行し、現場作業の効率化や点検履歴の効果的な管理を実現します。

顧客課題やニーズに応じて改善を繰り返していくことで、MENTENAは設備保全業務のDXの一助となり、持続可能な工場の運営につなげていきます。

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次世代高圧ガス容器CubiTan®を活用した
スマートガスネットワーク構築

当社と株式会社Atomisは、インドネシアおよびマレーシアを対象としたスマートガスネットワーク構想の実現に向けた業務提携契約を締結しました。スマートガスネットワークとは、パイプラインによらずにガスが配給され、IoTデバイスを通じてその利用状況が遠隔でモニタリング・管理されるシステムです。

本業務提携は、株式会社Atomisが開発する次世代高圧ガス容器CubiTan®を活用し、スマートガスネットワークの構築および運営事業を推進するものです。CubiTan®は、多孔性配位高分子(PCP※)/金属有機構造体(MOF※)を使用して、今まで室温下での圧縮が難しかったメタンガスをナノレベルでコントロールすることが可能なガス容器です。これにより、今までの非常に重く大きいガスボンベの小型化・軽量化というイノベーションが実現します。

CubiTan®を活用することで「配送の最適・省資源化」や「残容量把握による利用者の利便性向上」などに貢献していきます。

自然資本・生物多様性の保全

サステナビリティ
コンサルティングサービスの提供

企業がこれまでの事業を持続的に成長させるためには、社会との共栄が不可欠です。現在、地球温暖化に対する気候変動対策に加え、自然資本として利用している水および生物多様性に対するリスク対応も求められています。こうしたサステナビリティに訴求される企業課題に対し、世界的な動きとしてTNFD※やSBTN※などのフレームワークが開発され、開示や目標設定を行うことが一つの動きとなります。

一方で、自然資本に対する評価・アプローチは多様で複雑であり、適切なリスク評価や機会の創出には専門的な知見も必要です。当社は、60年以上にわたり自然科学と向き合ってきた技術・経験を有し、さらにグローバルな視点でさまざまなコンサルティングサービスを提供することで、企業の持続可能な経営に貢献します。

気候変動・自然資本に関する調査や評価、戦略策定、情報開示を中心としたコンサルティングに加え、CDP※などの開示、調査結果を踏まえた企業ブランディングや地域・行政との連携支援など、課題やニーズに合わせ、さまざまな支援を行っています。

※TNFD : Taskforce on Nature-related Financial Disclosures/自然関連財務情報開示タスクフォース
※SBTN : Science Based Targets for Nature/ 科学的根拠に基づく自然関連目標設定
※CDP : 企業や自治体などの気候変動や温室効果ガス排出削減に向けた戦略や取り組みを評価・情報開示する国際環境NGO

民間企業の自然保全区における
緑地保全管理および環境プログラム実施支援

明治ホールディングス株式会社さまを筆頭とする明治グループの一員であるKMバイオロジクス株式会社さまの菊池研究所(熊本県菊池市)には、6.35haにもおよぶ「明治グループ自然保全区 くまもと こもれびの森」という緑地が広がっています。当社は、「こもれびの森」において自然環境調査をはじめ、森の保全管理や環境プログラムの実施を継続的に支援しています。

【森の保全・管理】
里山の樹種が生育し、フクロウや希少な植物も確認される豊かな森ですが、森の環境を単調化させる竹林の侵入や荒れた人工林などの課題も一部みられます。そこで緑地保全管理計画を策定し、植生ゾーニングや森林の生物多様性の向上に向けた樹林管理、フクロウや小鳥類の巣箱や昆虫類が卵を産み付ける産卵床の整備など多彩な活動を進めています。

【環境プログラム】
生物多様性の理解促進と地域生態系の課題解決を目指し、明治グループの従業員とそのご家族、また将来的には地域住民の皆さまも見据え、森の生き物の観察や保護、侵入を防ぐために伐採した竹を使った工作など、季節に応じた環境プログラムを行っています。

再生可能エネルギーの利用推進

カーボンニュートラル社会の到来に対応した「みなと」づくり
四日市港カーボンニュートラルポート形成計画の策定

港湾は、輸出入貨物の99%以上が経由する国際サプライチェーン(製品の原材料・部品の調達から販売に至るまでの一連の流れ)の拠点であるとともに、CO2排出量の多い発電所、鉄鋼業、化学工業などが立地するエネルギー消費地です。石油化学コンビナートなどを擁し、日本における原油輸入量の約1割を取り扱うなど、中部地域はもとより国内の主要なエネルギーの輸入・供給拠点である四日市港の脱炭素化の促進は、持続可能な社会の形成への極めて重要な取り組みです。

四日市港におけるカーボンニュートラルポート(CNP)の形成に向けて、現状および将来のCO2排出量を推計し、その削減目標、削減計画を協議会における議論を通じて設定しました。さらに、水素・燃料アンモニアなどの大量・安定・安価な輸入・貯蔵などを可能とする受け入れ環境の整備や、脱炭素化に配慮した港湾機能の高度化、集積する臨海部産業との連携などについて検討を行い、2050年カーボンニュートラルに向けたロードマップを整理しました。

施設園芸ハウスのCO2排出量を削減する
地下水利用ヒートポンプシステム

高知県須崎市の施設園芸ハウスの冬季加温用に、地下水の持つ熱を利用したヒートポンプシステムを、地域の農業組合JA土佐くろしおさま、および工事会社と協力して導入しました。地下水を利用したヒートポンプ加温システムの導入により、従来の燃油を使用した加温システムと比較して、CO2の排出量は約55%減、ランニングコストも約30%減になります。この加温システムは、地下水が年間を通じて温度の変化が少なく、その土地のほぼ平均気温になることを活かし、加温の際のヒートポンプの動力が小さくなることを利用しています。

温暖なイメージのある高知県ですが、冬季の加温のための燃料使用量は小さくなく、2050年カーボンニュートラルに向けた取り組みの一つとして注目されています。なお須崎市では、「ゼロカーボンシティ」を宣言、この地下水利用加温システムも脱炭素を実現する取り組みの一つとして、環境省の脱炭素先行地域に申請し、採択を受けています。

資源循環の推進

バングラデシュ
廃棄物管理能力強化プロジェクト

1990年代以降、人口集中や急激な経済成長に伴い、バングラデシュの首都ダッカでは廃棄物発生量が急増し、2000年当時、ダッカの廃棄物管理は「アジアに残された最大の懸念」と評されるほどに立ち遅れていました。そこで、日本のODA支援では、技術協力プロジェクト、無償資金協力、青年海外協力隊などの複数のスキームを組み合わせて、オールジャパンで改善活動に取り組んできました。その結果、かつては路上に放置されたごみ山からハエや害虫が大量に発生し、生ごみが腐敗臭を放っていた街中が、見違えるほどきれいになりました。廃棄物収集率は46%(2006年)から85%(2019年)まで向上し、現在は、次の段階として中間処理やごみ減量、3R(リデュース、リユース、リサイクル)の導入に取り組んでいます。

当社は2003年から20年間、継続してダッカの廃棄物管理改善を支援してきました。持続可能な循環型社会形成を目指して、これからも日本の経験や技術力を生かした支援を行っていきます。

持続可能な廃棄物処理施設の運営推進
益田地区広域クリーンセンター

2004年度にPFI※(BOT※)事業として実施され、SPC※により管理運営されてきた島根県の益田地区広域クリーンセンターは15年間の運営事業契約が終了となりましたが、当社は、引き続き長期的な運用を図ることを目的に、同施設が譲渡される益田広域市町村圏組合に対し、施設譲渡手続きや次期運営事業者との事業契約締結などの支援業務を実施しました。現SPCとは2023年度から7年間の運営業務を継続的に契約することで施設の長寿命化を図るなど、持続可能な廃棄物処理施設の運営事業を推進しています。

廃棄物処理は地域の資源循環に欠かせない施設である一方、ごみの性質や資源化の方策の変化も生じるほか、施設の老朽化や維持管理費用の増加が生じます。地方自治体の財政負担を考慮しながら施設を継続的に利用していくため、PFIといった運営事業が終了した後も効果的に基幹改良工事を行い、長期的な安定稼働を図ることが必要です。当社はこれからも持続可能社会の実現に取り組んでいきます。

※PFI : Private Finance Initiative/公共施設などの建設、維持管理、運営などを民間の資金、経営能力および技術的能力を活用して行う手法
※BOT : Build Operate Transfer/民間事業者が施設を建設し、維持管理および運営をした事業終了後に公共に施設所有権を移転する方式
※SPC : Special Purpose Company/特定の目的のために設立された法人

サステナビリティ