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河川環境への配慮とコスト縮減の<br/>観点から生まれた 北陸新幹線「九頭竜川橋りょう」
実績

新幹線初の下部工を道路橋と併用した一体橋

河川環境への配慮とコスト縮減の
観点から生まれた 北陸新幹線「九頭竜川橋りょう」

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環境に配慮した橋づくりを目指して

北陸新幹線の整備計画は、現在、金沢~敦賀間の2023年度末開業を目標に進められています。
その延伸区間の福井県に位置する福井市北東部の九頭竜川では、北陸新幹線橋の両脇に道路橋を抱えた3本の橋桁が両岸を結んでいます。
この橋は、延長415mスパン65mの6径間連続PC箱桁橋であり、北陸新幹線の橋と県道の橋が一体的に整備された全国でも珍しい構造をしています。
北陸新幹線の整備計画ルート決定とほぼ同時期から、この場所には県道整備計画が存在していました。この周辺の福井市森田地区では、土地区画整理事業で人口が増えたこと等から、九頭竜川を跨ぐ南北の橋の周辺は慢性的に渋滞が発生していました。そのため、九頭竜川にはもうひとつ道路橋を架けることが望まれていたのです。
しかし、鉄道橋と道路橋は、それぞれ走行車両や走行速度が異なる(新幹線と自動車)ため、橋に要求する性能(スペック)が異なることから別々に橋を架ける必要がありました。鉄道橋と道路橋をそれぞれ単独橋として整備すると、河川内に設置される下部工基数も倍になり、複数並んだ橋脚による河床の洗堀等河川環境への影響が指摘されていました。周辺はアラレガコと呼ぶ魚類の生息地として、国から天然記念物に指定されています。私たちは、河川環境への影響を最小限にすること、コスト縮減の2つの観点から、橋脚を鉄道橋と道路橋で併用すること(柱幅約34m)を提案しました。

  • 堤防から見える広幅員橋脚と美しい桁ライン

  • 迫力のある3本の橋桁

鉄道と道路、双方の基準を満たす設計

橋脚を鉄道橋と道路橋で併用する観点から、鉄道橋と道路橋の桁下ラインをできるだけ統一することを考えて、河川内の橋脚の配置間隔は支間65mの中規模とし、橋梁形式はPC連続箱桁形式を採用しました。PC箱桁の施工については、河川内であることから鉄道、道路とも移動作業車(ワーゲン)を使った張出架設を採用しました。鉄道か道路のいずれかの桁が先に完成した後でも、残りの桁を移動作業車で架設できるように、それぞれ1m以上の離隔を確保しました。 下部工は鉄道と道路の基準を共に満たすように設計を行っています。
道路橋示方書に準じて下部工のかぶりは9㎝、鉄道を含む上部工は同7㎝を確保しました。柱の主筋は鉄道基準よりSD390を基本とし、柱のコンクリート強度は道路橋示方書より30N/mm²を採用しました。配筋上のルールについては、帯鉄筋の形状や配置ピッチ、段落とし等、双方の基準の安全側になる鉄筋量を配置しています。
支承部については、道路橋は比較的地盤が固いことから免震シュー構造を採用し、鉄道橋は地震時の軌道への影響に配慮して沓・ストッパー構造としました。
耐震設計については、鉄道橋は静的非線形解析を基本とするのに対して、道路橋では動的非線形解析(時刻歴応答解析)による照査が必要であるため、2種類の耐震設計手法を適用し照査を行いました。
道路橋では、寒冷地であることから冬季に凍結防止剤が散布されます。散布時に凍結防止剤に含まれる塩化物イオンの飛来影響を想定し、耐久性向上の観点から併用する鉄道橋の桁の外面および橋脚や橋台の天端には表面含浸材を散布する計画としています。

※2021年9月時点の情報です。