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水産資源を守りながら5.4kmの湖底パイプラインを設置
実績

宍道湖を渡る水中パイプラインの布設

水産資源を守りながら
5.4kmの湖底パイプラインを設置

# 官公庁のお客様 # 国内 # 都市・地域 # 上下水道

宍道湖横断
湖底パイプラインの計画

島根県企業局では、県東部の慢性的な水不足を解消するため、国土交通省が斐伊川に建設する小原ダムを水源とし3市1町(雲南市、松江市、出雲市、東出雲町)に水道用水を供給する斐伊川水道事業を行ってきました。このプロジェクトで最も困難を極めた区間は、中国地方でも屈指の湖である宍道湖を横断するパイプラインの計画でした。
宍道湖の面積は日本国内で7番目の大きな湖です。形状は東西に長い長方形。東西約17km、南北約6km、周囲長47km。湖の面積の約5割が水深5m以上であり、湖底はほぼ水平となっています。今回のプロジェクトは宍道湖を南北に横断する施工延長5.4kmの湖底パイプラインを布設するものです。
宍道湖は東端の大橋川から中海を経て日本海につながっています。このため宍道湖と中海は日本では数少ない連結汽水湖となっており、このためシジミなどの水産資源が豊かな水域となっています。
一般的な海底パイプラインは、瀬戸内地域では離島給水などでこれまでに数多くの実績がありますが、口径200mm程度が多く、海底の地形に追従性の高いポリエチレン管を使用していますが、本プロジェクトでは必要口径がφ700mmと大きいため鋼管を採用しました。

  • 設置位置図

  • 一般部の配管構造

シジミの生態系を保護しながら
湖底の軟弱土を掘削

宍道湖はシジミの産地として全国的に有名であり、本工事区域においてもシジミ漁が盛んに行われている水域です。一般に海底パイプラインの敷設方法は台船上のクラムシェルで海底を掘削した後に管材を台船上で接合しながら水中に布設する方法が採用されています。しかし宍道湖の場合、この方法では湖底を掘削する際に湖底に堆積した超軟弱な粘土分を広範囲に巻き上げてしまいシジミの生息に悪影響を与えることが懸念されました。
そこで本プロジェクトでは陸上で接合した管材を対岸のウィンチで牽引する「湖底曳航工法」を採用するとともに、先端部には土砂を巻き上げずに掘削する方法として農業で使用される鋤(すき)を用いることとしました。鋤で湖底の土砂を掻き分けながら後続の管材を布設するこの方法は前例がほとんど無く、鋤の通過後に掘削断面が崩壊することなく保持できるように鋤の断面形状を決定するのに時間を要しました。また管材(鋼管)については、施工時及び地震時の浮き上がり防止対策としてコンクリートを巻いて重量を増加させる構造とし、鋤を先端に設置し対岸から150tウィンチにより牽引しました。
関係者の多くのご協力により宍道湖の湖水を濁らせることなくパイプラインを敷設することが出来ました。また、この方法は掘削工程と管材布設工程が同時であることから工程の短縮にもつながることができました。



※2019年11月時点での情報です。

  • 湖底曳航工法概念図

  • 湖底の鋤(すき)と管材を牽引中の様子

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