Menu

NEWS

2026年01月26日

日本の"SABO"技術を現地基準化、国家防災の新たな礎へ
~ブラジル・ノバフリブルゴ市にて新技術基準に基づく第1号砂防堰堤が着工~

八千代エンジニヤリング株式会社(本店:東京都台東区、代表取締役社長執行役員:高橋 努)を代表とする共同企業体は、独立行政法人国際協力機構(以下、JICA)の技術協力プロジェクト「強靭な街作りのための土砂災害構造物対策能力向上プロジェクト」(以下、本プロジェクト)において、ブラジル連邦共和国における砂防の新たな技術的枠組みを確立しました。

2026年1月12日、本プロジェクトの成果である「ブラジル版の砂防マニュアル」に基づき設計された、同国初となる砂防堰堤の起工式が、リオデジャネイロ州ノバフリブルゴ市にて執り行われました。式典には、ブラジル統合・地域開発省(以下、MIDR)、都市省、リオデジャネイロ州の代表および、ノバフリブルゴ市長が臨席。日本側から在リオデジャネイロ日本国総領事館およびJICA関係者が出席しました。また、会場には市民約450名が集まり両国の防災協力が前進していることを確認しました。

988_image1.jpg
起工式での市長の挨拶


・背景・

2011年1月にリオデジャネイロ州を襲った大規模土砂災害(死者・行方不明者約1,300名)を受け、ブラジル政府は防災体制を強化してきました。しかし、ブラジルには砂防、特に土石流に対抗するための構造物(ハード)の技術基準が存在せず、対策が進まない状況にありました。こうした中、弊社をはじめとする共同企業体はJICAの技術協力プロジェクトに参画し、国土交通省から派遣された長期専門家と連携して、日本の高度な砂防技術をブラジルの法規制や施工事情に合わせて「現地基準化」し、国土強靭化を推進することを目指しています。


<業務概要>

プロジェクト名

強靭な街作りのための土砂災害構造物対策能力向上プロジェクト

発注者

独立行政法人国際協力機構(JICA

カウンターパート

ブラジル連邦共和国 統合・地域開発省 市民防御局(MIDR/SEDEC

共同企業体

八千代エンジニヤリング株式会社
一般財団法人砂防・地すべり技術センター
株式会社建設技研インターナショナル

実施期間

2021年7月~20266



・本プロジェクトの現在までの主な成果・

これまで、弊社をはじめとする共同企業体は、日本の砂防技術をブラジルの法規制や現地事情に適合・体系化し、ブラジルの自律的な国土強靭化を図るために以下を実施してきました。

1. 「ブラジル版の砂防マニュアル」の策定

日本の砂防技術(許容応力度設計法など)をそのまま持ち込むのではなく、ブラジルの現行法規制や構造設計基準(限界状態設計法)、現地の施工事情などと融合させた「ブラジル版の砂防マニュアル(技術指針)」を策定しました。現地の大学教授陣からなる技術委員会との綿密な連携により、ブラジルの技術者が自律的に運用可能な実効性の高い技術基準となっています。


2. 「土石流構造物対策を要する渓流の抽出に特化した簡易リスクマッピング手法」の開発

先行プロジェクト(GIDES)で培われた土砂災害危険個所のリスク評価の知見を土台としつつ、予算や専門人材が不足する地方の州においても実施可能な、無償の衛星データとオープンソースGISを活用した「土石流構造物対策を要する渓流の抽出に特化した簡易リスクマッピング手法」を開発しました。これにより、ブラジル全土の地域で、低コストかつ迅速に、客観的指標に基づいて土石流構造物対策を要する渓流を特定し、対策の優先順位の決定が可能となりました。本手法はすでにMIDRにより公式化され、6つの市においてリスク評価が実施されるなど普及が始まっています。なお、土石流の氾濫リスクエリアの境界線を明確にして警戒避難や土地利用規制に活かすには、依然としてGIDESで定められた手法に基づくリスクマッピングが必要です。


3. 土石流構造物対策のための施設配置計画に関する技術移転

土石流構造物対策の設計に先立って必要な施設配置計画の技術を移転するため、調査手法や施設配置計画の作成手法の実務に関する指導を、複数の市を対象とした現地調査やワークショップを通じて行いました。


4. パイロットプロジェクトとしての詳細設計

ノバフリブルゴ市およびテレゾポリス市において、「ブラジル版の砂防マニュアル」に基づく詳細設計を実施しました。そのうちノバフリブルゴ市の不透過型砂防堰堤がこのたび着工されました。テレゾポリス市で設計が進められている鋼製透過型砂防堰堤は、流木や巨石を捕捉しつつ平常時は砂や小石、水を下流へスムーズに流す生態系への影響が少ない環境配慮型の日本独自技術を予定しており、ブラジルにおける環境と防災の両立モデルとなります。


5. 行政官・技術者の育成

マニュアルなどのツール整備だけでなく、連邦・州・市職員を対象とした本邦研修や、現地大学と連携したセミナー(2回開催、各回約100名参加)、現地調査の指導を通じ、日本の知見をブラジルでも実践できる人材を育成するプログラムを実施しました。MIDR職員もマニュアルの作成・更新に関与するプロセスにしたことで、プロジェクト終了後もブラジル政府が自律的に技術を継承・発展させるための強固な基盤(オーナーシップ)の醸成を目指します。



988_image2.jpg 988_image3.jpg
研修の様子


・今後の展開・

今回着工したノバフリブルゴ市の現場は、ブラジルにおける砂防技術のモデルケースとなります。今後は、ここでの施工監理や維持管理のノウハウを蓄積し、「ブラジル版の砂防マニュアル」の最終化を行います。
さらに、本プロジェクトでの成果は、サンタカタリーナ州やサンパウロ州など、土砂災害リスクの高い他地域への「水平展開」をすでに開始しています。「ブラジル版の砂防マニュアル」と「簡易リスクマッピング手法」をブラジル全土に普及させることで、日本の"砂防"がブラジルの「独自技術SABO」として定着し、同国の強靭な国づくりに永続的に貢献することを目指します。