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2026年04月22日
八千代エンジニヤリング株式会社(本店:東京都台東区、代表取締役社長執行役員:高橋 努)は、生成AIを活用し、橋梁の点検調書から損傷原因分析、最適な補修工法の自動策定や品質を検証をする「橋梁の補修設計支援ツール」(以下、本ツール)を開発し、特許を出願いたしました。
橋梁の補修計画や補修設計は、損傷原因の推定の他、橋梁の諸元、環境条件、将来の利用計画などの諸条件を考慮したうえで、最適な補修工法を選択するという高度な専門性を要します。従来は、技術者の経験や知見に依存していたため、担当する技術者の習熟度により工法選定が異なる、あるいは損傷の予兆を見落とすといった品質のばらつきや手戻り(再確認)が生じていました。また、近年の電子化の進展により、収集される点検データは膨大な量となっています。その点検データの精査には多大なコストと時間がかかり、特に複雑な構造の橋梁では技術者の負担が課題となっています。
本ツールは、生成AIによる補修設計の標準化・効率化により、若手技術者でも高品質なアウトプットが可能な環境の構築を目指しています。
橋梁の補修設計支援ツールのイメージ
・弊社の生成AIの活用推進について・
弊社は2023年より、全社横断的なワーキンググループを設置し、生成AIを活用した業務執行の効率化と最新技術の適用を推進しています。短期的には、生成AIの安全な社内利用環境の構築と事務作業の自動化・資料作成の効率化を実施し、現在も継続しています。中長期的には、弊社の知見などを集約した知識データベースを構築し検索拡張生成(以下、「RAG」)技術を用いた独自生成AIモデルの開発や、さまざまなコンサルタント業務フローの自動化を実現すべくAIエージェント技術の開発と実装を進めています。今回特許を出願した本ツールはAIエージェント開発の成果であり、今後も生成AI活用による効率化・高度化を目指した研究・開発を進めてまいります。
・「橋梁の補修設計支援ツール」の特長・
本ツールは、大規模言語モデル(以下、「LLM」)とRAG技術を高度に統合・連携させ、橋梁の点検調書(写真を含む)から損傷原因の分析、最適な補修工法の選定、さらにはAIで生成された補修工法の品質チェックと自己修正までを一貫して行うマルチAIエージェント※機能を備えています。
<本システムの主な機能>
● 高精度なデータ抽出:点検調書から、損傷の形状、損傷ランクや周辺の環境条件、橋梁諸元などの必要情報をLLMが自動抽出を行う。
● 根拠に基づく損傷原因分析:抽出されたデータをRAG技術により、社内ナレッジデータベース(以下、「社内DB」)と照合し、損傷原因の分析や特定を行う。
● 技術者としての提案機能:RAG技術で社内DBと照合し、環境条件、損傷原因に基づいて技術者として補修方針を提案する。どのような根拠でその結論に至ったかの「論理の流れ」の可視化やサマリーを作成する。
● 補修工法案の生成:RAG技術で社内DBと照合し、構造物の寿命や施工条件、コストを考慮し、技術基準に基づいた複数(推奨案/代替案など)の補修工法案を生成する。
● 自己改善(セルフチェック)機能:生成された補修工法案を別のチェック用エージェントが検証。補修工法案の品質が基準を超えるまでAIが自ら修正を繰り返すことで、実務に耐えうる信頼性を担保する。
※マルチAIエージェント: AIが自ら計画を立ててタスクに取り組むという自律的な『AIエージェント』を役割ごとに複数用意し、そのAIごとに連携して複雑なタスクをこなすもの。
・検証効果と今後の課題・
生成AIが出した回答を「措置方針の妥当性」「工法選定の適切性」「補修工法の持続性・再劣化防止」「損傷の原因の理解度」「提案内容の明確性・論理性」「施工性・安全性・周辺への影響」の観点で、AIによる検証(各指標を5点満点で評価)をしました(LLM-as-a-Judge)。その結果、6橋65損傷に対して生成された回答では、多くの損傷で妥当である(30点満点の獲得)と評価されました。
また、技術者による検証では、表面的なひび割れの補修だけでなく、判断の難しい「内部滞水」という要因を推定し、水抜き孔設置と橋面防水を組み合わせた提案を行っていることを確認し、AIによる設計支援の効果を評価しています。
課題として、より複雑な橋梁構成部材や付帯設備に対する専用RAGによる認識精度のさらなる向上と、ハルシネーション(AIの誤答)を抑制するアルゴリズムの強化に向け、継続して開発を進めてまいります。
・今後の展望・
今後は弊社が注力している橋梁包括事業における点検、設計品質の向上を目指すため、橋梁補修設計業務での社内実証を行い、活用効果を定量的に評価していきます。それらの知見を基に社内DBの正確性、網羅性をさらに向上させ、国交省業務などでの活用を視野にいれた精度向上を加速させます。将来的には、グループ会社・連携企業への展開も視野に入れたインフラ管理の効率化や、人員不足に悩む地方自治体の職員への展開による持続可能な社会インフラの実現を推進してまいります。