「父親がインフラに関わる仕事をしていて、それがきっかけで大学は土木工学科を選びました。」伊藤は大学では構造も学んだが、大学院ではインフラの活用を学びたいと計画系の研究室に進み、地下空間の有効活用をテーマに研究を行った。「トルコや宇都宮市大谷地区※の地下空洞を対象に研究をしていました。しかし、大谷は1990年ごろから陥没が相次いでいたこともあり、地下空間を有効活用するのはよいが『安全性は?』と問われると答えられなくて...。そこで原点に立ち返り、構造も学ばないとダメだと、構造を仕事にできる当社に入社しました。」
大学では構造も学んだものの、大学院では触れる機会がなかった伊藤は、入社後一から基礎をやり直した。「構造力学ってなんだっけ?と思いだしながら、教科書を見ながらやっていました。上司も非常にスパルタな人で。打ち合わせには一緒に行ってくれて『こういう風にしたいよね』と方針は示してくれ、都度のチェックはしてくれるのですが、検討や資料作り、お客さんへの説明など全て部下に任せるタイプでした。だからこそ自分がやるしかないわけですが、そのおかげで一気に成長するしかなかった環境でした(笑)。かといってプライベートをないがしろにするわけではなく、忙しい中でも遊びの時間は確保する、という会社の雰囲気はありましたね。今となれば、楽しく成長できる機会を与えてくれていたので非常にありがたかったです。」
※宇都宮市大谷地区:フランク・ロイド・ライトが設計した旧帝国ホテルにも使われた石材の産出地。奈良時代より採掘されていたとされ、江戸時代より採掘が本格化される。地下には広大な地下採掘場跡が広がる。