契約手法の工夫により橋梁の健全性を大幅に改善
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契約手法の工夫により橋梁の健全性を大幅に改善
東京都多摩市は、1960年代後半の高度経済成長期の急激な人口増加に対応すべく、東京都心に通勤する人々のベットタウンとして、ニュータウン開発が行われました。短期間かつ集中的に開発が行われたため、他の自治体と比べ、この時期に集中してインフラが建設されています。
現在、多摩市道路交通課では175橋の橋梁を管理しています。その多くが先のニュータウン開発時に建設されたものであり、建設から50年以上が経過し、今後老朽化の進行による維持管理費用の増大、修繕工事の集中などが懸念されていました。そのような中、予防保全型の管理へ移行する長寿命化を図ることで、修繕の集中回避と管理費用の削減を方針として掲げましたが、老朽化の進行で修繕が必要な橋梁が多く、予防保全型への移行が進まない状況でした。
また、人々が安全に豊かな暮らしができる「まち」として歩車分離が進んでおり、駅前の高架型の歩道であるペデストリアンデッキ(大型の公共歩廊)や歩道橋など、規模の大きな橋梁が多く、老朽化の進行により修繕工事の増加も想定され、従来の維持管理手法では対処困難となる可能性が示唆されていました。
そこで、一貫性のある橋梁管理により早期に橋梁の健全性を回復し、予防保全への移行を推進し、橋梁の長寿命化で維持管理費用の縮減と効率的な維持管理を実現するため、定期点検と補修設計、長寿命化計画改定業務をまとめて5年間の長期契約で1業務として発注する本プロジェクトがスタートしました。
多摩市の玄関口となる多摩センター駅前のペデストリアンデッキ
本プロジェクトは、当初は他に類を見ない国内初ともいえる橋梁の維持管理に関する事業で、想定した効果を得られるかの課題がある中での業務開始でした。
そこで、「維持管理の改善は課題の把握から」という原点に立ち返り、業務執行と並行して多摩市の橋梁維持管理において抱えている課題を抽出し、それらの課題の解決策について協議を重ね、一つ一つ改善を図っていくことから始めました。
一例として、修繕が必要な橋梁が多い中で、比較的軽微な損傷も多いことに着目し、維持工事対応を点検時に評価することで維持工事を促進し健全性回復を図りました。また、長期包括契約を活かし、ひびわれの追跡調査の実施や点検時に発見した損傷の即時補修など、これまでの契約方法では実施が難しかった対応や重複の削減の可能性を確認しました。
その結果、本プロジェクト開始前は早期に修繕が必要な橋梁が全体の4割程度でしたが、プロジェクト開始から4年後には1割程度まで減少し、大幅に健全性を回復することができました。
本プロジェクトは、従来の委託と違い、発注者と受注者が一体となって「官民連携により」維持管理の改善に取り組んできたことで、前述の効果を得ることができたと考えます。今後、ますます維持管理の重要性が高まる中、官民連携による維持管理手法の拡大に努めていきたいと考えています。
※2023年8月時点の情報です
AIを活用したひび割れの追跡調査
橋梁点検の状況
プロジェクト詳細
業務名 :橋梁定期点検及び総合維持管理業務委託
発注者名:東京都多摩市道路交通課