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2023年07月12日

7月15日全線運転再開! 南阿蘇鉄道の復旧支援に携わりました
―2018年3月の復旧工事開始から約5年での全線運転再開!―

八千代エンジニヤリング株式会社(本社:東京都台東区、代表取締役社長執行役員:高橋 努)は、2016414日および16日に発生した熊本地震によって被災した南阿蘇鉄道の復旧を支援し、南阿蘇鉄道はこの度715日に全線運転再開となります。

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南阿蘇鉄道:当社の設計した第一白川橋梁(土木学会賞 田中賞[作品部門]を受賞)





■南阿蘇鉄道とは

1927(昭和2)年に建設された、南阿蘇鉄道株式会社が運営する立野駅~高森駅間の17.7kmを結ぶ鉄道です。阿蘇五岳と南阿蘇外輪山の雄大な景色をのんびり旅する名物の「トロッコ列車」では、南阿蘇の大パノラマを満喫でき、地元住民だけでなく観光客にも愛されている鉄道です。

2016年414日および16日に発生した熊本地震では、第一白川橋梁が損壊するなど大きな被害を受けました。立野駅~中松駅間の10.6kmが運休されていましたが、この度2023715日に全線運転再開となります。

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両岸が切り立った立野渓谷にかかる第一白川橋梁は、国内でも実績の少ない橋梁形式である2ヒンジスパンドレル・ブレースド・バランスドアーチを採用しており、1927年(昭和2年)に完成しました。先人たちの貴重な建設技術とその優れた景観美から、2015年(平成27年)に選奨土木遺産に選出され、南阿蘇鉄道を象徴する存在でした。震災の影響により、右岸と左岸の両側から橋の中心方向に力がかかり、そり上がりが生じるなど異常な変形が生じ、複数の部材が損傷を受けており、架替えとなりました。






当社の支援内容

当社は、南阿蘇鉄道復旧の調査から施⼯に⾄るまで、主に以下の3点で支援しました。


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①被害個所の調査

全線復旧に必要な調査・設計を実施しました。

被害が発生した個所を中心に、復旧を行う基礎調査のためのボーリングをはじめとした地質調査、掘削法面の状態確認、測量や落石調査など多岐にわたり実施しました。


設計業務

土工部の補強盛土や落石対策、各種擁壁・法面対策の土構造設計や、戸下トンネルの損傷状況に応じた孔内覆工の補修、アンカー・支保工等の復旧設計を実施しました。

また、甚大な被害を受けた第一白川橋梁の下部工の詳細設計、斜面安定検討(FEM解析含む)、架替えによる復旧設計を実施しています。新しい橋は、耐震性能を向上させることはもとより、旧橋の構造形式・部材の断面寸法・色を踏襲し、震災前の景観美を復活させることをコンセプトとして設計しました。※第一白川橋梁は、土木学会賞 田中賞[作品部門]を受賞いたしました。


③マネジメント業務

マネジメント業務では、復旧事業を円滑に行うため、事業費計画案の作成、関係機関協議資料作成・協議、鉄道施設の変更届・変更認可申請書の作成・協議、各種補助金申請書類の作成、復旧工事の工事発注支援、施工監理補助などの事業監理補助業務を実施しました。










復旧を終えて担当から

業務開始時、南阿蘇鉄道様から「住民の足となる鉄道であるので、何としても2023715日に開通させたい。工期の遅れがないように、かつ安全に進めてください。」と要望がありました。その想いに答えるため、一丸となって実施させていただきました。

今回の復旧を行った第一白川橋梁は、一級水系白川を跨いでいますが、国交省の立野ダム事務所や熊本県、環境省など、関係機関との協議や申請手続き、提出書類が非常に多く、その対応と調整が大変でした。設計では下部工を担当しましたが、斜面上におけるマイクロパイル増杭補強設計に苦労がありました。また、終点側に原生林があるため、施工によって環境負荷がかからないようにと協議を重ねました。震災から7年を経て、ようやく待ち望んだ全線運転再開です。震災の記憶はこの地域の住民にとっていろいろな思いがあると思いますが、この鉄道が日常や観光に使われることで笑顔への糧になれば幸いです。


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八千代エンジニヤリング 

九州支店 道路・構造部 高山健一

※マイクロパイル増杭補強:狭隘部の施工を対象として実施される小口径の杭工法。今回の修復では、急傾斜地の既設基礎にマイクロパイルを増設し、耐震性能を向上させています。